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アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


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EP 2

【底辺の死闘】アイドルVS野良犬、廃棄弁当を賭けた戦い

夕暮れ時のタローソン。

表通りでは、新設された『タロー交番』の制服を着たフレアが笑顔で道案内をし、ライザが木刀(警棒代わり)を片手にパトロールへ出かけるという、平和で希望に満ちた光景が広がっていた。

しかし、華やかな表舞台の裏側――店舗の裏路地(搬入口)では、全く別の『命を懸けた修羅の国』が展開されていた。

「……グルルルルルッ!」

「……シャァァァァァァッ!!」

薄暗い路地裏。

対峙するのは、アルクス城下町の裏社会(ゴミ捨て場)を牛耳る凶暴な野良犬。体長一メートルを超える、魔獣の血が混じった『マッド・ドッグ』である。

そしてもう一人は、ヨレヨレのピンクの芋ジャージに身を包み、四つん這いになって野良犬と完全に同じ目線で威嚇し合う、タローソンのアルバイト店員・リーザであった。

二つの飢えた獣(?)の視線の先にあるのは、搬入口の段ボール箱の上に置かれた一つの神々しい物体。

それは、消費期限が二時間ほど切れた『100均特製・特盛り唐揚げ弁当(マヨネーズ付き)』。

太郎が「これ、もう売り物にならないから捨てておいて」と言ってバックヤードに置いた、いわゆる【廃棄弁当】である。

「(……あの唐揚げ弁当を逃せば、私の今日の夕食は『タローソンの水道水』と『店長の優しさ(飴玉一個)』になってしまいますわ! それだけは……それだけは絶対に阻止しなければなりませんのよ!)」

リーザの瞳が、血走った飢餓状態のそれへと変わる。

伝説の人魚姫としてのプライドなど、とうの昔に胃袋の底へ消え去っている。今の彼女は、ただの一人の飢えたハンターであった。

「グルワァァァッ!!」

先に動いたのは野良犬の方だった。

鋭い牙を剥き出しにし、一直線に唐揚げ弁当へと飛びかかる。

「させませんわァァァッ!!」

リーザが驚異的な脚力(人魚の身体能力)で地面を蹴り、野良犬の横っ腹へタックルを見舞う。

『ドスッ!』という鈍い音と共に、野良犬は壁際へと弾き飛ばされたが、すぐに体勢を立て直し、今度はリーザのジャージの裾にガブリと噛みついた。

「キャァァ! やめなさい! これは私がファン(という名の騙された冒険者)から巻き上げたなけなしの金で買った、一張羅のジャージですのよ!」

「ガウッ! ガルルルルッ!」

リーザが足を振り回して野良犬を振り解こうとするが、相手も必死だ。なんせ、タローソンの廃棄弁当の美味さは、アルクスの裏路地生態系を破壊するほどの中毒性を持っているのだから。

人と犬の、ドロドロの取っ組み合いが続く。

泥水が跳ね、ジャージは破れ、リーザの顔面は土埃で薄汚れていく。

「はぁっ……はぁっ……! な、なんというしぶとさ……! このままでは、体力の限界が……!」

野良犬の猛攻の前に、リーザはじりじりと後退を余儀なくされ、ついに行き止まりのレンガ壁へと追い詰められてしまった。

野良犬が勝利を確信し、唐揚げ弁当へ向けてゆっくりと歩みを進める。

「……くっ。ここまでですか……。私の負け……」

リーザが崩れ落ちそうになった、その時だった。

「(――いいえ! 私は、私は地下アイドルとして、どんな過酷な環境でも生き抜いてきた女! この程度のピンチ、ファンから搾り取った【愛の結晶】で切り抜けてみせますわ!)」

リーザはポケットの中に手を入れた。

そこにあったのは、かつて太郎から「詐欺だ!」と白パイを食らう原因となった、日本の硬貨――『五円玉』であった。

彼女は、その冷たい金属の感触を指先で確かめると、ニヤリと不敵で、最高に底辺な笑みを浮かべた。

「ふふっ……。野良犬ごときが、この私の【最終奥義】に勝てると思って? とくと味わいなさい!」

リーザは、その美しい顔を天に仰ぎ、あろうことか二枚の『五円玉』を、自身の左右の【鼻の穴】にスッ、スッと装填したのである。

「な、なんのつもりだコイツ……」と言わんばかりに、野良犬がピタリと動きを止めた。

リーザは深く、深く息を吸い込んだ。

人魚姫が持つ、海をも割るほどの圧倒的な肺活量。それが今、極限まで圧縮され、鼻腔という名の砲身へと送り込まれる。

「私の……Love & Moneyをくらえェェェッ!!」

ターゲットを野良犬の眉間にロックオン。

そして。

「フンッ!!」

凄まじい破裂音。

リーザの鼻の穴から射出された二枚の五円玉が、音速を超えるスピードで空気の壁を切り裂き、野良犬の眉間に『ガンッ!』とクリーンヒットした。

「キャイィィィィィィンッ!?」

野良犬は目を回し、四本の足をピクピクと痙攣させながら、その場にバタンと倒れ込んだ。完全なノックアウトである。

「しゃっああああ! 勝ったどおおお!!」

リーザは泥だらけの両腕を天高く突き上げ、歓喜の咆哮を上げた。

「見ましたか! これがアイドルの底力ですわ! 唐揚げ弁当は私のものですのぉぉぉ!」

彼女は野良犬を飛び越え、段ボールの上に鎮座する唐揚げ弁当をガシッと掴み取った。

フタを開けると、冷めていてもなお暴力的なニンニクと醤油の香りが鼻腔をくすぐる。

リーザは割り箸も使わず、素手で唐揚げを掴み、泥だらけの顔のまま大口を開けて頬張った。

「ッ……! う、美味ぇぇぇぇぇっ! 激しい死闘の後の唐揚げ、最高にスパイスが効いてますわ!」

口の周りをマヨネーズと泥でベタベタにしながら、涙を流して廃棄弁当を貪り食うアイドル。

しかし、ふと路地裏の水たまりに映った自分の姿を見た瞬間、リーザの咀嚼の手がピタリと止まった。

ボロボロの芋ジャージ。泥だらけの顔。鼻の穴が少し広がった跡。そして、野良犬と四つん這いで戦った代償として、すりむけた両膝。

「……」

リーザは静かに唐揚げを飲み込み、水たまりの自分を見つめ続けた。

「……リーザ、このままではいけませんわ」

彼女はポツリと、誰に言うでもなく呟いた。

「私は……いつか武道館(アルクス城の大広間)でソロライブを成功させる、トップアイドルになる女ですのよ。それなのに、毎日毎日、野良犬と廃棄弁当を奪い合うような底辺の生活……。こんなの、高みを目指す人間の姿ではありませんわ!」

リーザの瞳に、再び『$(ドル)』のマークがギラギラと点灯した。

「そうですわ。もっと賢く、もっとエレガントに稼がなければ! 地を這う野良犬ではなく、空を舞う大鷲のように、一攫千金を狙うのですわ!」

彼女は立ち上がり、先ほど野良犬の眉間にヒットして地面に落ちていた『五円玉』を拾い上げた。

泥にまみれたその真鍮の硬貨を、ジャージの袖でキュッキュと磨く。

すると、五円玉は夕日を反射して、まるで純金のように『ピカピカの黄金色』に輝いた。

「……ふふっ。ピカピカに磨き上げられたこの輝き。……これ、どう見ても『金貨』ですわよね?」

リーザの脳内で、最もドス黒く、最も最低な詐欺の計画アイディアが閃いた。

「そうですわ! これを金貨だと言い張ってタローソンで買い物をすれば、私は一瞬にして大金持ち(VIP客)に成り上がれますの! もう廃棄弁当をめぐって犬と戦う必要なんてありませんわ! さすが高みを目指す私、天才的なひらめきですのよ!!」

高み(という名の犯罪行為)へと足を踏み出す決意を固めたリーザは、高笑いを上げながら表通りのタローソンへと向かっていった。

しかし彼女は、まだ気づいていなかった。

タローソンのレジに立っている男が、今はただの温厚なコンビニ店長ではなく、アルクスの治安を守る『タロー交番の鬼署長』であることを――。

読んでいただきありがとうございます。

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