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『魔法が飛ばせないので、杖でぶん殴ることにした ~落ちこぼれ魔法使い、なぜか最強の槌使いと呼ばれる~』  作者: 蝶野摩矢


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第36話 魔法が飛ばないので助かります

森に。


入った。


「…………」


静かだ。


鳥の声。


風の音。


木々の。


揺れる音。


それ以外は。


ほとんど。


聞こえない。


「警戒を怠るな」


先頭を歩く。


大剣の男が。


声をかける。


ギルドで。


俺たちに。


話しかけてきた男だ。


どうやら。


今回の討伐隊を。


まとめているらしい。


「…………」


強そう。


やっぱり。


強そう。


『先ほどから何を見ておる』


「剣」


『剣?』


「大きいなって」


『お前は武器の大きさで強さを判断するのか』


「違うよ」


『ほう』


「値段」


『もっと違う!!』


「…………」


高そうなのに。


『だから値段から離れろ!!』


「ノア」


レオが。


振り返る。


「静かにしろよ」


「うん」


『我に言え!』


「アストラが」


『我のせいにするな!!』


「……二人とも静かにしろ」


「…………」


『…………』


怒られた。


◇


しばらく。


歩いた。


先頭の。


冒険者たちは。


周囲を。


警戒しながら。


進んでいる。


「止まれ」


大剣の男が。


片手を上げた。


全員が。


足を止める。


「…………」


何か。


いる。


茂みの。


向こう。


ガサッ。


ガサガサッ。


「来るぞ!」


次の瞬間。


魔物が。


飛び出してきた。


四本足。


鋭い牙。


大きな爪。


一匹。


二匹。


三匹。


「…………」


結構いる。


「第一班、迎撃!」


男が。


叫ぶ。


その声と。


ほぼ同時に。


前衛が。


動いた。


速い。


「はっ!」


剣が。


閃く。


一匹目が。


倒れた。


続いて。


別の冒険者が。


盾を構える。


突っ込んできた。


魔物を。


正面から。


受け止めた。


鈍い音。


でも。


一歩も。


下がらない。


その横から。


槍が。


突き出される。


二匹目。


撃破。


「…………」


すごい。


三匹目が。


逃げようとする。


その時。


後方にいた。


魔法使いが。


杖を掲げた。


「《炎弾》!」


炎が。


生まれる。


そして。


飛んだ。


「…………」


飛んだ。


普通に。


飛んだ。


炎弾が。


魔物に。


命中する。


ドンッ!


三匹目も。


倒れた。


「…………」


いいな。


『何がだ』


「飛んだ」


『……ああ』


「いいな」


『…………』


「俺もあれやりたい」


『先ほど試したばかりであろう』


「そうだけど」


『我が補助しても飛ばなかったではないか』


「…………」


そうだった。


「……何の話だ?」


レオが。


こちらを見る。


「魔法」


「お前も使えるだろ」


「飛ばないけど」


「知ってる」


「…………」


知ってるなら。


聞かないでほしい。


◇


戦闘は。


あっという間に。


終わった。


怪我人も。


いない。


「すごかったね」


ミアが。


前方を見る。


「ああ。さすが上位冒険者だな」


レオも。


感心している。


ガルムが。


頷いた。


「連携がいい」


「…………」


確かに。


強い。


一人一人も。


強いけど。


動きに。


無駄がない。


盾が。


受け止める。


剣が。


斬る。


魔法が。


飛ぶ。


「…………」


やっぱり。


最後だけ。


羨ましい。


『まだ気にしておるのか』


「うん」


『諦めの悪い奴だ』


「魔法使いだから」


『…………』


「何?」


『いや。その点だけは認めよう』


「でしょ」


『ただし、魔法使いは普通、杖を振り回して敵を殴らん』


「…………」


細かい。


『細かくない!!』


◇


さらに。


森の奥へ。


進む。


途中。


何度か。


魔物が。


現れた。


でも。


ほとんど。


第一班が。


倒してしまった。


第二班も。


周囲を。


しっかり。


守っている。


そして。


俺たち。


第三班。


「…………」


暇だ。


『…………』


「…………」


暇。


『顔に出ておるぞ』


「出してない」


『出ておる』


「…………」


俺は。


アストラを見る。


傷一つ。


ない。


当然だ。


まだ。


何も。


していない。


「…………」


せっかく。


手に入れたのに。


『ノア』


「何?」


『お前、まさか魔物が来ることを期待しておらんだろうな』


「…………」


『ノア』


「試したいだけ」


『期待しておるではないか!!』


「でも」


俺は。


前を見る。


第一班が。


また。


魔物を。


倒していた。


「…………」


強すぎる。


『それはよいことだろう』


「うん」


『ならば大人しくしておれ』


「…………」


分かった。


大人しく。


しておこう。


「ノア」


ミアが。


こちらを見る。


「なんか不満そう」


「そんなことない」


「本当?」


「うん」


「じゃあ、その杖を振る練習やめて」


「…………」


いつの間に。


『先ほどからずっとだ!!』


◇


やがて。


先頭の男が。


足を止めた。


「……ここから先だ」


周囲の。


空気が。


変わる。


木が。


倒れている。


一本。


二本。


いや。


もっと。


地面には。


大きな。


爪痕。


「…………」


でかい。


かなり。


でかい。


「報告にあった場所だ」


男が。


低い声で。


言う。


「全員、配置につけ」


冒険者たちが。


動き始める。


第一班は。


正面。


第二班は。


左右へ。


俺たちは。


少し離れた。


後方。


「ノア」


レオが。


言う。


「ここで待機だ」


「うん」


「負傷者が出たら頼む」


「分かった」


「絶対に勝手に前へ出るなよ」


「分かってるって」


「……本当だな?」


「うん」


レオは。


しばらく。


俺を見ていた。


「…………」


信用。


ないな。


『当然だ』


「…………」


アストラまで。


◇


しばらく。


待った。


「…………」


何も。


起きない。


「…………」


静か。


『…………』


「…………」


暇。


『今は黙っておれ』


「何も言ってない」


『顔に出ておる』


「…………」


その時。


地面が。


小さく。


揺れた。


「…………」


ん?


もう一度。


揺れる。


ズン。


ズン。


ズン。


「……来るぞ」


ガルムが。


盾を構えた。


前方の。


木々が。


大きく。


揺れる。


そして。


バキバキバキッ!!


太い木が。


へし折れた。


「…………」


でかい。


本当に。


でかい。


現れたのは。


巨大な。


四足の魔物。


全身を。


分厚い。


外皮が。


覆っている。


背中には。


岩のような。


突起。


頭には。


二本の。


太い角。


「……なんだ、あれ」


ミアが。


呟いた。


俺も。


同じことを。


思った。


「報告より大きいな」


レオが。


剣に手をかける。


「全員、構えろ!」


先頭の男が。


叫んだ。


魔物が。


咆哮する。


グオオオオオッ!!


空気が。


震えた。


「…………」


すごい。


声。


『ほう』


アストラが。


呟く。


『なかなかの魔物ではないか』


「強い?」


『少なくとも、先ほどの雑魚とは違うな』


「へえ」


俺は。


アストラを。


握り直した。


『…………』


「何?」


『なぜ握り直した』


「いや」


『ノア』


「まだ何もしてない」


『まだ、という言い方をするな!!』


◇


「第一班! 前へ!」


男の。


号令。


盾役が。


前に出る。


巨大な魔物が。


突進した。


ドゴンッ!!


重い。


衝突音。


盾役の。


足が。


地面を。


削る。


それでも。


倒れない。


「今だ!」


大剣の男が。


飛び込む。


大きな剣が。


振り下ろされた。


ガキンッ!!


「…………」


硬い。


剣が。


弾かれた。


でも。


男は。


慌てない。


すぐに。


体勢を。


立て直す。


「右脚を狙え!」


別の冒険者が。


槍を突き出す。


関節。


外皮の。


隙間。


そこへ。


正確に。


突き刺さった。


魔物が。


吠える。


「おお」


思わず。


声が出た。


『見事だな』


アストラも。


感心している。


「強いね」


『うむ。よく鍛えられておる』


「…………」


やっぱり。


高ランクって。


すごい。


続いて。


魔法使いが。


杖を掲げる。


「《爆炎弾》!」


巨大な。


炎の塊が。


生まれる。


「…………」


飛んだ。


勢いよく。


飛んだ。


ドォン!!


魔物の。


顔面に。


直撃する。


炎が。


広がった。


「…………」


いいな。


『今はそこではない!!』


「…………」


でも。


飛んだ。


『分かったから戦況を見ろ!!』


◇


炎が。


消える。


魔物は。


まだ。


立っていた。


外皮が。


焦げている。


でも。


致命傷には。


見えない。


「……硬いな」


レオが。


呟く。


「でも、効いてる」


ミアが。


弓を構えながら。


言った。


確かに。


魔物の。


動きが。


少し。


鈍っている。


前衛が。


着実に。


傷を増やしていく。


「…………」


このまま。


倒せそう。


そう。


思った。


その時だった。


「下がれ!!」


先頭の男が。


叫ぶ。


魔物が。


急に。


身体を。


低くした。


「…………」


何?


次の瞬間。


ドンッ!!


地面を。


蹴った。


巨体が。


跳ねる。


「は?」


思わず。


声が出た。


あの。


大きさで。


跳んだ。


しかも。


正面では。


ない。


第一班を。


飛び越えて。


第二班の。


さらに。


向こう。


「まずい!」


レオが。


叫んだ。


魔物が。


着地する。


ドゴォン!!


土煙。


そして。


その向こうに。


いるのは。


「…………」


俺たち。


第三班。


「後方へ抜けたぞ!!」


誰かが。


叫んだ。


巨大な魔物が。


こちらを。


向く。


「ノア! 下がれ!」


レオが。


剣を抜く。


ガルムが。


盾を構えた。


ミアも。


弓を引く。


「…………」


俺は。


魔物を見る。


大きい。


かなり。


大きい。


そして。


近い。


「…………」


近い?


『ノア』


「何?」


『妙な顔をしておるぞ』


「いや」


『何を考えておる』


「…………」


後衛。


敵から。


遠い。


だから。


殴れない。


そう。


思っていた。


でも。


「…………」


向こうから。


来た。


『…………』


「アストラ」


『何だ』


「これなら」


『待て』


「試せるね」


『待てと言っておる!!』


魔物が。


咆哮した。


レオたちが。


身構える。


俺も。


アストラを。


握り直した。


『ノア!!』


「何?」


『お前、まさか嬉しいのか!?』


「…………」


ちょっと。


『嬉しそうな顔をするなあああ!!』



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