表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
440/452

EP 8

【頂上決戦】特大メガレモンと、譲れぬ想い

「さぁ、泣いても笑っても、次が最後の戦いだ! 『第1回 太郎国レモン早食い選手権』、ついに決勝戦ファイナル!!」

魔獣コロシアムを震わせる、十万人の大歓声。

先ほどの準決勝で、リーザの『ド底辺の叫び』に涙した観客たちは、今や完全にこの狂気の祭典の虜となっていた。誰もが立ち上がり、拳を振り上げ、コロシアムの砂上に残った二人の乙女に声援を送っている。

円形ステージの中央。

そこには、向かい合うようにして二つの真新しいテーブルが設置されていた。

東のテーブルには、太郎国の第二夫人にして世界最強の剣聖、ライザ。

彼女の全身からは、先ほどまでの疲労を感じさせないほど、極めて濃密で鋭利な『竜殺しの闘気オーラ』が立ち上っていた。しかし、よく見ればその肩で荒く息をしており、限界まで舌を闘気でコーティングし続けた代償として、口元がわずかにピクピクと痙攣している。

西のテーブルには、海中国家シーランの親善大使にして地下アイドル、リーザ。

ピンク色の芋ジャージは土埃とレモンの果汁で汚れ、首にかけたタオルはヨレヨレ。しかし、その瞳だけは、飢えた野獣のようにギラギラと異様な光を放っていた。彼女の足元には、先ほどの準決勝で観客から投げ込まれた小銭スパチャを吸い込んだ『お賽銭箱型掃除機』が、ズッシリと重い音を立てて鎮座している。

「旦那様への愛を貫く最強の剣聖か! それとも、貧乏根性で這い上がってきた奇跡のアイドルか! 両者、一歩も譲らぬ構えだ!」

実況席の太郎が、100均のメガホンを片手に観客を煽る。

「さて、決勝戦のルールを発表しよう。早食いでも大食いでもない。これから僕が用意する『最後の試練』を、己の力だけで先に完食した方が、栄えある優勝者となる!!」

太郎は実況席のテーブルの上に立ち上がり、右手を高く天へと掲げた。

「いでよ、100円ショップ! 農業・園芸コーナーの奥底に眠りし、禁断の果実……!!」

『ゴゴゴゴゴゴゴォォォォォッ!!』

太郎のスキル発動と同時に、コロシアムの上空に現れた亜空間ゲートから、これまでのレモンとは明らかに異質な、不気味な黄色のオーラを纏った『巨大な物体』が二つ、ドスゥゥゥンッ! と凄まじい地響きを立ててステージのテーブルに落下した。

「な、なんだあれは!?」

「で、でけぇ! スイカ……いや、人間の顔面くらいあるぞ!?」

観客たちが度肝を抜かれて叫ぶ。

テーブルの上に鎮座していたのは、通常のレモンの数十倍はあろうかという、超特大サイズの黄色い果実であった。

「紹介しよう。100円ショップの園芸コーナーで『観賞用』あるいは『強力なフルーツ酸クリーナーの原料』として売られている謎の品種……名付けて、【顔面サイズの特大メガレモン】だ!!」

太郎の残酷なアナウンスが響く。

「通常サイズのレモンと比べて、果肉の密度は五倍! そして何より、酸っぱさの指標であるクエン酸濃度は驚異の『300%(当社比)』!! 一口かじれば、味蕾はおろか、脳細胞すらもすっぱさに支配されるという、正真正銘の黄色い悪魔だ!」

「「「さ、さんびゃくパーセントぉぉ!?」」」

コロシアム中が戦慄する。

通常のレモンでさえ、オークやドワーフ、さらには神々をも泡を吹かせて沈めたのだ。その300%の酸味と、顔面サイズの質量。それはもはや、食べ物ではなく『兵器』と呼ぶべき代物であった。

「負けられませんわ……!」

しかし、ライザの闘志は一切衰えていなかった。

彼女は竜殺しの魔刀の柄を固く握りしめ、メガレモンを睨みつける。

「どんなに酸っぱくとも、どんなに巨大だろうと関係ありません。私が欲しいのは、旦那様と二人きりでの、一週間ぶっ通しの極上温泉ハネムーン旅行……! その愛の逃避行の切符を、こんなアイドルの小娘に譲るわけにはいかないのですっ!!」

ライザの叫びに呼応するように、彼女を包む闘気が黄金色に輝き、圧倒的なプレッシャーとなってコロシアムを支配する。

一方のリーザは。

「温泉……旅行……? 愛の、逃避行……?」

リーザは、虚ろな瞳でメガレモンを見つめたまま、ギリリッと歯を食いしばった。

「ふざけるな、ですわぁぁぁぁぁっ!!」

突然のリーザの絶叫に、ライザがビクッと肩を揺らす。

「こっちはねぇ! 毎日毎日、パンの耳と、公園の雑草と、茹で卵で命を繋いでいるんですのよ! 温泉旅行だぁ!? そんな贅沢な悩みで、私の『金貨100万枚(100億円)』への道を邪魔しないでくださいませ!!」

リーザの瞳から、血の涙が噴き出さんばかりの強欲のオーラが立ち上る。

「ここで負けたら、私は明日も、明後日も、鳩とエサを巡って喧嘩する生活に逆戻りですわ! そんなの絶対に嫌ですの! 私は、お金が、お金が欲しいんですのォォォッ!! 愛より、キャッシュですわぁぁぁっ!!」

『愛』を叫ぶ剣聖と、『金』を叫ぶ底辺アイドル。

決して交わることのない二つの巨大な執念が、特大メガレモンを挟んで激しく衝突する。

「……よし。両者の気合いは十分だな」

太郎がメガホンを下ろし、静かに右手を振り下ろした。

「第1回 太郎国レモン早食い選手権、決勝戦……スタートッ!!!」

銅鑼の音が、運命の始まりを告げる。

「絶技・オーラ・イーター!!」

ライザは、全身の闘気を『口内』に一点集中させるという、剣聖らしからぬ極めて特殊な奥義を展開した。そして、顔面サイズのメガレモンに両手でしがみつき、皮ごと強引にガブリと噛み付いた。

「うおおおおっ! いただきますわぁぁぁ!」

リーザもまた、メガレモンに顔面からダイブするように飛びつき、その小さな口を限界まで開けて喰らいついた。

『ブジュゥゥゥゥッ!!』

二人の口の中で、酸度300%の凶悪な果汁が爆発した。

「――――――――――――ッッッ!!?!?!?」

瞬間。

ライザの口内をコーティングしていた黄金の闘気が、まるで薄いガラスが割れるように『パリンッ!』と音を立てて砕け散った。

「ば、バカな……っ!? 私の、竜をも防ぐ闘気障壁が……酸味(ビタミンC)に、溶かされ……っ!?」

物理的な防御力など、純度300%の化学的刺激の前には無意味だった。

圧倒的な『すっぱさ』が、ライザの痛覚神経を容赦なく蹂躙し、彼女の視界を真っ白に染め上げる。

「あががががっ! す、すっぱ……! 脳が、溶け……っ! 旦那様ぁぁ……っ!」

ライザは白目を剥きかけながらも、愛への執念だけで顎を動かし続ける。しかし、その動きは明らかに鈍り、口からはダラダラと果汁と泡が漏れ出していた。

一方のリーザ。

(……痛い……! なんですの、これ……!? さっきのレモンとは、次元が違いますわ!)

ド底辺の食生活で鍛え上げられた彼女の味覚をもってしても、酸度300%のメガレモンは『美味しさ』の限界を遥かに超え、直接的な『激痛』として彼女を襲っていた。

舌が痺れ、喉が焼け付くように痛い。胃袋が「これ以上は無理だ」と強烈な拒絶反応を示している。

(だめ……っ。もう、飲み込めない……! 吐き出したい……っ!)

メガレモンを抱えるリーザの腕が、力なく下がりそうになる。

しかし、その時。

リーザの脳裏に、これまでのタローソンでの過酷な日々が走馬灯のように駆け巡った。

『おじさん、その廃棄弁当、私がもらってもよろしくて!? え? 野良犬と勝負しろ? 望むところですわ!』

『鳩よ! そのパン屑は私のものですわ! 五円玉ミサイル! フンッ!』

『キャルル……家賃、来月まで待ってくださいませ……土下座しますわ……』

(……私は、なんのために、こんな異国の地で泥水をすすってきたんですの……!)

リーザの瞳に、再び強烈な光が宿った。

(アイドルとして、世界中のファン(の財布)を笑顔にするため! そして何より、私自身が『最強の富と権力』を手に入れるためですわ!!)

リーザのユニークスキル【貧乏神】。

それは、自らの運気を下げる代わりに、『悪運と逆境への耐性をMAXにする』という、極めてドMで泥臭い能力。

今、この『酸味の地獄』という最大の逆境において、彼女のスキルが完全に覚醒したのである。

「う、うおおおおおおおおっ!! 100おくえぇぇぇぇんっ!!」

リーザは痛みを気合いでねじ伏せ、再びメガレモンに喰らいついた。

シャクシャクシャクッ! ゴクリッ! シャクシャクシャクッ!

涙と鼻水、そして大量の果汁でジャージをドロドロに汚しながら、ただひたすらにメガレモンを削り取っていく。

「す、すげぇ……! あの小娘、あのメガレモンを気合いだけで食い進めてるぞ!」

「がんばれェェェッ! パンの耳アイドォォォォルッ!!」

観客たちが、総立ちになってリーザコールを叫ぶ。

「あ、あぁ……っ。旦那、様……。温泉……」

隣のテーブルで、ライザがついに限界を迎えていた。

彼女のメガレモンはまだ半分以上残っている。しかし、闘気を完全に破られ、致死量の酸味を脳に直接浴び続けた世界最強の剣士は、ついにその膝を折った。

「……ま、負け……ませ……ん……。愛は……勝つ……」

ドサァッ。

ライザは、うわ言のように太郎の名を呟きながら、ついにステージの床へと崩れ落ち、白目を剥いて完全に意識を失った。

「おおっと! ライザ選手、ここで痛恨のダウンだぁぁっ!!」

太郎の実況がコロシアムに響く。

残されたのは、リーザただ一人。

彼女の手の中にあるメガレモンも、残りあとわずか、最後の一口分を残すのみとなっていた。

「あ……あぁっ……! あと、一口……!」

リーザは震える両手で、最後の一欠片を高く掲げた。

胃酸は逆流し、舌の感覚はとうに消え失せている。それでも、彼女の眼前に広がるのは、金貨の山と、自分専用の豪華なライブステージの幻影。

「これで……私の、勝ちですわぁぁぁぁっ!!」

リーザが最後の一口を、口の中に放り込もうとした、まさにその瞬間。

限界を超えた彼女の肉体に、最後にして最大の異変が襲いかかろうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ