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アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


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EP 6

【一日署長】魔王ラスティアの交通安全指導

昨日のリーザによる「政治家ばりの言い逃れからの、ただのケーキ目当ての仮病入院」という最低最悪の事件から一夜明けた。

タロー交番の床下(地下倉庫)からは、「ショートケーキ……私の特上イチゴショートケーキ……」というゾンビのようなうめき声が延々と響いてきているが、署長である太郎はそれを完全にシャットアウトし、朝のコーヒーを啜っていた。

「……まぁ、厄介者が一人減って(物理的に隔離されて)清々しい朝だ。さて、今日はタロー交番の存在を市民にアピールするための、重要な『PRイベント』の日だな」

太郎が交番の入り口に『本日、特別一日署長がやってきます!』という看板を立てた、その時である。

「フハハハハ! 待たせたわね人間(太郎)! この私が直々に、下界の愚民どもに『真の規律』というものを教えてあげるわ!」

突風と共にアルクス城下町のメインストリートに舞い降りたのは、世界を絶望に陥れるアバロン魔皇国の主――魔王ラスティアであった。

しかし、今日の彼女の服装はいつもの禍々しいドレスではない。

黒と赤を基調としつつも、無駄に煌びやかな金色の肩章エポーレットがあしらわれた、軍服とミニスカポリスを足して二で割ったような『超絶セクシーかつ威圧的な特注警察官の制服』である。胸元には燦然と輝く『一日署長』のタスキがかけられている。

「……ラスティア。なんだいその服。僕が用意した標準的な制服じゃないんだけど」

「フン! 魔王たる私が、その辺の平の巡査と同じ服を着るわけがないでしょう! これは私が徹夜で魔力構成して創り上げた『絶対零度のポリス・ドレス』よ! さぁ、交通安全指導とやらを見せてみなさい!」

完全にノリノリである。

どうやら彼女は、推しのアイドル(月人君)が一日警察署長をやっている特番をテレビ(魔法の映像具)で見て以来、自分も権力を振りかざしてチヤホヤされてみたかったらしい。

「わかったわかった。じゃあ、まずは交差点での『横断歩道の誘導』と『一時停止の呼びかけ』からだ。……いいか、あくまで笑顔で、市民に優しくルールを教えるんだぞ?」

太郎の念押しに対し、ラスティアは「任せておきなさい!」と自信満々に胸を張り、交差点の中央に設置されたお立ち台へと登った。

そこへ。

『ブルルルルッ! どけどけェ! オーク商会の朝の仕入れじゃあ!』

けたたましい魔導カートのエンジン音と馬のいななきと共に、荷物を過積載したオークの商人が、制限速度を大幅にオーバーして交差点へと突っ込んできた。

横断歩道には、ちょうど道を渡ろうとしていたエルフの老人がいる。オークの商人は一時停止の白線を完全に無視し、そのまま突っ切ろうとした。

「おい! 止まれ! 一時停止無視だぞ!」

太郎がホイッスルを吹こうとした瞬間。

「……愚民が。私の目の前で『停止線』を越えるとは、万死に値するわ」

お立ち台の上の魔王の瞳が、深淵の如く暗く濁った。

彼女が右手を軽く上に掲げ、指をパチンと鳴らす。

『ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!』

凄まじい衝撃音と共に、オークの乗る大型カートが、一時停止の白線の『ちょうど一ミリ手前』で、目に見えない巨大な鉄塊に押し潰されたかのように、アスファルトにめり込んだ。

「ぶひぎゃぁぁぁっ!?」

魔道重力魔法アビス・プレス。……命があったことを感謝しなさい、豚。その白い線はただの塗料ではない。生と死を隔てる『絶対の境界線』よ。一歩でも越えれば、次はあなたのその汚い頭を重力で圧縮してやるわ」

ラスティアが冷酷な笑顔で宣告すると、オークの商人は完全に失禁し、「ひぃぃぃっ! も、申し訳ありませぇぇん! 一生安全運転しますぅぅ!」と土下座して泣き叫んだ。

「……ラスティア、やりすぎだ! カートのサスペンションが完全に死んでるぞ! 修理代どうすんだ!」

太郎が青ざめてツッコミを入れるが、一日署長の暴走は止まらない。

続いてのトラブルは、タローソンの前での『違法駐車(路駐)』であった。

ガラの悪い冒険者の集団が、カートを道のど真ん中に停めたまま、たむろして大声で騒いでいたのである。

「あ? なんだこのタスキかけた女。一日署長? ギャハハ! コスプレかよ! 俺たちは今からダンジョンに行くんだ、ちょっとくらい停めたって――」

「五月蠅いわね」

ラスティアが冷たく言い放った瞬間、アルクス城下町の上空が、真っ黒な『暗黒星雲』に覆われた。

「え……?」

冒険者たちが空を見上げる。

そこには、アルクス城の倍はあろうかという超巨大な『獄炎の隕石ヘルファイア・メテオ』が、いつでも街を火の海にできる状態でスタンバイしていた。

「道路交通法第44条、駐車禁止違反。……および、私の鼓膜を不快にした罪。今すぐその鉄のカートを動かしなさい。三秒以内に動かさなければ、この街ごと消し炭にしてあげるわ」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!!? 隕石!? 路駐で隕石が降ってくるの!?」

冒険者たちは腰を抜かしながらカートに飛び乗り、ドリフトしながら光の速さで駐車場(指定エリア)へと車を移動させた。

彼らだけではない。隕石の脅威を見たアルクス中の市民全員が、その瞬間から『完全に交通ルールを遵守するマシーン』へと変貌したのだ。

「フフフ……。見たか太郎! これが私の交通安全指導よ!」

お立ち台の上で高笑いする魔王。

その足元、アルクスのメインストリートは、信じられないほどの静寂と秩序に包まれていた。

歩行者は横断歩道で直角に曲がり、カートは制限速度を1キロもオーバーせず、一時停止では全車両が「一、二、三!」と大声で秒数を数えてから発進している。

誰もが大粒の冷や汗を流し、空に浮かぶ暗黒星雲(隕石)に怯えながら、完璧な安全運転を行っているのだ。

「……太郎様。これは……交通安全というより、ただの『恐怖政治(独裁)』では……」

隣で見ていたフレアが、引き攣った笑顔で呟いた。

「ああ……。だが、皮肉なことに、これでアルクスの今日の犯罪率と交通事故発生率は『完全にゼロ』になった。……あいつ、警察官(権力の行使)にめちゃくちゃ向いてるんじゃないか?」

太郎は頭を抱えながらも、ルールを完璧に守る市民たちの姿を見て、妙な敗北感を味わっていた。

結果的に、タロー交番の「強さ」をアルクス全土に知らしめるというPRの目的は、これ以上ない形で(トラウマとして)達成されたのである。

夕暮れ時。

「あー、楽しかったわ! 次は月人君のライブ会場で、マナー違反のオタクを重力で押し潰す警備の仕事をやりたいわね!」

満足げにタスキを返し、機嫌よく魔皇国へと帰っていくラスティア。

「……ライブ会場でそれやったら大惨事だろ……」

疲労困憊でタロー交番のカウンターに突っ伏す太郎。

しかし、鬼署長が休む暇は全くない。

「……た、太郎はん。ワシ、どうすればええんじゃ……」

交番の入り口に、入りきらない巨体を無理やり屈め、困り果てた顔をした三メートル超えの大男――竜王デュークが立っていた。

彼はなぜか、小さな『お巡りさんの帽子』を頭のてっぺんにちょこんと乗せている。

「おっ、デューク。次は君のシフトだね。……君には『落とし物窓口』と『迷子相談』を任せるよ」

「ま、迷子!? ワシのような強面の巨漢が、下界の幼子を相手にするなど……!」

最強の竜王が、道端で泣く迷子の前でオロオロする。

タロー交番の日常カオスは、暴力的な交通指導から一転、最高にほっこりする(?)迷子捜索編へと突入しようとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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