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『魔法が飛ばせないので、杖でぶん殴ることにした ~落ちこぼれ魔法使い、なぜか最強の槌使いと呼ばれる~』  作者: 蝶野摩矢


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22/61

第22話 杖は大切に使いましょう

「杖を買うために」


「うん」


「杖がいる」


「そうなるな」


「…………」


俺は。


考えた。


杖が欲しい。


そのためには。


金がいる。


金を稼ぐには。


依頼を受ける。


依頼を受けるには。


杖がいる。


「…………」


おかしい。


どこから。


始めればいいんだ。


「借りよう」


「誰から?」


レオが聞く。


「…………」


俺は。


レオを見る。


「持ってないぞ」


ミアを見る。


「弓だよ?」


ガルムを見る。


「盾だ」


「…………」


使えない。


「今、失礼なこと考えただろ」


「考えてない」


仕方ない。


買うしかない。


◇


カラン。


昨日の。


杖屋。


店主と。


目が合った。


「…………」


「…………」


「七割引きにはならんぞ」


「今日は違います」


「今日は?」


「安い杖ください」


「…………」


店主が。


俺を見る。


「お前が使うのか?」


「はい」


「やめとけ」


「なんで!?」


まだ。


何もしてない。


「一番安いやつが欲しい」


「昨日、杖を魔力だけで折った奴に?」


「今回は折りません」


「信用できんな」


「本当です」


「測定石」


「ひびだけです」


「杖」


「折れました」


「帰れ」


「なんで!?」


店主が。


ため息をついた。


「何に使う?」


「依頼です」


「伝説の杖は?」


「それを買うためです」


「…………」


「伝説の杖を取るための杖を買うために、依頼で使う杖が必要なんです」


「…………」


店主が。


額を押さえた。


「ややこしいな」


「俺もそう思います」


店主は。


店の奥から。


一本の杖を。


持ってきた。


装飾。


ほぼなし。


魔石。


小さい。


見るからに。


普通。


「これなら安い」


「おお」


値札を見る。


「…………」


「どうした?」


「もう少し」


「ない」


「一割引き」


「昨日七割までいった奴が一割で済ませるのか」


「成長しました」


「してない」


駄目だった。


俺は。


杖を買った。


財布が。


さらに。


軽くなった。


◇


店の外。


レオが。


俺の新しい杖を見る。


「いいか、ノア」


「何?」


「これは何だ?」


「杖」


「そうだ」


「…………」


「武器じゃない」


「杖」


「鈍器でもない」


「杖」


「魔物が出ても?」


「杖」


「そうじゃない!」


面倒くさいな。


「絶対に殴るな」


「分かってる」


「本当だな?」


「分かってるって」


「本当に?」


「しつこい」


俺だって。


壊したくない。


これを壊したら。


また。


金が減る。


「じゃあ魔物が来たらどうする?」


「魔法」


「飛ばないだろ」


「…………」


「…………」


確かに。


「じゃあどうすればいいんだよ」


「それを考えろ!」


無茶を言う。


◇


昼。


俺たちは。


冒険者ギルドの前に。


集まっていた。


今回の依頼は。


共同討伐。


俺たちだけでは。


危険らしい。


「来たみたいだな」


レオが。


前を見る。


四人。


歩いてくる。


剣士。


斥候らしい男。


槍を持った女。


そして。


杖を持った男。


「…………」


魔法使い。


普通の。


多分。


飛ばせる方。


「お前」


レオが。


俺を見る。


「何?」


「変なこと言うなよ」


「何も言わないよ」


「本当だな?」


「なんで今日そんなに信用ないの?」


向こうの剣士が。


手を上げた。


「今回、一緒に依頼を受けるパーティだな?」


「ああ」


レオが。


前へ出る。


互いに。


簡単な自己紹介。


俺の番。


「ノアです。魔法使いです」


杖を持った男が。


反応した。


「魔法使い?」


「はい」


俺のローブを見る。


杖を見る。


そして。


少し考える。


「…………もしかして」


「?」


「杖で魔物を殴る魔法使い?」


「…………」


なんで。


知ってる。


「ノア」


ミアが。


俺を見る。


「有名になってる」


「嬉しくない」


もっと。


別のことで。


有名になりたい。


「本当に杖で殴るのか?」


相手の魔法使いが。


少し楽しそうに聞く。


「今日は殴りません」


「今日は?」


「禁止されました」


「…………」


「杖が高いので」


「そういう理由?」


そういう理由だ。


「ちなみに」


相手が。


俺の杖を見る。


「魔法は?」


「使えます」


「飛ぶ?」


「飛びません」


「…………ああ」


「ああ?」


「噂通りだ」


どこまで。


広がってるんだ。


俺の噂。


◇


目的地へ。


向かう。


今回の討伐対象は。


森の奥に。


住み着いた。


大型の魔物。


普通の冒険者なら。


単独パーティでは。


避ける相手らしい。


だから。


共同討伐。


報酬も。


高い。


「…………」


俺は。


歩きながら。


考える。


これを倒せば。


金が入る。


金が入れば。


杖に近づく。


杖を買えば。


第二試練を突破できる。


第二試練を突破すれば。


伝説の杖に近づく。


「…………」


「ノア」


レオが呼ぶ。


「何?」


「顔が怖い」


「杖のこと考えてた」


「金だろ」


「両方」


森の奥へ。


進むほど。


木々が。


濃くなる。


「暗いな」


レオが。


言った。


そして。


俺を見る。


「…………」


「何?」


「…………ライト」


「今日はあるよ!」


俺は。


杖を構える。


魔力を。


少し流す。


杖先に。


光。


周囲が。


明るくなる。


「おお」


別パーティの。


一人が言った。


「便利だな」


「…………」


久しぶりに。


魔法使いとして。


褒められた気がする。


「ノア」


ミアが。


俺を見る。


「嬉しそう」


「普通」


「顔に出てるよ」


最近。


顔を。


読まれすぎている。


◇


しばらくして。


先頭の男が。


手を上げた。


全員。


止まる。


「いる」


木々の向こう。


低い。


唸り声。


ズシン。


地面が。


揺れる。


「来るぞ!」


巨大な影が。


飛び出した。


「散れ!」


全員が。


一斉に動く。


ガルムが。


前へ。


盾を構える。


レオが。


剣を抜く。


ミアが。


弓を構える。


別パーティも。


それぞれ。


武器を構えた。


俺も。


杖を握る。


「ノア!」


レオが。


叫ぶ。


「何!?」


「殴るなよ!」


「分かってる!」


「絶対だぞ!」


「分かってるって!」


俺は。


杖を。


魔物へ向ける。


火。


杖先に。


炎が生まれる。


「…………」


飛ばない。


当然。


飛ばない。


「…………」


水。


出る。


飛ばない。


風。


出る。


飛ばない。


「…………」


知ってた。


知ってたけど。


改めてやると。


何もできない。


目の前では。


みんな。


戦っている。


剣。


弓。


槍。


そして。


別パーティの魔法使い。


「《ファイアボール》!」


炎が。


俺の横を。


飛んでいった。


「…………」


ドゴン!!


魔物に。


直撃。


「…………」


俺の炎は。


杖先。


「…………」


なんか。


ムカつく。


「ノア!」


レオの声。


「何!?」


「ぼーっとするな!」


「してない!」


でも。


どうする。


殴るな。


魔法は飛ばない。


回復は。


まだ誰も怪我してない。


ライトは。


明るい。


「…………」


俺。


何すればいい?


その時。


「ぐっ!」


ガルムが。


魔物の突進を。


盾で受け止めた。


ズン!!


「ガルム!」


足が。


地面を滑る。


押されている。


「くっ……!」


俺は。


走った。


でも。


何をする。


殴る?


駄目。


杖が。


壊れる。


「ノア!」


ミアが。


叫んだ。


「ガルムを強化できない!?」


「飛ばないよ!」


「直接やればいいでしょ!」


「…………」


俺は。


止まった。


「…………」


ガルムを見る。


自分の杖を見る。


もう一度。


ガルムを見る。


「それだ」



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