↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
456/461

EP 4

【中身はおっさん!?聖獣の正体】URハエ叩きと、投げ飛ばされたモフモフ

「きゅぅ〜ん♡ きゅぅんきゅぅ〜ん♡(スーハースーハー♡ クンカクンカ♡)」

ムーンキャピタルの大理石の広場。

エミリアの足元に擦り寄ってきた、真っ白でフワフワの愛らしい妖狐の聖獣、コン太。

女性向けファンタジーの世界において、ヒロインを癒やす「モフモフのマスコット枠」として絶対的な人気を誇るはずの存在である。

しかし。

現在のコン太の行動は、どう贔屓目に見ても『聖なる獣』のそれとはかけ離れていた。

エミリアの豊満な胸の谷間に顔をグリグリと押し付け、鼻の穴を全開にして深く息を吸い込む。さらに、前足でエミリアのウエストをガッチリとホールドしたまま、下半身(腰)をリズミカルに『カクカク』と前後に激しく振っているのだ。

「……おい、エミリア。お前、前世で犬や猫を飼ったことはあるか?」

太郎が、首のタオルで汗を拭きながら、極めて冷めた目でコン太を見下ろした。

「えっ? い、いえ……ペット不可のマンションだったので、飼ったことはありませんけど……」

エミリアが戸惑いながら答える。

「そうか。だからそんな異常行動を『愛情表現』だと勘違いできるんだな」

太郎は微糖の缶コーヒーをコンッと広場のベンチに置き、ビシィッとコン太を指差した。

「よく見ろ! そいつ、エミリアの胸元で匂いを嗅ぎながら、明らかに『発情したオッサンの腰つき』で腰を振ってるぞ! それ、どう見ても中に中年親父の魂が入ってるだろ!!」

「なっ……!?」

エミリアの顔が、一瞬にして真っ赤に染まった。

太郎の的確すぎる指摘を受け、エミリアの脳内に、転生してからの『コン太との思い出(違和感)』が走馬灯のように駆け巡った。

『きゅ〜ん♡(お風呂上がり、脱衣所のカゴからエミリアの脱ぎたての下着を引っ張り出し、頭から被ってモゾモゾと匂いを嗅いでいた)』

『きゅぅっ!(エミリアが着替えようとすると、絶対に部屋から出て行かず、特等席から目を血走らせて凝視していた)』

『きゅぴ〜♡(夜、ベッドに潜り込んできて、なぜか必ず太ももの間に挟まろうとしていた)』

(あ……あれ、聖獣特有のイタズラや甘えだと思ってたけど……!? 全部、ただのエロオヤジのセクハラ行動じゃないですかぁぁっ!!)

エミリアの顔面から一気に血の気が引き、サーッと青ざめていく。

「そ、そういえば……私以外の女性には見向きもしないし、私が少しでも露出の多い服を着ると、異常なほどテンションが上がって……っ!」

「間違いないな。可愛いガワ(外見)を被って、合法的に若い女にセクハラを満喫しようとする、前世のキモいおっさんの魂が憑依してるパターンだ。タチが悪すぎる」

太郎が冷酷に断罪する。

「きゅ、きゅぅ〜ん……!?(ち、ちげーよ! 俺は高貴な聖獣様だぞ! デタラメ言ってんじゃねぇ!)」

コン太が、あからさまに動揺した様子で鳴き声を上げるが、その目は明らかに『図星を突かれたおっさんの焦り』を浮かべていた。

「おい、エミリアから離れろ、このセクハラ獣。俺の国の保健所に通報して、狂犬病の注射(極太)を100本くらい打ってやるからな」

太郎がジリッと一歩踏み出し、威圧感を放った。

その瞬間。

コン太の愛らしい瞳が、ドス黒い殺意と敵意に満ちた『野獣(あるいはキャバクラで説教されたオッサン)』の目へと変貌した。

「ギャウッ!! きゅぴぃぃぃぃぃぃッッ!!(うっせぇんだよ底辺ジャージ男がァッ! 俺の極楽ハーレム生活の邪魔すんじゃねぇぇぇっ!!)」

コン太はエミリアの腕からポーンと飛び降りると、太郎に向かって大きく口を開けた。

その小さな口の奥に、凄まじい熱量を持った魔力が収束していく。女性には甘ったるい鳴き声を上げるくせに、男が近づくと容赦なく焼き尽くすという、コン太特有の『嫉妬の火柱』である。

「た、太郎様! 危ないですわ!」

サリーが慌てて杖を構えようとする。

しかし、太郎は全く動じることなく、虚空に右手をかざした。

「人間様(しかも無害な男)に火を吹くなんて、完全に狂犬病だな。飼い主(公爵)のしつけがなってない証拠だ」

ゴォォォォォォォッッ!!!

コン太の口から、大理石の広場を飲み込むほどの巨大な紅蓮の火炎球が、太郎めがけて放たれた。

並の冒険者なら一瞬で炭化するほどの高火力。

「いでよ、100円ショップ! 害虫駆除の最終兵器……『URウルトラレア・超合金ハエ叩き』!!」

太郎の手元にポンッ!と現れたのは、柄の部分がチタン合金で補強され、網目の部分が特殊な魔力吸収素材で編み込まれた、100均(※太郎のスキル補正で強度がバグっている)のハエ叩きであった。

「そんなもので、聖獣の炎が防げるわけ……!」

エミリアが悲鳴を上げる。

「フンッ!!」

太郎は、プロテニスプレイヤー顔負けの完璧なフォームで、迫り来る巨大な火炎球に向かってURハエ叩きをフルスイングした。

『スパーーーーーーーンッッ!!!』

凄まじい衝撃音。

ハエ叩きの網目が火炎球の魔力を物理的に捉え、弾性エネルギーへと変換する。

太郎の馬鹿力によって打ち返された炎は、見事な放物線を描いてムーンキャピタルの上空へと飛んでいき、空の彼方でドカンッ!と花火のように無害に爆発した。

「なっ……!?」

エミリアの顎が外れんばかりに開く。

「き、きべぇぇっ!??(俺の渾身の聖なる炎が、ハエ叩きでホームランされただとぉぉっ!?)」

コン太が、目玉が飛び出んばかりの表情で硬直する。

「ほら見ろ、エミリア」

太郎はURハエ叩きを肩に担ぎ、ニヤリと笑った。

「可愛いペットなら、怒られてもシュンとするはずだ。でもこいつは、図星を突かれてキレた挙句、男である俺にだけ明らかな殺意を向けてきやがった。……キャバクラで女の子にウザ絡みしてるのを注意されて、逆ギレして暴れてる酔っ払いのオッサンと、全く同じ生態メンタルだぞ」

太郎の完璧すぎる『オッサンの生態分析』に、エミリアの心の中で、コン太に対する『可愛いモフモフ』という幻想が、音を立てて完全に崩壊した。

「……お、オッサン。このモフモフの中には、気持ち悪いおっさんが……!」

エミリアの全身に、強烈な鳥肌が立った。

これまで、この獣と一緒にベッドで寝て、お風呂上がりに抱きしめ、胸の谷間に顔を埋めさせていたという事実。

それが全て、『中身がおっさんの確信犯的なセクハラ』であったと理解した瞬間。

社畜OL時代に培われた、セクハラ上司に対する『絶対的な拒絶反応』が、限界を突破した。

「きゅ、きゅぅぅ〜ん?(え、エミリアちゃ〜ん? 違うよ、ボクは可愛いコン太だよ〜?)」

コン太が、焦ったように上目遣いでエミリアの足元にすり寄ろうとする。

「ヒィィィィィィィィッ!!! 触らないでぇぇぇっ! 気持ち悪いぃぃぃぃっ!!!」

エミリアの絶叫が、大理石の広場に響き渡った。

彼女は、足にすがりつこうとしたコン太の首根っこをガシッと掴むと、火事場の馬鹿力で頭上高く持ち上げた。

「きゅえっ!?」

「セクハラオヤジは、保健所(あるいは警察)に行きなさいよぉぉぉっ!!」

ドゴォォォォォンッ!!

エミリアは、見事な一本背負いの要領で、コン太を硬い大理石の地面に思い切り叩きつけた。

「きゅべぁぁぁぁぁぁぁっ……!!」

コン太はカエルのように手足をピーンと伸ばし、白目を剥いて完全に気絶した。

その口からは、「あ〜、女の子のおっぱい最高……」という、明らかにおっさんの声色での寝言が漏れ出ている。

「ぜぇ、ぜぇ……っ。や、やりました……私、自立の第一歩として、セクハラ獣を退治しました……!」

エミリアが肩で息をしながら、太郎に向かってVサインを決める。

「おう、よくやった。これで一つ、お前を縛り付けていた鎖が外れたな」

太郎が満足げに頷いた。

しかし、その平穏な(?)解決劇を、許さない男が一人いた。

「……俺の女に近づくばかりか、俺が与えた『聖獣』を傷つけるとは……」

広場の隅、大理石の街灯の陰から。

極寒の冷気と、ドス黒い殺意オーラを纏った男が、ついにその姿を現したのだ。

「ヴァ、ヴァルター様……!」

サリーが息を呑み、杖を構え直す。

氷血公爵ヴァルター・フォン・アーデルハイト。

彼は、気絶したコン太を一瞥することもなく、ただ真っ直ぐに、狂気すら孕んだ青い瞳で、太郎を睨み据えていた。

「貴様という害虫は、俺がこの手で排除する。……エミリア、お前は黙って俺の腕の中にいればいい」

ヴァルターの手の中に、バチバチと青白い雷光を纏った魔剣が具現化する。

ソーシャルディスタンスを完全に無視し、出会って三分の女に異常なまでの執着を見せる『変質者(公爵)』との直接対決が、ついに迫っていた。

「……はぁ。仕事サボってる公爵の次は、ストーカーの相手かよ。ブラック企業よりタチが悪いな」

太郎は微糖の缶コーヒーを一気に飲み干すと、肩に担いだURハエ叩きを構え、面倒くさそうに首をポキリと鳴らした。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。