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『魔法が飛ばせないので、杖でぶん殴ることにした ~落ちこぼれ魔法使い、なぜか最強の槌使いと呼ばれる~』  作者: 蝶野摩矢


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31/56

第31話 話し合いで解決できないこともあります

「…………」


相性。


悪いかもしれない。


でも。


帰るわけには。


いかない。


俺は。


アストラを見る。


「従える」


『そうだ』


「俺に」


『そうだ』


「…………」


考える。


「命令?」


『好きにするがいい』


「俺の杖になれ」


『断る』


「…………」


早い。


「もう少し考えて」


『考える必要がない』


「なんで?」


『今のお前に従う理由がない』


「…………」


なるほど。


「じゃあ」


少し。


考える。


「俺の杖になってください」


『断る』


「丁寧にしたのに」


『頼んでどうする』


「…………」


確かに。


従えてない。


お願いしてる。


「難しいな」


『それが試練だ』


「金?」


『…………』


「いくら?」


『我を買おうとするな!!』


「高い?」


『そういう問題ではない!』


「…………」


金でも。


駄目。


「ノア」


レオが。


後ろから言う。


「何?」


「普通、伝説の杖に金額交渉しないぞ」


「じゃあどうする?」


「俺に聞くな」


「…………」


使えない。


「ミア」


「私?」


「何かある?」


「うーん……」


ミアが。


アストラを見る。


「認めてもらうとか?」


「どうやって?」


「それは……」


「…………」


ミアが。


黙った。


やっぱり。


分からない。


「ガルム」


「知らん」


「まだ聞いてない」


「俺に聞くつもりだっただろ」


「…………」


みんな。


俺の考えてること。


分かりすぎじゃない?


◇


俺は。


アストラの前に。


座った。


「…………」


アストラを見る。


『…………』


見られている。


多分。


「…………」


『…………』


「…………」


『何だ』


「考えてる」


『そうか』


「…………」


『…………』


「…………」


『…………』


難しい。


第一の試練は。


分かりやすかった。


魔力を。


見せる。


第二の試練も。


分かりやすかった。


魔法で。


道を開く。


そして。


第三の試練。


従える。


「…………」


分かりにくい。


「アストラ」


『何だ』


「前の人は?」


『前の人?』


「挑戦者」


『…………』


「ここまで来た人」


『おらん』


「一人も?」


『おらん』


「…………」


俺は。


アストラを見る。


「じゃあ」


『何だ』


「この試練」


『うむ』


「誰もやったことない?」


『そうなる』


「…………」


「本当にこれで合ってる?」


『何がだ!?』


「試せてないじゃん」


『…………』


アストラが。


黙った。


「誰も第三の試練まで来てないんだろ?」


『そうだ』


「じゃあ」


俺は。


アストラを見る。


「この試練、ちゃんとできるか分からなくない?」


『できる!』


「なんで?」


『できるように作られている!』


「誰が確認したの?」


『…………』


「アストラ?」


『…………』


「誰?」


『…………』


なんか。


怪しい。


『問題ない!』


「今ちょっと間があった」


『ない!』


「あったよ」


『ないと言っている!』


「…………」


伝説。


意外と。


適当かもしれない。


『適当ではない!!』


「まだ何も言ってない」


『顔を見れば分かる!』


「目ないのに?」


『…………』


また。


勝った。


気がする。


◇


「でも」


俺は。


立ち上がる。


「従えるって」


『うむ』


「結局」


アストラを見る。


「俺を主人として認めるってこと?」


『そうだ』


「何を見て?」


『…………』


「魔力量は見た」


『見た』


「魔法も見た」


『見た』


「杖の使い方も」


『…………』


「見た?」


『見たくなかった』


「なんで?」


『杖で殴ったからだ!!』


「…………」


まだ。


気にしてる。


「じゃあ」


俺は。


少し考える。


「何が足りない?」


『それを見つけるのが――』


「試練」


『分かっているではないか』


「聞き飽きた」


『…………』


アストラが。


少し。


光った。


危ない。


また。


怒らせた。


「でも」


俺は。


続ける。


「アストラは」


『何だ』


「どんな奴なら従う?」


『…………』


少し。


間。


『我を持つに相応しき者だ』


「だからどんな?」


『強き魔力を持ち』


「ある」


『…………』


「多分」


『……そうだな』


認めた。


「他は?」


『優れた魔法を操り』


「…………」


俺は。


黙った。


アストラも。


黙った。


「次」


『なぜ飛ばした』


「無理だから」


『…………』


「次は?」


『我が力を余すことなく引き出し――』


「できそう」


『まだ分からん』


「魔力いっぱい入ったよ?」


『それだけではない』


「じゃあ」


俺は。


首を傾げる。


「何?」


『…………』


「アストラも分かってない?」


『分かっている!』


「じゃあ教えて」


『教えん!』


「…………」


ずるい。


「ノア」


レオが。


ため息をつく。


「何?」


「お前」


「うん」


「試練を攻略するんじゃなくて」


「うん」


「試験官を論破しようとしてないか?」


「…………」


違う。


多分。


◇


「じゃあ」


俺は。


アストラの柄を。


もう一度。


握った。


『何をする』


「分からないから」


『うむ』


「いろいろ試す」


『好きにしろ』


「まず」


引く。


動かない。


「駄目」


『当然だ』


「次」


魔力を。


流す。


パァァァァ――。


動かない。


「駄目」


『当然だ』


「次」


「ノア」


レオが。


声をかける。


「何?」


「何する?」


「まだ考えてる」


「そうか」


「…………」


俺は。


アストラを見る。


命令。


駄目。


お願い。


駄目。


金。


駄目。


引っ張る。


駄目。


魔力。


駄目。


「…………」


他に。


何がある?


『諦めるか?』


「嫌」


即答。


『…………』


「絶対持って帰る」


『なぜそこまで我を求める』


「壊れないから」


『…………』


アストラの。


光が。


少し弱くなった。


「何?」


『もう少し別の理由はないのか』


「魔力も通る」


『それは聞いた』


「いっぱい入る」


『それも聞いた』


「殴れる」


『それは聞きたくなかった!』


「…………」


難しいな。


「でも」


俺は。


アストラを。


握ったまま。


言う。


「必要なんだよ」


『…………』


「普通の杖じゃ」


自分の。


鞄を見る。


中には。


壊れた杖。


「俺の魔力に耐えられない」


一本目。


壊れた。


二本目も。


壊れた。


昨日買った。


高い杖も。


壊れた。


「俺の魔法」


アストラを見る。


「飛ばないから」


『…………』


「近づいて」


「杖を当てて」


「魔力を流すしかない」


『…………』


「だから」


俺は。


柄を。


握り直す。


「壊れないお前が必要」


『…………』


部屋が。


静かになった。


さっきまで。


ずっと。


うるさかった。


アストラも。


何も言わない。


「…………」


少し。


恥ずかしい。


「何?」


『…………』


「なんか言って」


『……お前は』


アストラが。


静かに。


光る。


『大賢者になりたいのか』


「別に」


『…………』


「なれないし」


『…………』


「俺は」


少し。


考える。


昔。


言われた。


魔力量だけなら。


大賢者にも。


なれるかもしれない。


そう。


言われていた。


でも。


魔法は。


飛ばなかった。


「普通に」


俺は。


アストラを見る。


「魔法使いでいたい」


『…………』


「それだけ」


また。


静かになる。


「…………」


『ならば』


アストラの。


声が。


少し。


低くなった。


『示してみせよ』


「何を?」


『お前が』


光が。


強くなる。


『我を従えるに足る者だと』


「…………」


結局。


そこに。


戻るのか。


「どうやって?」


『己で見つけろ』


「…………」


やっぱり。


教えてくれない。


でも。


一つ。


分かった。


言葉だけじゃ。


駄目。


魔力を。


流すだけでも。


駄目。


引っ張るだけでも。


駄目。


俺自身が。


アストラに。


認めさせる。


「…………」


示す。


「…………」


俺は。


アストラを見る。


不壊。


どれほどの。


魔力を流しても。


決して。


砕けない。


伝説級魔杖。


「…………」


力を。


示す。


「ノア」


レオが。


声をかける。


「何?」


「今」


俺を見る。


「何考えた?」


「試練」


「それは分かる」


「力を示す」


「…………」


レオが。


黙った。


「具体的には?」


「まだ」


「まだ?」


「考えてる」


『…………』


アストラが。


淡く。


光る。


『なぜだ』


「何?」


『なぜ急に』


少し。


間。


『嫌な予感がする』


「気のせい」


『そうか?』


「うん」


『ならばよい』


「…………」


俺は。


アストラを見る。


そして。


一つ。


思いついた。


「…………」


これなら。


分かりやすいかもしれない。


「ノア」


「何?」


「その顔やめろ」


「どの顔?」


「ろくなこと考えてない顔」


「失礼な」


『…………』


アストラも。


黙っている。


「…………」


俺は。


柄を。


強く握った。


『何をする気だ』


「試練」


『それは分かっている』


「従わせる」


『…………』


「力で」


『待て』


「何?」


『今』


アストラの声が。


少し。


揺れた。


『何と言った?』


「力で従わせる」


『…………』


「駄目?」


『…………』


返事が。


ない。


「アストラ?」


『待て』


「だから何?」


『少し』


アストラが。


光る。


『少し待て』


「なんで?」


『…………』


さっきまで。


あれだけ。


偉そうだったのに。


「もしかして」


俺は。


アストラを見る。


「怖い?」


『誰がだ!!』


「じゃあ大丈夫」


『何が大丈夫なのだ!?』


俺は。


アストラを。


握り直した。


『待て!』


「いくよ」


『何をする気だ!?』


「だから」


俺は。


答えた。


「力を示す」


『説明になっておらん!!』


レオが。


俺を見る。


ミアも。


ガルムも。


俺を見る。


「ノア」


レオが。


一歩。


近づいた。


「一応聞く」


「何?」


「それ」


アストラを。


指す。


「壊れないんだよな?」


「うん」


『当然だ!』


アストラが。


即答した。


「…………」


俺は。


少し。


笑った。


「じゃあ」


柄を。


両手で。


握る。


『…………』


「大丈夫」


『待て』


「壊れないんだから」


『待てと言っている!!』



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