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アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


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EP 8

【アイドルの一日店長】集客大作戦とLove & Money

「このままでは……このままでは、私の今日のまかないが『水道水とパンの袋の匂い』になってしまいますわ!!」

夕刻のタローソン。アルバイトのリーザが、レジカウンターの中で頭を抱えて絶叫していた。

イートインスペースを占拠する神々(デュアダロス、フェンリル)と竜王デュークが放つ、無自覚な神話級の威圧感。それによって一般客が店に近寄れなくなり、午後の売上は完全にストップしてしまっていたのだ。

「もうっ! あの役立たずの神様たちを追い出すことは不可能ですわ! ならば、私が直接、道行く人々の財布の紐をこじ開けて、この店に引っ張り込むしかありませんのよ!」

「リーザ、物騒なこと言わないでね。別に今日のまかないは普通に出してあげるから……」

太郎の優しいフォローも、飢えた人魚姫の耳には届かない。

リーザは店のバックヤードから、みかん箱(太郎の100均スキルで出した段ボール箱)を引っ張り出すと、赤いマジックで『一日店長・リーザ』と書かれた手作りのタスキを肩から掛けた。

「ふふっ。見せてやりますわ……! 地下アイドルとして、なけなしの五円玉スパチャを絞り取ってきた私の、真の集客力を!!」

リーザは鼻息を荒くして自動ドアを抜け、タローソンの前の駐車場へと躍り出た。

みかん箱を裏返して即席のお立ち台にし、その上に立つ。ピンク色のヨレヨレの芋ジャージ姿だが、その表情だけは、何万もの観衆を前にしたトップアイドルのように堂々としていた。

「アルクス城下町の皆さまぁーっ! 本日はタローソンへようこそ! 一日店長のリーザですわ! 今から、皆様の心(と財布)を震わせるスペシャルライブを開催いたしますのーっ!!」

拡声器もない路上。だが、リーザが深く息を吸い込んだ瞬間、周囲の空気がピンと張り詰めた。

彼女は、伝説の魔獣『人魚姫』である。その歌声には、聞く者の魂を魅了し、理性を溶かす強烈な魔法効果バフが秘められているのだ。

「聴いてください! 私のデビューシングル……『Love & Money(愛より重い金)』!!」

『♪〜愛してるって言葉より〜、欲しいのはキラキラの金貨コイン〜』

『♪〜あなたの財布の紐を解いて〜、私のレジにすべてを捧げてぇぇ〜!』

リーザの口から紡がれたのは、歌詞こそ極限まで俗っぽく最低な守銭奴の歌だが、その『声そのもの』は、天上の天使すらも平伏すほどの圧倒的な美声であった。

透明感のあるソプラノが、夕暮れのアルクスの街に響き渡る。

「な、なんだこの美しい歌声は……!」

「おお……胸の奥から、無性に『お金を使いたい』という衝動が湧き上がってくるぞ……!」

道を歩いていた冒険者たち、買い物帰りの主婦、さらには馬車に乗っていた貴族までもが、リーザの歌声(魅了魔法)に引き寄せられ、次々とタローソンの駐車場へと集まってきた。

『♪〜さぁさぁ迷わず入店して〜、高いお弁当から買っていってねぇぇ〜!』

リーザがみかん箱の上でウインクを決め、タローソンの入り口を指差す。

魔法の歌声によって完全に『消費の奴隷』と化した群衆たちは、焦点の定まらない目で自身の財布からピカピカの「本物の金貨」や「銀貨」を取り出し、ゾンビのように自動ドアへと群がり始めた。

「よし! 作戦大成功ですわ! さぁ皆様、押し合わずに順番にレジへ向かうのですわ! 一番高いポーションからカゴに入れるのですよ!」

リーザが狂喜乱舞して群衆を煽る。

一方、その頃の店内。

「て、店長! なんですのこの急な客入りは!?」

「さ、さばききれない! ライザ! フレア! サリー! 大至急レジに応援に入ってくれ!!」

太郎と嫁たちは、突如として押し寄せた数百人の客波に、完全なパニックに陥っていた。

「金ならある! 店長、ここからここまで全部くれ!」

「あの歌姫のために、一番高い幕の内弁当を十個頼む!」

客たちは値段も見ずに商品をカゴに放り込み、レジに金貨を叩きつけていく。

ライザが神速の抜刀術でバーコードを斬り(スキャンし)、サリーが光の速さでお釣りを渡し、フレアが凄まじい勢いで肉まんを袋に詰める。

太郎国の最強戦力が総動員でレジ対応にあたったが、客の購買意欲リーザのバフは凄まじく、商品の補充が全く追いつかない。

「ポ、ポテチ完売! お弁当も全滅! お酒の在庫も空っぽだ!」

「太郎様! レジの金庫が金貨で溢れて閉まりませんわ!」

太郎が悲鳴を上げ、ライザが嬉しい悲鳴を上げる。

わずか三十分後。

タローソンの店内は、まさに『イナゴの群れが通り過ぎた後の畑』のような有様になっていた。

陳列棚はすっからかん。レジ横のホットスナックもゼロ。残っているのは、イートインスペースでポカンとしているダメ神たちだけである。

「はぁ……はぁ……。お、終わった……。まさか在庫が全部吹っ飛ぶなんて……」

太郎が精根尽き果てて床に座り込んだ、その時。

「ふふん! ど・う・で・す・か! 店長!!」

自動ドアが開き、一日店長のタスキを掛けたリーザが、ドヤ顔で胸を反らせながら入ってきた。

その背後には、まだ興奮冷めやらぬ数十人の客たちが、「もっと買わせろ!」「歌姫のために金を落とさせてくれ!」と札束(金貨)を握りしめて群がっている。

「見ましたか私の集客力! ゴミのような神々の営業妨害すら跳ね返す、トップアイドルの真力ですわ! さぁ、早く追加の商品を出してくださいな! まだまだお客様はいらっしゃいますのよ!」

リーザが勝ち誇ったように太郎を見下ろす。

しかし、太郎は無表情で立ち上がると、虚空から『あるもの』を取り出した。

「追加の商品はないよ。全部売り切れた」

「え?」

「売り物がないのに客を呼ぶな! 暴動が起きるだろうが! 馬鹿やろううッ!!」

ベチャァァァァァァッ!!!

太郎の右手から放たれた『100均のパーティー用・特大白パイ(ホイップクリーム三倍増し)』が、ドヤ顔のリーザの顔面に、またしても完璧なコントロールで炸裂した。

「へぶっ!? ぎゃぁぁぁっ!」

顔面を真っ白なクリームで覆われたリーザは、みっともないカエルのような声を上げて、再び床にスッテンコロリンと転がった。

「あ、あわわ……! 私の美しいお顔が……またしても甘いクリームまみれに……! て、店長! 売上に大貢献したMVPになんて仕打ちですの!」

「バカ言え、これからこの何もない店で、暴徒化したお客さんに謝らなきゃいけない僕の身にもなれ!」

太郎が床に転がるリーザにツッコミを入れながらも、レジの奥で山積みになった金貨の山を見て、ふぅと深い溜息をついた。

「……まぁ、お前のその『がめつさ』には感謝してるけどな。おかげで、過去最高の売上だ」

「ふふっ……それなら、今日のまかないは……」

「ああ、特上幕の内弁当だ。好きなだけ食え」

クリームまみれの顔で「やりましたわー!」と歓喜するリーザ。

太郎は空っぽになった陳列棚と、まだ外で待っている客たちを見渡し、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「これだけ空っぽになっちまったなら、普通に仕入れたんじゃ追いつかないな。……よし、みんな! 明日は店の外で、特大の仕入れイベント『異世界コンビニフェス』をやるぞ!!」

タローソンの前代未聞の大売り出しは、さらなるカオスと祭りの予感を孕みながら、熱狂のままに夜を迎えようとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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