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『魔法が飛ばせないので、杖でぶん殴ることにした ~落ちこぼれ魔法使い、なぜか最強の槌使いと呼ばれる~』  作者: 蝶野摩矢


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第34話 能ある杖は口を隠す

来た道を。


戻る。


「…………」


静かだ。


行きと。


同じ。


古い。


石の通路。


壁に刻まれた。


文字。


ところどころ。


崩れた。


天井。


その中を。


俺たちは。


歩いていく。


「…………」


手には。


アストラ。


細く。


長い。


濃い色の。


杖。


金属の。


装飾。


先端には。


青い。


魔石。


「…………」


やっぱり。


いい。


『何がだ』


「別に」


『また我を見ていたであろう』


「見てた」


『何を考えていた』


「壊れなさそうだなって」


『…………』


「何?」


『もうよい』


「そう?」


『お前に我の価値を説くことに疲れた』


「まだ会ったばっかりなのに?」


『誰のせいだ!!』


「…………」


元気じゃん。


『聞こえておるぞ!』


「言ってない」


『お前は顔に出る!』


「目ないのに?」


『…………』


後ろから。


笑い声。


ミアだ。


「なんか」


「何?」


「もうずっと一緒にいるみたい」


「誰と?」


「アストラと」


「…………」


手の中を見る。


『…………』


「そう?」


『我に聞くな』


「聞いてない」


『今こちらを見ただろう!』


「見ただけ」


『…………』


やっぱり。


うるさい。


◇


しばらく。


歩く。


やがて。


前から。


光が。


見えてきた。


「出口だ」


レオが。


言う。


「やっとか」


ガルムが。


肩を回す。


ミアも。


少し。


嬉しそう。


長かった。


試練。


三つ。


そのうち。


二つは。


杖を。


壊した。


「…………」


正確には。


一本目は。


粉々。


二本目も。


壊れた。


そして。


最後に。


手に入ったのが。


これ。


「…………」


アストラを見る。


『何だ』


「何でもない」


『先ほどからそればかりだな』


「気にしすぎ」


『お前が見すぎなのだ!』


「…………」


出口へ。


向かう。


あと。


少し。


その時。


『待て』


「何?」


足を。


止める。


レオたちも。


止まった。


『そのまま外へ出るつもりか?』


「うん」


『…………』


「何?」


『少しは考えろ』


「何を?」


『我のことだ』


「アストラ?」


『そうだ』


「持って帰るけど」


『それは分かっておる!』


「じゃあ何?」


『我がこのまま街で話せばどうなる』


「…………」


少し。


考える。


喋る。


杖。


「びっくりする?」


『それだけで済めばよいがな』


レオが。


腕を組む。


「確かに」


「何が?」


「喋る魔杖なんて、俺も聞いたことない」


「そうなの?」


「普通は喋らない」


「…………」


アストラを見る。


『我を見るな』


「普通じゃないらしい」


『伝説級魔杖を普通と比べるな!』


「こうなるってこと?」


「多分な」


レオが。


苦笑する。


「街中でそれやったら、かなり目立つぞ」


「…………」


面倒だな。


『だから!』


アストラが。


光る。


『それを声に出すな!』


「出してない」


『顔に出ておる!』


「…………」


ミアが。


首を傾げる。


「でも、どうするの?」


「喋らなければいいんじゃない?」


『なぜ我だけが黙らねばならん』


「目立つから」


『…………』


「我慢して」


『嫌だ』


「…………」


面倒。


『今思ったな!?』


「思ってない」


『思っただろう!』


「だから」


レオが。


笑いながら。


間に入る。


「それを街でやると目立つんだって」


『分かっておる!』


「じゃあどうする?」


『方法はある』


「あるの?」


『当然だ』


アストラが。


淡く。


光る。


『念話を使う』


「念話?」


『声を直接、意識へ届ける』


「…………」


「つまり?」


『周囲には聞こえぬ』


「便利」


『もう少し感心しろ』


「便利って言った」


『そういう問題ではない』


「じゃあ」


俺は。


レオたちを見る。


「みんなには聞こえる?」


『設定すればな』


「設定?」


『我が声を届ける相手を選ぶ』


「へえ」


『今ここにいる三人程度ならば容易い』


「じゃあお願い」


『…………』


「何?」


『軽いな』


「駄目?」


『駄目ではないが』


アストラが。


少し。


光る。


『少し待て』


「うん」


一瞬。


杖から。


小さな。


魔力の波が。


広がった。


俺。


レオ。


ミア。


ガルム。


その四人を。


撫でるように。


通り抜ける。


そして。


『――聞こえるか』


「うん」


「聞こえる」


ミアも。


答える。


ガルムが。


頷いた。


レオも。


耳を触る。


「変な感じだな」


『声を出してはおらん』


「本当に?」


俺は。


アストラを見る。


『何だ』


「口ないもんな」


『今さら何を言っている』


「じゃあ今までもどうやって喋ってたの?」


『…………』


「どこから声出してた?」


『どうでもよい!!』


「気になる」


『気にするな!』


「…………」


でも。


確かに。


さっきまでと。


少し違う。


耳から。


聞こえる。


というより。


頭の中へ。


直接。


声が入ってくる。


「これなら」


レオが。


言う。


「外でも問題なさそうだな」


『基本的には、お前たちだけに声を届ける』


「基本的には?」


ミアが。


聞く。


『必要があれば他の者にも聞かせる』


「必要って?」


『我が話す必要がある時だ』


「なるほど」


『あるいは』


少し。


間。


『どうしても我慢ならぬ者がいた時だ』


「…………」


「それ」


俺は。


アストラを見る。


「文句言う時?」


『場合による』


「文句だ」


『場合によると言っておる』


「絶対文句だよね」


『ノア』


「何?」


『お前が最初の候補になりそうだ』


「俺にはもう聞こえてるけど」


『…………』


「意味なくない?」


『うるさい!!』


「…………」


念話でも。


うるさい。


『今思ったな!?』


「思ってない」


『お前という奴は……!』


「ほら」


レオが。


出口を指す。


「今度こそ帰るぞ」


「うん」


歩く。


出口の。


光が。


近づいてくる。


そして。


外へ。


出た。


◇


眩しい。


「…………」


思わず。


目を細める。


空。


風。


木々。


ずっと。


遺跡の中に。


いたせいか。


それだけで。


少し。


変な感じがする。


「終わったぁ……」


ミアが。


大きく。


息を吐いた。


「長かったな」


レオも。


笑う。


ガルムが。


振り返る。


遺跡の。


入口。


「まさか本当に見つかるとはな」


「うん」


俺も。


振り返る。


ここに。


来る前。


欲しかったのは。


壊れない杖。


それだけ。


だった。


「…………」


手の中を見る。


アストラ。


伝説級。


らしい。


大賢者が。


使っていた。


らしい。


喋る。


かなり。


うるさい。


でも。


壊れない。


俺の。


全力の魔力も。


全部。


入った。


「…………」


悪くない。


『なぜ最後だけ微妙な評価なのだ』


「聞こえた?」


『念話だからな』


「考えてることも?」


『そこまでは読めん』


「じゃあ何で分かったの?」


『お前は分かりやすすぎる』


「…………」


嫌だな。


『何がだ』


「何でもない」


『またそれか!』


「ノア」


レオが。


笑う。


「街までずっとそれやるのか?」


「俺じゃない」


『我でもない!』


「じゃあ誰?」


『お前だ!!』


「…………」


やっぱり。


相性。


悪い。


多分。


◇


街へ。


戻った頃には。


もう。


日が。


傾き始めていた。


「…………」


人が。


多い。


いつもより。


少し。


騒がしい。


冒険者。


商人。


住民。


その中を。


歩く。


何人かが。


俺を見る。


正確には。


俺の。


持っている。


杖。


「…………」


でも。


それだけ。


少し。


立派な杖を。


持っている。


多分。


そのくらい。


アストラが。


何なのか。


分かる人はいない。


当然か。


何百年も。


前の。


杖。


姿を。


知っている人なんて。


ほとんど。


いない。


『…………』


アストラも。


喋らない。


頭の中にも。


声は。


聞こえない。


珍しく。


静か。


「…………」


いい。


『何がだ』


「喋った」


『お前にしか聞こえておらん』


「そうだった」


『忘れるな』


「うん」


便利だ。


かなり。


◇


ギルドへ。


向かう。


扉が。


見える。


でも。


「…………」


何か。


変だ。


入口の前に。


人が。


多い。


冒険者たちが。


集まっている。


「なんだ?」


レオも。


気づいた。


「何かあったのかな」


ミアが。


人の間を。


覗く。


ガルムが。


眉を寄せた。


「入ってみるか」


「うん」


扉を。


開ける。


ガヤガヤガヤ――。


「…………」


いつもの。


ギルド。


でも。


雰囲気が。


違う。


冒険者が。


多い。


それも。


見たことのない。


装備の。


いい冒険者たち。


奥には。


受付嬢。


その周りに。


何人もの。


職員。


壁の。


依頼板の前にも。


人だかり。


「何これ」


『…………』


アストラが。


頭の中で。


小さく。


呟く。


『随分と騒がしいな』


「うん」


その時。


「レオさん!」


声。


受付の方。


俺たちに。


気づいた。


職員が。


駆けてくる。


「ちょうどよかった!」


「どうした?」


レオが。


聞く。


職員の。


顔。


少し。


焦っている。


「緊急依頼です」


「緊急?」


「はい」


ギルドの。


中が。


少し。


静かになる。


職員が。


言った。


「討伐隊を編成します」


「討伐?」


レオの。


表情が。


変わる。


「何が出た?」


職員が。


一度。


息を飲む。


そして。


答えた。


「――大型の魔物です」


「…………」


大型。


周囲を見る。


見たことのない。


冒険者たち。


装備も。


明らかに。


俺たちより。


いい。


「もしかして」


レオが。


聞く。


「こいつらも?」


「はい」


職員が。


頷いた。


「今回の討伐のために集められた冒険者です」


「…………」


俺は。


もう一度。


周囲を見る。


強そう。


かなり。


強そう。


『ほう』


頭の中で。


アストラが。


呟いた。


『面白そうではないか』


「そう?」


『我を手に入れて最初の戦いだろう』


「うん」


手の中の。


アストラを見る。


「ちょうどいいかも」


『…………何がだ』


「試せる」


『待て』


「何?」


『お前の言う「試す」は嫌な予感がする』


「気のせい」


『本当だろうな?』


「多分」


『多分と言うな』


「…………」


大型の。


魔物。


強い。


冒険者たち。


そして。


新しい。


杖。


「…………」


ちょっと。


楽しみかもしれない。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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