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『魔法が飛ばせないので、杖でぶん殴ることにした ~落ちこぼれ魔法使い、なぜか最強の槌使いと呼ばれる~』  作者: 蝶野摩矢


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第20話 魔力を込めただけなのに

「嫌な予感しかしない」


レオが。


俺の杖を見ている。


「大丈夫」


「何が?」


「今回はちゃんと魔法でやる」


「…………」


レオが。


黙った。


「何?」


「余計に不安になった」


失礼な。


目の前には。


巨大な石。


次へ続く道を。


完全に塞いでいる。


その横には。


『魔法をもって、道を開け』


と。


書かれている。


つまり。


魔法で。


壊せばいい。


「ノア」


ミアが。


石を見上げる。


「これ、本当に壊せる?」


「やってみないと分からない」


「硬そうだぞ」


ガルムが。


石を軽く叩く。


ゴン。


重い音が。


響いた。


「…………」


普通に。


殴っただけじゃ。


無理そうだ。


だったら。


魔力を込める。


かなり。


強く。


「よし」


俺は。


杖を構えた。


「待て」


レオが。


止める。


「何?」


「何する気だ?」


「魔力を込める」


「どれくらい?」


「さっきくらい」


「待て」


「何?」


「さっきって」


レオが。


後ろを指さす。


「測定石に入れたくらいか?」


「うん」


「やめろ」


「なんで?」


「嫌な予感しかしない!」


「でも」


俺は。


巨大な石を見る。


「これくらいしないと壊れないだろ」


「それはそうかもしれないけど!」


「じゃあ」


「ちょっとずつやれ!」


「…………」


なるほど。


それも。


そうか。


俺は。


杖を握る。


そして。


魔力を。


流した。


少しずつ。


杖先の魔石が。


光る。


「…………」


まだ。


大丈夫。


もう少し。


魔力を。


増やす。


「ノア」


「何?」


「それ、いつもより光ってない?」


ミアが。


少し離れる。


「本気だから」


「離れた方がいい?」


「なんで?」


「なんとなく」


失礼な。


さらに。


魔力を込める。


第一試練。


あの時くらいまで。


「…………」


まだ。


いける。


「ほら」


「何が?」


「大丈夫」


「まだ数秒だぞ」


さらに。


魔力を――


パキッ。


「…………」


「…………」


俺は。


止まった。


全員。


杖を見る。


「…………」


今。


聞こえた。


俺は。


ゆっくり。


杖先を見る。


ひび。


「…………」


「ノア」


レオが。


静かに言った。


「何?」


「まだ殴ってないよな?」


「うん」


「魔力止めろ」


「うん」


俺は。


すぐに。


魔力を止めた。


「…………」


「…………」


パキッ。


「…………」


ひびが。


増えた。


「ノア」


「何?」


「止めた?」


「止めた」


「じゃあなんで増えてるんだ!?」


「俺が聞きたい!」


パキ。


パキッ。


「ちょっと!」


ミアが。


さらに離れる。


「それ大丈夫!?」


「大丈夫じゃない!」


「どうするの!?」


「分からない!」


「置け!」


「待って!」


「なんで!?」


「まだ使えるかもしれない!」


バキッ。


「…………」


「…………」


折れた。


綺麗に。


折れた。


「…………」


静かになった。


俺は。


手元を見る。


折れた杖。


次に。


巨大な石を見る。


傷。


なし。


当然だ。


まだ。


触ってすら。


いない。


「…………」


ミアが。


小さく言った。


「何もしてないのに壊れた」


「したよ」


「何を?」


「魔力込めた」


「それだけ?」


「うん」


「…………」


レオが。


額を押さえた。


「試練始まってすらねえ……」


「始まってるだろ」


「標的に何もしてないだろ!」


「…………」


それは。


そうかもしれない。


俺は。


折れた杖を見る。


「…………」


「ノア?」


ミアが。


俺を見る。


「何?」


「大丈夫?」


「…………」


大丈夫ではない。


「また挑戦すればいいよ」


「うん」


「そんなに落ち込まなくても」


「…………」


「ノア?」


俺は。


折れた杖を。


持ち上げた。


「これ」


「うん」


「いくらだったっけ」


「そこ!?」


大事だ。


かなり。


大事だ。


また。


杖を買わないといけない。


しかも。


今度は。


これより。


ずっと丈夫なやつ。


「どっちにしろ」


レオが。


巨大な石を見る。


「その杖じゃ無理だったんだ」


「…………」


「次はもっと丈夫な杖が必要だな」


「どれくらい?」


「少なくとも」


レオが。


俺を見る。


「お前が本気で魔力を込めても壊れないくらい」


「…………」


嫌な予感がする。


「レオ」


「何だ?」


「それ」


「うん」


「高い?」


「…………」


レオが。


少し考える。


「多分」


「…………」


第二試練より。


難しい問題が。


出てきた。


◇


「帰ろう」


「そうだな」


レオが。


頷く。


今のままじゃ。


どうしようもない。


杖がない。


魔法も使えない。


巨大な石は。


無傷。


一度。


ベルナへ戻るしかない。


「…………」


俺は。


来た道を見る。


「レオ」


「何だ?」


「どうやって帰るの?」


「…………」


「…………」


全員。


黙った。


入口の扉は。


閉まっている。


「開けられる?」


ミアが聞く。


「分からん」


レオが。


扉を見る。


「…………」


「…………」


「ノア」


「何?」


「なんで俺を見る」


「リーダーだから」


「こういう時だけリーダー扱いするな!」


でも。


帰れないと。


困る。


俺たちは。


部屋の中を。


調べる。


すると。


ガルムが。


壁際で。


止まった。


「これ」


「何?」


小さな。


石板。


文字が。


刻まれている。


レオが。


読む。


「『試練を放棄する者は――』」


「帰れる?」


「最後まで聞け」


「はい」


「『ここに触れよ』」


「…………」


分かりやすい。


「これで帰れるんじゃない?」


ミアが言う。


「多分な」


俺は。


石板を見る。


「触ればいい?」


「待て」


レオが。


俺を見る。


「なんで?」


「お前は触るな」


「なんで!?」


「さっき石にひび入れただろ!」


「魔力流さなければ大丈夫だよ!」


「念のためだ!」


信用が。


なくなっている。


レオが。


石板に触れた。


「…………」


何も。


起きない。


「…………」


「…………」


「押す?」


「もう押してる」


「魔力?」


「お前は黙ってろ」


ひどい。


その時。


石板が。


光った。


【第二試練――放棄】


【挑戦者を排出します】


「…………」


「排出?」


ミアが。


首を傾げる。


「帰れるってことじゃない?」


「もっと普通に書けばいいのに」


俺が。


そう言った。


直後。


カチッ。


「…………」


足元から。


音がした。


「今の何?」


床が。


消えた。


「…………え?」


落ちた。


「うわああああああ!!」


「ノアァァァ!!」


「俺のせいじゃない!!」


◇


ドサッ!!


「痛っ!」


地面に。


落ちた。


「…………」


「…………」


俺は。


顔を上げる。


森。


目の前には。


遺跡。


外だ。


「…………」


本当に。


排出された。


「ノア!」


上から。


声。


「何!?」


「どけ!」


「え?」


ドサッ!!


「ぐえっ!」


「ご、ごめん!」


ミアだった。


「早くどけ!」


「待っ――」


ドサッ!!


「ぐっ!」


今度は。


レオ。


「重い!」


「俺に言うな!」


「二人ともどいて」


「ガルム!?」


俺たちは。


慌てて。


転がった。


ドサッ!!


「…………」


「…………」


全員。


地面に。


倒れていた。


しばらく。


誰も。


喋らなかった。


「…………」


俺は。


空を見る。


「帰れたな」


レオが言う。


「うん」


「よかったな」


「うん」


「…………」


俺は。


折れた杖を見る。


そして。


財布を見る。


「…………」


「ノア」


「何?」


「今度は何だ?」


「帰りたくなかったかも」


「どっちだよ!!」



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