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アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


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第十九章 アビス怪人とニンニク腹痛編

【暇を持て余した王】デュークの新作ニンニクマシマシ豚骨

「あ〜……暇だな〜」

アルクス城下町のメインストリートに面した、異世界初のコンビニエンスストア『タローソン』。

そのレジカウンターで頬杖をつきながら、店長でありこの国の王でもある佐藤太郎は、長大で平和なため息をこぼした。

ここ数日、アルクスの街は驚くほどに平和であった。

先日設立された『タロー交番』の威光(魔王の隕石落下未遂による恐怖政治と、竜王の号泣迷子探しによる地域密着のハイブリッド)が完全に街に定着したおかげで、犯罪率は急激に低下。交通ルールは完璧に守られ、路地裏での小競り合いすらピタリと止んでいた。

万引きGメンとして配置されたリーザも、標的がいないため暇を持て余し、今はバックヤードで段ボールを敷いてお昼寝をしている始末だ。

「平和なのはいいことなんだけど……こうも何もないと、僕という『国王兼店長兼署長』の存在意義が問われるというか。なんかこう、刺激が足りないんだよね……」

太郎が棚の陳列を意味もなく直し、陳列された100均のポテトチップスの袋を指で弾いていた、その時だった。

『ズシンッ……ズシンッ……!』

タローソンの店舗を揺らすほどの、重く力強い足音が近づいてきた。

自動ドアがウィィィンと開き、入り口の天井に頭をぶつけそうになりながら入ってきたのは、三メートルを超える巨体を誇る大男――世界最強の竜王にして、人気ラーメン店『豚神屋』の店主であるデュークであった。

彼は真っ白な職人エプロンに身を包み、頭には手ぬぐいをキリリと巻き、その強面の顔に満面の笑みを浮かべていた。

「ガーッハッハッハ! 太郎よ! 貴様、今『暇だな〜』と呟いたな! 我の竜王の耳にはバッチリと聞こえておったぞ!」

「いや、地獄耳すぎない? そもそも自分の店はどうしたんだよ、デューク。お昼時だろ?」

「案ずるな! スープの仕込みを弟子(レッドドラゴンの若者)に任せて、我は貴様を迎えに来たのだ!」

デュークは太郎の返事も待たず、丸太のような太い腕を伸ばして太郎の首根っこをヒョイッと掴み上げた。

「わっ!? ちょ、ちょっと待て! 僕は今、タローソンの店番が……!」

「細かいことは気にするな! 暇を持て余しているなら、我のラーメンを食え! ついに、ついに完成したのだ……我の追い求めていた『究極の新作』がな!!」

デュークの瞳には、狂気にも似た料理人としての情熱がギラギラと燃え盛っていた。

太郎は「あ、これ抵抗しても無駄なやつだ」と悟り、されるがままに『豚神屋』へと拉致されていったのである。

***

アルクス城下町の一角にある『豚神屋』。

暖簾をくぐると、店内は獣人やオーク、ドワーフといった屈強な冒険者たちで満席となっており、豚骨スープを炊き出す強烈な匂いが充満していた。

「おう、大将戻ったか!」

「こっち替え玉ひとつ頼むぜ!」

活気あふれる店内の奥、特別VIP席(太郎専用に椅子が少し柔らかい)にドンッと下ろされた太郎。

デュークは厨房に入ると、腕を組んで太郎を見下ろした。

「太郎よ。貴様が以前、我に教えてくれたあの『神の調味料』を覚えているか?」

「神の調味料……? ああ、もしかして、100均の『おろしにんにく(チューブタイプ)』のこと?」

「左様!!」

デュークがバンッ! と厨房の台を叩く。

かつて、ラーメンのパンチ力に悩んでいたデュークに、太郎がユニークスキルで召喚した100均のニンニクチューブを提供したことがあったのだ。

すりおろす手間が省ける上に、保存料がたっぷり入った(?)あのジャンクな香りと刺激は、繊細な異世界の食材しか知らなかった竜王の舌に、計り知れない衝撃を与えたのである。

「あの強烈な風味、そして脳天を突き抜けるような刺激……! 我はあの日から、あのニンニクのパワーを最大限に活かしつつ、我の至高の豚骨スープを完全に調和させる方法を日夜研究し続けてきたのだ!」

「は、はぁ。それはご苦労さま……」

「そして今日! ついにその黄金比が導き出された! 刮目せよ太郎! これが我の新作……『ニンニクマシマシ豚骨・竜王ドラゴンスペシャル』だ!!」

『ドンッ!!!』

太郎の目の前に置かれたのは、普通のラーメンどんぶりの倍はあろうかという、巨大なすり鉢のような器だった。

中には、何日も煮込まれてトロトロになった純白の豚骨スープ。その海に浮かぶのは、極太のちぢれ麺と、厚さ三センチはあろうかという巨大な豚バラチャーシューが三枚。

そして何よりも太郎の目を釘付けにしたのは、その丼の中央に、まるでアルクス城の塔のように高くそびえ立つ『黄色い山』であった。

「……デューク。これ、全部ニンニク?」

「いかにも! 100均のニンニクチューブを、惜しげもなく丸々三本分使用した、究極の『マシマシ』仕様だ!!」

「いや、多すぎだろ!! これ一杯で人間の致死量を超えてるんじゃないのか!?」

太郎が顔を引き攣らせて抗議するが、デュークは「ガーッハッハ! 漢ならば四の五の言わずに食らってみせい!」と引かない。

もはや逃げ場はない。

太郎は覚悟を決め、割り箸を割った。

まずはスープからだ。レンゲで白濁した豚骨スープと、その上に乗ったニンニクの山を少し崩してすくう。

「……いただきます」

ゴクリ、とスープを喉の奥へ流し込んだ。

その瞬間。

「――――ッ!!?」

太郎の全身の細胞が、爆発的な勢いで覚醒した。

最初に舌を包み込むのは、デュークが手塩にかけて煮込んだ、雑味のない極上の豚骨の甘みとコク。しかしその直後、大量のニンニクが持つ暴力的なまでの辛味と香りが、竜巻のように鼻腔と脳髄を駆け抜けていった。

「う、美味ぇぇぇぇっ!!」

太郎は思わず叫んでいた。

上品な宮廷料理では絶対に味わえない、胃袋を直接殴りつけてくるようなジャンクな旨味。

ニンニクの圧倒的なパワーが、豚骨スープの脂と完全に乳化し、最強のタッグとなって味覚を支配する。

「ガーッハッハッハ! どうだ太郎! 飛ぶほど美味かろう!」

「やばい、これ、クセになる……!」

太郎はもはや理性を失っていた。

極太の麺を箸でガシッと掴み、ズルズルズルッ! と豪快にすする。

麺に絡みついたニンニクの破片が、噛むたびに口の中で弾け、ジャンクな快感が波のように押し寄せる。分厚いチャーシューを齧れば、ホロホロと崩れる肉の旨味がニンニクの刺激を優しく中和してくれる。

「うん! 美味い! やっぱりラーメンはニンニクが効いててナンボだな! このチューブのチープな味が、逆に豚骨の野生味を引き立ててるんだよ!」

太郎は汗をダラダラと流しながら、無我夢中で丼に向かい合った。

彼の「ズルズルッ!」という凄まじい咀嚼音と、店内に立ち込める暴力的なニンニクの香りは、周囲の冒険者たちの胃袋をも激しく刺激した。

「た、大将! 俺にもアレをくれ! その『ニンニクマシマシ』ってやつを!」

「こっちもだ! 匂いだけで腹の虫が鳴りやがらねぇ!」

店内から次々と新作のオーダーが飛び交う。

デュークは「おう! 任せておけい!」と歓喜の声を上げ、厨房で中華鍋を振るった。

「ふぅーっ……! ごちそうさま!!」

数分後。太郎はすり鉢のような巨大な丼を両手で持ち上げ、最後の一滴までスープを飲み干して、丼をテーブルに叩き置いた。

額からは心地よい汗が滲み、胃袋は強烈な満足感で満たされている。

「ぷはーっ! いやぁ、食った食った! デューク、これ大傑作だよ! 毎日でも食べたくなる味だね!」

太郎が満面の笑みで親指を立てる。

「そうであろう、そうであろう! 我もこれ以上のものは創れんというほどの自信作よ! 太郎が暇な時は、いつでも食いに来るが良い!」

デュークもまた、自らの会心の一撃が認められた喜びに打ち震えていた。

タローモータース、タロー交番に続き、アルクス城下町にまた一つ、日本の『ラーメン文化(二郎系インスパイア)』が深く根を下ろした瞬間であった。

太郎は満腹の腹をさすりながら、上機嫌でタローソンへの帰路についた。

口の中から漂う強烈なニンニク臭を気にすることもなく。

彼はこの時、全く気づいていなかった。

自らの胃袋という名の密室に、とんでもない質量の『時限爆弾』を抱え込んでしまったということに。

ニンニクという食材が持つ、恐るべき腸内環境への破壊力……それが牙を剥くのは、もう少し先の話である。

読んでいただきありがとうございます。

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