第48話 得意なことでも加減は必要
翌朝。
俺は。
街道の脇で。
アストラを構えていた。
「…………」
……さて。
昨日、考えていたことだ。
杖先でしか使えない魔法。
だからこそ。
何か使い道があるかもしれない。
「……なあ、アストラ」
『……何だ』
「……俺の得意な魔法って、何だと思う?」
『……殴打ではないのか?』
「……それ、魔法じゃないから」
『……では、回復か?』
「……まあ、それも得意だけど」
俺は。
少し考えた。
火。
水。
風。
土。
どれも使える。
でも。
どれも飛ばない。
「…………」
……あ。
「……照明魔法」
『……照明?』
「……ほら、洞窟とかで使うやつ」
『……うむ』
あれなら。
杖先が光るだけだから。
魔法を飛ばす必要がない。
「……俺、あれは普通に使えるんだよな」
『……そうだな』
「……魔力をたくさん込めたら、どうなるんだろ」
『……明るくなるのではないか?』
「……だよな」
……ちょっと。
試してみるか。
俺は。
周囲に誰もいないことを確認した。
アストラを。
身体の前に構える。
「……よし」
杖先に。
魔力を集める。
いつもより。
多めに。
……いや。
もう少し。
『……おい』
「……ん?」
『……少し多すぎぬか?』
「……大丈夫だって」
さらに。
魔力を込めた。
杖先に。
小さな光が生まれる。
それが。
どんどん。
強くなっていく。
「……おお」
……すごい。
これなら。
夜道でも。
かなり遠くまで見えそうだ。
「……もうちょっと――」
カッ!!
「うわああああっ!?」
目の前が。
真っ白になった。
「……目が! 目があああっ!」
『……何をやっておるのだ、お主は!?』
「……見えない! 何も見えない!」
『……だから魔力を込めすぎだと言ったであろう!』
「……そんなに光るなんて思わなかったんだよ!」
『……照明魔法なのだから光るに決まっておろう!』
「……そうだけど!」
俺は。
その場にしゃがみ込んだ。
……まぶしい。
まぶしすぎる。
目を閉じても。
変な光が残っている。
「……これ、大丈夫かな」
『……我に聞くな』
「……伝説の杖なのに?」
『……伝説の杖は治癒師ではない!』
「…………」
……そうですね。
しばらくして。
ようやく。
視界が戻ってきた。
「……ふう」
『……まったく』
「……照明魔法って、危険なんだな」
『……危険なのは使い手のほうだ!』
「……そこまで言う?」
『……当然であろう!』
「…………」
……ひどい。
俺は。
アストラを握り直した。
……まあ。
一つ分かった。
魔力を入れすぎると。
照明魔法は。
ものすごく眩しくなる。
「……もうやらないようにしよう」
『……ぜひそうしてくれ』
俺は。
再び東へ歩き出した。
◇
それから。
しばらく歩いた。
街道の周囲には。
背の高い草が広がっている。
「…………」
……そういえば。
昨日の魔物。
あいつも。
俺の攻撃を避けていたな。
一人だと。
相手の動きを止めるのが難しい。
「……何か方法ないかな」
『……また考え事か』
「……悪い?」
『……いや。珍しいと思っただけだ』
「……俺だって考えるよ!」
『……知っておる』
「……絶対、馬鹿にしてるだろ」
『……さてな』
「…………」
……本当に。
口の減らない杖だ。
そのとき。
がさっ。
街道の脇で。
草が揺れた。
「…………」
俺は。
足を止めた。
アストラを構える。
草むらから。
小さな魔物が現れた。
一匹。
……いや。
もう一匹。
さらに。
奥にも。
動く影が見えた。
「……三匹?」
『……そのようだな』
「…………」
……これは。
ちょっとまずいな。
俺は。
ゆっくり後ろへ下がった。
だが。
背後からも。
がさっ。
草の揺れる音がした。
「…………」
振り返る。
そこにも。
魔物がいた。
「……え?」
さらに。
右側。
左側。
次々と。
草むらから魔物が現れる。
「……ちょっと待って」
俺は。
周囲を見渡した。
前。
後ろ。
右。
左。
……全部。
魔物だ。
「……何匹いるんだよ」
『……数えている場合ではあるまい』
「……分かってるよ!」
一歩。
後ろへ下がる。
しかし。
そこにも魔物がいる。
逃げ道がない。
「…………」
……まずい。
一匹なら。
何とか倒せる。
二匹なら。
逃げればいい。
でも。
これは。
どうすればいいんだ?
魔物たちが。
じりじりと。
距離を詰めてくる。
「……アストラ」
『……何だ』
「……これ、逃げられると思う?」
『……難しいであろうな』
「……だよな」
俺は。
アストラを握り直した。
……殴るしかない。
でも。
一匹倒している間に。
別の奴が飛びかかってくる。
「…………」
魔物たちが。
一斉に。
身を低くした。
「……嘘だろ」
『……来るぞ、ノア!』
次の瞬間。
四方から。
魔物たちが。
地面を蹴った。




