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アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


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EP 2

【底辺の共鳴】督促状と茹で卵、そして驚愕の駐車料金

「さぁさぁカグヤ様! 世界で一番美しくて、気高くて、そしてお金持ちな女神様に、乾杯ですわ〜っ!!」

タローソンのイートインスペース。

先ほどまでルチアナがヤケ酒を煽っていたテーブルは、今や完全に『会員制の高級ラウンジ』と化していた。

その中心で、ピンク色の芋ジャージを着た地下アイドル・リーザが、首に白いタオルをかけ(ボーイのつもりらしい)、手慣れた手つきで金貨10枚(10万円)の最高級ワインのボトルを傾けている。

「オホホホ! 良いですわね、貴女! なかなか見所がありますわ! もっと注ぎなさいな!」

「はい喜んでぇ! ドボドボドボッ!!」

カグヤはすっかり上機嫌だった。

ルチアナにマウントを取れた高揚感と、自分を「お金持ち」と持ち上げてくれるリーザの完璧なヨイショにより、彼女の虚栄心は限界まで満たされていたのだ。

「ちょっとリーザ! あんた、なんでそっちの味方してるのよ! 私の奢りの時はもっと塩対応だったじゃない!」

ルチアナが空になった缶チューハイを握りつぶしながら抗議する。

「アイドルたるもの、ファンの皆様の『可視化された愛(現金)』の量によって対応を変えるのは当然の摂理ですわ!」

リーザは全く悪びれずに胸を張り、カグヤのグラスに並々とワインを注ぐ。

「さぁカグヤ様、クイッといっちゃってくださいませ! 貴女の美貌は、夜空の月よりも輝いておりますわーっ!」

「オホホホ! 当然ですわ! 私は月そのものですもの! ルチアナちゃんみたいな芋くさいジャージ女神とは格が違いますのよ! ごきゅっ、ごきゅっ……ぷはぁっ! 美味しいっ! やっぱり高いお酒は最高ね!」

カグヤは煽られるままに、アルコール度数の高い高級ワインを水のようにガブガブと飲み進めていく。

(フフフ……。チョロいですわ、この神様。見栄っ張りな人ほど、持ち上げられれば羽振りが良くなる。このまま完全に酔い潰して、お会計の時にチップ(お小遣い)を多めに巻き上げてやりますわ!)

リーザの強欲な目が、カグヤの脇に置かれたクロコダイルの高級バッグをロックオンしていた。

それから一時間後。

「あーっはっはっは! 月人君はぁ〜、私の、モノよぉ〜……ひっく」

「なによぉ! 月人君はねぇ、私の『ガオガオン』の歌で紅白に出るのよぉ! アンタなんかに渡さないわよぉ〜……ういっ」

テーブルの上には、完全に空になった10万円のワインボトルと、追加で頼まれたストロング系チューハイの空き缶が散乱していた。

カグヤもルチアナも、すっかり出来上がり、テーブルに突っ伏して呂律の回らない口調で泥沼の推し活トーク(マウント合戦)を繰り広げている。

(……よし。完全に意識が飛んでいますわね)

リーザは周囲を素早く確認した。店長の太郎はレジの奥で在庫の確認作業をしており、こちらの様子には気づいていない。

リーザは音もなくカグヤの背後に回り込むと、タローソンの前を掃除する際に野良犬からエサを奪い返すために培った『究極のスリ技術』を発動させた。

スッ……。

一切の衣擦れの音も立てず、カグヤのクロコダイルのバッグの留め金を外し、中から分厚い長財布を抜き取る。

(ふふふ……! ブラックカードでボーナスをもらった世界神のお財布! さぞかし金貨がパンパンに詰まっていることでしょう! ちょっぴり中身を拝見して、チップの前借りを……)

リーザは期待に胸を膨らませ、財布のチャックをジィッと開けた。

しかし。

「…………え?」

財布の中を覗き込んだリーザの動きが、ピタリと止まった。

そこに入っていたのは、眩い金貨の山でも、プラチナカードでもなかった。

小銭入れのスペースには、くすんだ銅貨が数枚と、パチンコ屋の景品でもらったと思われる謎のプラスチックのメダルが数枚。

そして、お札入れのスペースには、何重にも折りたたまれた『大量の紙切れ』がギュウギュウに詰め込まれていたのだ。

(こ、これは……お札ではありませんわ……?)

リーザが不思議に思い、その紙切れを一枚そっと広げてみる。

『【重要】天界・神聖マンション(家賃50万円)家賃滞納のお知らせ。期日までに振り込みがない場合、光輪を差し押さえます』

『【警告】魔導クレジットカード・ルナミス銀行。引き落としが確認できませんでした。現在、カードの利用を停止しております』

『【至急】アルクス・魔導レンタカー。真っ赤なオープンカーの返却期日が過ぎております。延滞金が1日につき金貨1枚発生しておりますので――』

真っ赤なインクで押された『督促』『警告』『差し押さえ』のスタンプの数々。

「…………」

リーザは無言で財布を閉じ、そっと、元のバッグの中へと戻した。

そして、泥酔して「わだしのぉ、ブラックカードでぇ……シャンパンタワーをぉ……」と寝言を言っているカグヤの顔を、じっと見つめた。

リーザの強欲でギラギラしていた瞳から、スッと険が取れ、まるで迷子の小犬を見るような、生暖かく、そして深い『慈愛(哀れみ)』の感情が浮かび上がった。

(……見栄を張って、質屋でバッグを買って、レンタカーを借りて……。マウントをとるために、無理をして高いワインを頼んで……)

リーザには痛いほどわかった。

彼女自身も、アイドルとしての見栄を張るために「施しは受けませんわ!」と強がりながら、公園で鳩とパンの耳を奪い合っているのだ。

ハイブランドで身を固めたこの美しい女神の正体は、自分と同じ、いや、それ以上に火の車で首が回らなくなっている『ド底辺の同類』であった。

「……神様も、生きるのは大変なんですのね」

リーザはホロリと一筋の涙を流すと、自分の芋ジャージのポケットに手を入れた。

そして、本日の彼女の貴重な夕食である『特売の茹で卵(塩付き)』を取り出し、殻を綺麗に剥いてあげた。

「カグヤ様……お口を開けてくださいませ」

「んみゅ……? なぁに……キャビア……?」

「ええ、白くて丸い、栄養満点のキャビア(茹で卵)ですわ。これを食べて、明日も一緒に強く生きていきましょうね……」

リーザは泥酔したカグヤの口に、自分の大切な茹で卵をそっと突っ込んでやった。

「もぐ……もぐ……美味しいぃ……」と咀嚼するカグヤの頭を、リーザは聖母のような優しい手つきで撫でる。

そこには、神と人魚、あるいは港区女子と地下アイドルという垣根を越えた、確かな『底辺の絆(共鳴)』が生まれていた。

***

「うーん……はっ!? 私、いつの間に寝て……!」

数時間後。

タローソンのイートインでハッと目を覚ましたカグヤは、窓の外がすっかり暗くなっていることに気づいた。口の中には、なぜか茹で卵のパサパサとした余韻が残っている。

「いけないわ! 早く帰って、ゴッドチューブの配信でスパチャを稼がないと、本当に家賃が……! ではなくて、優雅なディナーの時間が過ぎてしまいますわ!」

カグヤは慌てて立ち上がり、寝こけているルチアナを放置して、レジへと向かった。

「店長さん! お会計をよろしくて! ルチアナちゃんの分も一緒に払ってあげますわ!」

カグヤは表面上は余裕の笑みを浮かべながら、バッグの中に手を入れた。

(たしかワインが10万円……。質屋で換金してきたなけなしのお金が10万円と少しあるから、ギリギリ払えるはず……!)

レジカウンターの奥から、太郎がゆっくりと現れた。

「お目覚めですか、カグヤ様。お会計ですね。ルチアナのツケは後で本人から取り立てるとして……今日のあなたの分のお会計です」

太郎は手元のレジをピピッと打ち込み、レシートをカグヤに差し出した。

そこに印字されていた金額を見て、カグヤの動きが完全にフリーズした。

「……は? に、20万円……?」

カグヤの声が裏返る。

「はい。高級ワイン代が10万円。それと、当店正面の駐車スペースのご利用料金が、ちょうど1時間経過しましたので10万円。合計で20万円になります」

「…………はああああああああっ!?」

カグヤの絶叫がタローソンに響き渡った。

「に、20万!? 駐車料金が1時間10万円ですって!? ふざけないでちょうだい! どこの世界にそんなボッタクリのコンビニがありますの!?」

カグヤがカウンターをバンバンと叩いて激怒する。

しかし、太郎は全く動じることなく、涼しい顔で店の外――カグヤが停めた真っ赤なレンタカーのすぐ横にある立て看板を指差した。

「お客様、当店は明朗会計ですよ。ほら、あそこの看板にちゃんと書いてあるでしょう?」

カグヤが目を凝らして看板を見ると、確かに『※無断駐車・長時間の占有は1時間10万いただきます』という文字が、米粒のような小さなサイズで書かれていた。

「こ、こんな小さな文字、気づくわけないじゃありませんの!! 詐欺よ! これは悪徳商法ですわ!」

「いやいや、契約は契約ですから。看板を出している以上、あそこに車を停めた時点で同意したとみなされます。払えないなら、そのクロコダイルのバッグと魔導腕時計、質屋で査定してきましょうか? まぁ、タグを見る限り『Bランク』みたいですから、たいした金額にはならないでしょうけど」

太郎がニヤリと、最高に腹黒い笑顔を浮かべた。

「なっ……!?」

カグヤの顔から一気に血の気が引いた。質屋のタグが見られていたこと、そして自分の見栄が全てバレていることを悟り、女神の威厳は完全に崩壊した。

「ど、どうしましょう……10万円しかないのに……。レンタカーの延滞金も払わなきゃいけないのに……っ」

カグヤがガクガクと震えながら、その場にへたり込む。

「あら。どうしたの、カグヤちゃん?」

騒ぎを聞きつけて、目を覚ましたルチアナがイートインから歩いてきた。

彼女は、青ざめてへたり込んでいるライバル(カグヤ)の姿と、レジの表示金額(20万円)を見て、全てを察した。

そして、ルチアナの顔に、これ以上ないほど邪悪で嬉しそうな笑みが浮かんだのだ。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「リーザの茹で卵のエピソードに泣いた(笑った)!」「太郎のボッタクリ容赦なさすぎるww」「カグヤ様、完全に詰んだ!」と少しでも楽しんでいただけましたら、

ページ下部にある【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると、執筆のモチベーションが爆上がりします!(作者が泣いて喜びます!)

次回、『【神々の没落】笑うルチアナにツケは巡る』!

カグヤの没落を腹を抱えて笑うルチアナ。しかし、太郎の無慈悲な取り立ては彼女にも牙を剥き……ついに神々がタローソンの制服を着ることに!?

引き続き、太郎国のドタバタ日常コメディをお楽しみください!

応援よろしくお願いいたします!

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