第23話 魔法使いは大変だ
「それだ」
俺は。
ガルムを見る。
魔物の突進を。
盾で。
受け止めている。
足が。
少しずつ。
後ろへ滑っていた。
「ガルム!」
「何だ!?」
「強化する!」
「…………は?」
ガルムが。
こっちを見た。
「何!?」
「今、何て言った!?」
「強化する!」
「お前、できるのか!?」
「できるよ!」
「初めて聞いたぞ!?」
「言ってないから!」
「なんで言わなかった!?」
「使う機会なかったし!」
「今まであっただろ!!」
魔物が。
盾を。
押し込む。
「ぐっ……!」
「ガルム!」
「話は後だ! 早くやれ!」
「分かった!」
俺は。
杖を握って。
走り出した。
「ノア!」
今度は。
レオ。
「何!?」
「早くガルムにかけろ!」
「今行ってる!」
「どうやってかけるんだ!?」
「普通に!」
「普通に飛ばないだろ!」
「…………」
そうだった。
「だから直接!」
「やっぱり直接なのか!?」
俺は。
ガルムのところまで。
走る。
近くで見ると。
でかい。
「ノア!」
「分かってる!」
魔物が。
前脚を。
振り上げる。
「うわっ!」
「ノア!?」
「大丈夫!」
横から。
回り込む。
ガルムの。
後ろへ。
「来た!」
「遅い!」
「近くで見ると怖かった!」
「今言うことか!?」
俺は。
ガルムの背中に。
杖先を。
押し当てた。
「いくよ!」
「頼む!」
魔力を。
流す。
「《ブースト》」
ガルムの身体を。
淡い光が。
包む。
「おお……!」
押されていた。
足が。
止まった。
「効いた!」
ガルムが。
盾を。
押し返す。
巨大な魔物の身体が。
少し。
後ろへ動いた。
「すごい!」
ミアが。
声を上げる。
「ノア、それ使えたんだ!」
「使えるよ!」
「初めて見た!」
「初めて使ったから!」
「なんで!?」
今日。
何回。
聞かれるんだ。
◇
魔物が。
大きく。
身体を振った。
ガルムが。
盾で受ける。
ドン!!
「ぐっ!」
でも。
今度は。
押されない。
「ガルム!」
「大丈夫だ!」
俺は。
背中に。
杖を当てたまま。
魔力を流す。
「…………」
これ。
思ったより。
いいかもしれない。
ガルムは。
盾役。
基本的に。
敵の正面で。
踏ん張る。
だから。
俺も。
後ろにいればいい。
「ノア!」
レオが。
魔物の横を。
走り抜ける。
「俺にもできるか!?」
「できるよ!」
「じゃあ頼む!」
「止まって!」
「は!?」
「杖当てないと無理!」
「今!?」
「うん!」
レオが。
魔物の攻撃を。
避ける。
そのまま。
反対側へ。
回り込む。
「止まれるわけないだろ!」
「じゃあ無理!」
「諦めるの早えよ!!」
だって。
触れない。
どうしようもない。
「お前が走って来い!」
「杖当てながら!?」
「そうだ!」
「無理だよ!」
「やってみろ!」
「嫌だよ!」
魔物の周りを。
走り回るレオ。
その後ろを。
杖を押し当てながら。
追いかける。
「…………」
想像した。
無理だ。
絶対。
転ぶ。
「ガルムの方が楽」
「比較するな!!」
俺は。
ガルムの背中へ。
杖を戻した。
やっぱり。
ここが。
落ち着く。
◇
ヒュッ!
ミアの矢が。
飛ぶ。
魔物の身体へ。
刺さる。
でも。
浅い。
「硬い!」
ミアが。
次の矢を。
構える。
「ノア!」
「何!?」
「私にもできる!?」
「できると思う!」
「じゃあお願い!」
「でも」
俺は。
ガルムを見る。
「離したら切れる」
「え?」
試しに。
杖を。
離す。
ガルムを包んでいた。
光が。
消えた。
「ノア!」
「やっぱり切れた!」
「戻せ!!」
「はい!」
杖を。
背中へ。
戻す。
「《ブースト》!」
「おおっ!」
復活。
なるほど。
やっぱり。
接触している間だけ。
「ミア!」
「何!?」
「ずっとは無理!」
「じゃあ矢を撃つ時だけ!」
「それならできる!」
「ガルム!」
ミアが。
叫ぶ。
「ちょっとだけ耐えて!」
「ちょっとだけだぞ!」
「ノア!」
「分かった!」
俺は。
杖を離す。
「早く戻れよ!」
「分かってる!」
ミアへ。
走る。
「準備!」
「できてる!」
ミアは。
すでに。
弓を構えていた。
なるほど。
これなら。
止まってる。
俺は。
ミアの背中に。
杖先を。
押し当てる。
「いくよ」
「お願い!」
「《ブースト》!」
淡い光が。
ミアを包む。
「――っ!」
「どう?」
「すごい……!」
ミアが。
弦を。
引く。
いつもより。
深く。
強く。
「撃つよ!」
「うん!」
ヒュン!!
矢が。
飛ぶ。
ドッ!!
魔物の肩へ。
深く。
突き刺さった。
「入った!」
「やった!」
「ノア!!」
ガルム。
忘れてた。
「今行く!」
俺は。
走る。
「遅い!」
「数秒じゃん!」
「こっちは長いんだ!」
ガルムの。
背中へ。
杖。
「《ブースト》!」
「よし!」
また。
安定する。
「…………」
なるほど。
ガルムは。
ずっと。
当てておける。
ミアは。
撃つ瞬間だけ。
当てればいい。
レオは。
「ノア!」
「何!?」
魔物の横を。
走っている。
「俺は!?」
「無理!」
「考えろよ!!」
相性が。
悪い。
◇
「ミア!」
「準備できてる!」
俺は。
ガルムから。
離れる。
走る。
ミアに。
杖を当てる。
「《ブースト》!」
矢。
飛ぶ。
刺さる。
「ノア!」
「今行く!」
ガルムへ。
戻る。
「《ブースト》!」
盾。
押し返す。
「ミア!」
「もう一回!」
また。
走る。
「ノア!」
ガルム。
「ノア!」
ミア。
「ノア!」
ガルム。
「ノア!」
「ちょっと待って!!」
忙しい。
さっきまで。
何をすればいいか。
分からなかったのに。
今は。
やることが。
多すぎる。
少し離れたところで。
別パーティの魔法使いが。
俺を見ていた。
「…………」
「何だ、あれ」
隣の剣士が。
答える。
「支援魔法……だと思う」
「支援魔法って、あんなに走るのか?」
「知らない」
「俺もそう思う!!」
聞こえてる。
◇
「今だ!」
レオが。
叫ぶ。
俺は。
ガルムの背中へ。
杖を。
押し当てる。
「《ブースト》!」
「おおおっ!」
ガルムが。
盾を。
一気に押し込む。
魔物の体勢が。
崩れた。
「ミア!」
「分かってる!」
俺は。
走る。
杖を。
ミアの背中へ。
「《ブースト》!」
「いくよ!」
強化された。
一射。
ヒュン!!
矢が。
魔物へ。
深く突き刺さる。
そこへ。
レオ。
別パーティの。
剣士。
槍。
そして。
魔法。
一斉に。
叩き込まれる。
魔物が。
大きく。
よろめいた。
そして。
倒れた。
ズン!!
「…………」
静かになる。
「倒した?」
ミアが。
弓を下ろす。
「まだ油断するな」
レオが。
魔物を見る。
動かない。
少しして。
別パーティの剣士が。
息を吐いた。
「終わったな」
「…………」
俺も。
息を吐く。
疲れた。
今日は。
殴ってない。
なのに。
いつもより。
疲れた気がする。
「ノア」
レオが。
こっちへ来る。
「何?」
「お前」
「うん」
「支援魔法」
「うん」
「今まで使えたのか?」
「使えたよ」
「なんで言わなかった!?」
「だって」
俺は。
杖を見る。
「当ててる間しか効かないし」
「…………」
「実戦じゃ使えないと思ってた」
「今使ってただろ!!」
「使えたね」
「お前も今気づいたのか!?」
「うん」
「自分の魔法だろ!!」
「頼まれなかったし」
「自分で考えろよ!!」
「…………」
確かに。
「今納得するな!」
「でも」
ミアが。
俺の杖を見る。
「これ、結構すごくない?」
「何が?」
「ノアの魔法」
「…………」
「飛ばなくても、直接なら使えるんでしょ?」
「まあ」
「だったら」
ミアが。
少し考える。
「他にもできるんじゃない?」
「他?」
「うん」
「…………」
考えたことが。
なかった。
魔法は。
飛ばす。
飛ばない。
だから。
殴る。
ずっと。
それだけだった。
でも。
飛ばなくても。
使える。
「…………」
もしかして。
俺。
「結構できる?」
「今さら!?」
ミアが。
笑った。
「ノア」
レオが言う。
「何?」
「これから色々試してみよう」
「うん」
「ただし」
「?」
レオが。
俺の杖を。
指す。
「殴るのは禁止な」
「…………」
「なんで黙る」
「一番得意なのに」
「魔法使いが言うな」




