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『魔法が飛ばせないので、杖でぶん殴ることにした ~落ちこぼれ魔法使い、なぜか最強の槌使いと呼ばれる~』  作者: 蝶野摩矢


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27/58

第27話 商売も力加減が大切です

「では」


受付嬢が。


依頼書を。


カウンターへ置いた。


「説明しますね」


「はい」


俺は。


報酬を見る。


「ノアさん」


「聞いてる」


「私を見てください」


「聞いてるから大丈夫」


「報酬しか見てませんよね?」


「…………」


見てない。


ちょっとしか。


「今回の依頼は」


受付嬢が。


依頼書を指す。


「魔導設備への魔力供給です」


「魔力供給」


「はい」


「魔力入れるだけ?」


「簡単に言えば」


「やる」


「まだ説明の途中です」


「でも入れるだけでしょ?」


「そうですが」


「やる」


「…………」


受付嬢が。


紙を。


俺から遠ざける。


「最後まで聞いてください」


「…………」


仕方ない。


俺は。


報酬から。


目を離した。


「ベルナには、大型の魔導設備がいくつかあります」


「うん」


「その中の一つが、定期的な魔力補充の時期を迎えています」


「うん」


「本来なら、複数の魔法使いに依頼する仕事です」


「…………」


複数。


俺は。


依頼書を見る。


「これ」


「はい」


「一人分?」


「そうです」


「…………」


頭の中で。


計算する。


一人。


この金額。


複数。


「何人?」


「何がですか?」


「普通は何人でやるの?」


「その設備なら、交代も含めて五、六人ほどですね」


「…………」


五。


六。


俺は。


報酬を見る。


五倍。


六倍。


「ノア」


横から。


レオの声。


「何」


「今、絶対ろくなこと考えてないだろ」


「考えてる」


「否定しろよ」


俺は。


受付嬢を見る。


「一人で全部やったら?」


「はい?」


「五人分やったら」


「…………」


「五人分もらえる?」


「もらえません」


「なんで!?」


「契約は一人分です」


「…………」


おかしい。


「じゃあ六人分」


「増えません」


「…………」


世の中。


厳しい。


「そもそも」


受付嬢が。


ため息をつく。


「一人で全部供給するなんて無理です」


「やってみないと分からない」


「普通は魔力が尽きます」


「俺、結構あるよ」


「知っています」


「じゃあ」


「それでもです」


「…………」


受付嬢が。


俺を見る。


「まずは一人分」


「…………」


「いいですね?」


「はい」


仕方ない。


まずは。


一人分。


◇


「大きい」


俺は。


見上げていた。


ギルドから。


少し離れた。


建物。


その地下。


目の前には。


巨大な。


魔導設備。


何本もの。


金属管。


魔石。


魔導回路。


そして。


中央には。


俺の身体より。


大きな魔石。


「これに入れるの?」


「ああ」


答えたのは。


設備を管理している。


男だった。


「ここから魔力を供給する」


男が。


設備の横にある。


小さな魔石を指す。


「直接?」


「ああ」


「簡単そう」


「…………」


男が。


俺を見る。


「先に言っておく」


「何?」


「少しずつだ」


「分かってる」


「一気に流すな」


「分かってる」


「本当に分かってるか?」


「分かってるって」


何回。


言うんだ。


「ノア」


一緒についてきた。


レオが。


俺を見る。


「何」


「昨日」


「うん」


「魔法使いに何て言われた?」


「…………」


思い出す。


――多い多い多い!!


「…………」


「何て言われた?」


「忘れた」


「嘘つけ」


「今回は大丈夫」


昨日。


覚えた。


人に渡す時は。


少なく。


「では」


管理人が。


設備を確認する。


「始めてくれ」


「はい」


俺は。


杖を。


供給用の魔石へ。


当てた。


「…………」


魔力を。


流す。


少し。


ブゥン。


設備が。


動き始める。


「お」


「そのまま」


管理人が。


計器を見る。


「…………」


「もう少し流せるか?」


「もう少し?」


「ああ」


「分かった」


少し。


増やす。


ブゥゥゥン。


「…………」


まだ。


いける。


「もう少し」


「うん」


さらに。


流す。


ブゥゥゥゥン。


「…………」


管理人が。


計器を見る。


「もう少――」


「分かった」


「待て」


魔力を。


流す。


ブォォォォォン!!


「…………?」


設備全体が。


一気に。


光った。


「え」


魔導回路が。


青白く。


輝く。


ブォォォォォォォン!!


「止めろ!!」


「え?」


「魔力を止めろ!!」


「…………!」


慌てて。


止める。


ブゥゥゥン……。


光が。


ゆっくり。


弱くなる。


「…………」


静かになった。


「…………」


俺は。


設備を見る。


管理人も。


設備を見る。


レオも。


設備を見る。


「…………」


「…………」


「…………」


壊れてない。


多分。


「何をした!?」


管理人が。


俺を見る。


「魔力入れた」


「入れすぎだ!!」


「少しだけど」


「あれのどこが少しだ!!」


「…………」


また。


言われた。


「お前……!」


管理人が。


慌てて。


設備を確認する。


魔石。


回路。


金属管。


一つずつ。


確認していく。


「…………」


俺も。


見る。


「壊れた?」


「黙ってろ!」


「…………」


怖い。


しばらくして。


管理人が。


大きく。


息を吐いた。


「…………ギリギリだ」


「何が?」


「壊れる寸前だった」


「…………」


俺は。


設備を見る。


巨大。


どう見ても。


高そう。


「…………」


一つ。


気になる。


「これ」


「なんだ」


「壊したら?」


「…………」


管理人が。


俺を見る。


「当然」


嫌な。


予感。


「弁償だ」


「…………」


やっぱり。


「いくら?」


「何が?」


「弁償」


管理人が。


金額を言った。


「…………」


俺は。


杖を。


離した。


「帰ります」


「待て!」


「無理」


「まだ壊してない!」


「これ壊したら杖買えない」


「壊さなければいいだろ!」


「でも壊れかけた」


「お前が入れすぎたからだ!」


「…………」


それは。


そう。


「ノア」


レオが。


笑いを堪えている。


「何」


「顔色悪いぞ」


「気のせい」


「さっきまで報酬しか見てなかったのにな」


「…………」


報酬。


見る。


設備。


見る。


報酬。


設備。


弁償額。


「…………」


割に。


合わない気がしてきた。


「大丈夫だ」


管理人が。


言う。


「今度は本当に少しずつ流せ」


「…………」


「俺が止めろと言ったら止める」


「…………」


「できるな?」


「…………多分」


「不安になる返事をするな」


仕方ない。


俺は。


もう一度。


杖を当てる。


「…………」


魔力を。


流す。


ほんの。


少し。


ブゥン。


「…………」


管理人が。


計器を見る。


「もう少し」


「嫌だ」


「少なすぎる」


「壊れる」


「壊れない」


「さっき壊れかけた」


「お前が入れすぎたからだ!」


「…………」


少し。


増やす。


ブゥゥン。


「もう少し」


「…………」


ほんの。


少し。


増やす。


「もう少し」


「…………」


「ノア」


「何」


「少なすぎる」


「壊したくない」


「今度は慎重すぎる!」


難しい。


魔力。


入れるだけなのに。


難しい。


◇


それから。


しばらく。


俺は。


魔力を。


流し続けた。


一定。


少し。


増やす。


減らす。


また。


少し増やす。


「そこ」


管理人が言う。


「その量を維持しろ」


「…………」


維持。


「増やすなよ」


「分かってる」


「絶対増やすなよ」


「分かってるって」


「お前の『少し』は信用できん」


「…………」


失礼な。


でも。


さっき。


壊しかけた。


何も。


言い返せない。


「…………」


魔力を。


流す。


同じ量。


ずっと。


「…………」


面倒。


殴る時は。


楽だった。


いっぱい。


流す。


殴る。


終わり。


これは。


違う。


少し。


ずっと。


同じ。


「…………」


難しい。


「ノア」


レオが。


壁際から。


声をかける。


「何」


「暇」


「帰れ」


「見てるだけだからな」


「俺も見てるだけみたいなもんだよ」


「お前は働いてるだろ」


「…………」


そうだった。


さらに。


時間が。


過ぎる。


「…………」


管理人が。


計器を見る。


俺を見る。


また。


計器を見る。


「どうした?」


「いや……」


「何?」


「まだ平気なのか?」


「何が?」


「魔力だ」


「…………」


自分の中を。


確認する。


減っている。


当然。


減っている。


でも。


「まだある」


「どれくらい?」


「いっぱい」


「…………」


管理人が。


黙った。


「何」


「いや」


また。


その反応。


最近。


多い。


「普通は」


管理人が。


計器を見る。


「この辺りで交代する」


「もう?」


「ああ」


「…………」


俺は。


設備を見る。


まだ。


終わっていない。


「じゃあ交代?」


「本来ならな」


「誰と?」


「…………」


管理人が。


黙る。


「今日来ているのは、お前だけだ」


「なんで」


「一人分の依頼だからだ」


「…………」


そうだった。


「じゃあ終わり?」


「いや」


「どっち?」


管理人が。


俺を見る。


「続けられるなら」


「続けるけど」


「…………」


「何?」


「いや」


また。


それ。


「じゃあ続ける」


「ああ」


魔力を。


流す。


◇


さらに。


時間が経った。


「…………」


「…………」


「…………」


管理人が。


さっきから。


何度も。


俺を見る。


「何」


「いや」


「さっきからそればっか」


「…………」


計器を見る。


「もう」


管理人が。


呟いた。


「三人分は超えてる」


「…………」


俺の手が。


止まりかけた。


「待って」


「止めるな!」


「三人分?」


「ああ」


「俺が?」


「ああ」


「…………」


頭の中で。


計算する。


報酬。


三倍。


「三人分」


「契約は一人分だ」


「まだ何も言ってない」


「顔で分かる」


「…………」


最近。


みんな。


俺の顔を。


読みすぎだと思う。


「でも」


「駄目だ」


「まだ何も」


「三人分の報酬は出ない」


「…………」


「出ない」


「二人分」


「出ない」


「一人半」


「交渉するな」


「…………」


商売って。


難しい。


「ノア」


レオが。


笑っている。


「何」


「お前、昨日からそればっかだな」


「何が」


「金」


「杖」


「はいはい」


「本当に高いんだぞ」


「分かったから魔力に集中しろ」


「…………」


そうだった。


危ない。


壊したら。


全部。


終わる。


俺は。


設備へ。


意識を戻した。


一定。


同じ量。


増やさない。


減らさない。


「…………」


魔力を。


流し続ける。


そして。


しばらくして。


「よし」


管理人が。


言った。


「止めていい」


「…………」


魔力を。


止める。


杖を。


離す。


ブゥゥゥン……。


設備の光が。


安定する。


「終わり?」


「ああ」


「壊れてない?」


「壊れてない」


「…………」


よかった。


一番。


大事。


「それで」


俺は。


管理人を見る。


「何人分?」


「…………」


「俺、何人分やった?」


管理人が。


計器を確認する。


「およそ」


「うん」


「五人分だ」


「…………」


五。


「じゃあ」


「一人分だ」


「まだ何も言ってない!」


「分かる!」


「五人分働いた!」


「契約は一人分だ!」


「おかしいだろ!」


「最初に説明しただろ!」


「…………」


した。


確かに。


した。


「でも」


「駄目だ」


「二人分くらい」


「駄目だ」


「一・五」


「刻むな!」


「…………」


管理人が。


頭を押さえる。


「追加分についてはギルドに報告しておく」


「…………!」


「ただし」


「何」


「五人分は出ない」


「…………」


「そんな顔するな」


「してない」


「してる」


「…………」


でも。


追加。


あるかもしれない。


悪くない。


俺は。


自分の中を。


確認する。


五人分。


魔力を。


流した。


それでも。


「…………」


まだ。


ある。


結構。


ある。


「…………」


管理人が。


俺を見ている。


「何?」


「お前」


「うん」


「本当に魔法使いか?」


「…………」


また。


それ。


俺は。


冒険者証を。


出そうとする。


「見る?」


「何を?」


「魔法使いって書いてある」


「いや、いい」


「ちゃんと書いてあるよ」


「そういう意味じゃない」


「…………」


じゃあ。


どういう意味だ。


◇


ギルドへ。


戻った。


受付嬢が。


報告書を見る。


「…………」


俺を見る。


また。


報告書を見る。


「何?」


「五人分?」


「らしい」


「一人で?」


「うん」


「…………」


「追加報酬は?」


「まずそこですか?」


「大事」


受付嬢が。


ため息をつく。


「確認します」


「出る?」


「確認します」


「どれくらい?」


「確認します」


「半分?」


「確認します」


「三割?」


「ノアさん」


「はい」


「黙って待ってください」


「…………」


怒られた。


隣で。


レオが。


笑っている。


「商売」


「何」


「難しいな」


「…………」


本当に。


難しい。


でも。


俺は。


少しだけ。


笑った。


魔力は。


まだある。


報酬も。


もらえる。


杖も。


壊れてない。


「…………」


悪くない。


むしろ。


かなり。


いい。


その時。


受付嬢が。


報告書を。


もう一度見た。


「ただ……」


「何?」


「これだけの魔力を供給できるなら」


「うん」


「別の依頼も、お願いできるかもしれません」


「…………」


俺は。


受付嬢を見る。


「高い?」


「そこですか?」


「高い?」


「今回よりは」


「やる」


「まだ何も説明してません!」


「聞く」


「先に聞いてください!」


「分かった」


俺は。


受付嬢を見る。


そして。


思った。


魔力って。


結構。


金になるかもしれない。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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