EP 4
100円のおはじきと、トライバードの巨大卵
ポポロ村に朝がきた。
太郎がこの村に来てから、早くも一週間が経っていた。
「ふわぁぁ……」
太郎はあくびをして、寝ぼけた顔を手でこすりながらベッドから起き上がった。
「さて……今日は……」
ガチャ。
部屋の扉を開け、太郎は洗面台の方に向かった。
パシャパシャッ。
太郎は、水桶に貯めてあった冷たい水で顔を洗った。
パタパタッ……。
小気味の良い、可愛い足音が聞こえてきた。
「太郎さん! おはよう!」
サリーが、元気よく挨拶をしてきた。
「……おはよう、サリー」
太郎は、備え付けのタオル(※当然、100均のマイクロファイバータオルである)で濡れた顔を拭きながら答えた。
「ちょっと待ってて下さいね! 今、朝食を作りますから! 太郎さんは、トライバードの卵をよろしくお願いします!」
サリーはそう言って、台所に向かって行った。
そうだ、朝食だ。
太郎の朝の仕事は、サリーの家の裏庭にいるトライバードから、卵を拝借してくること。
それが太郎の重要な役割だった。
太郎は裏庭に向かった。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
体格の良いトライバードが、バサッと翼を広げて太郎を威嚇している。
コケッエエエ!!
(また来たんかい! ワレェ!!)
バサッ、バサッ!
太郎は魔獣語など分からないが、何故かそんな関西弁のガラ悪い声が聞こえる気がした。
「ったく……大人しく、卵をよこせっての!」
太郎は、電子ボードから取り出しておいた『100均のガラスのおはじき』を取り出して、ポーンと投げた。
キラッキラッ☆
コケッエエエ!!
(キラキラしてるぅ!! ゲットするぜええ!!)
トライバードは、転がった光るおはじき目掛けて、猛ダッシュで向かって行った。カラスと同じで、光るものに目がないのだ。
「ふっ! 所詮は鳥頭だ……今のうちに……」
太郎は、ダチョウ程のデカさがある卵を素早く手にした。
「よし!」
太郎は家に戻った。
背後から、トライバードの『オノレェ!人間メェ!』という怨念じみた声が聞こえたような気がしたが、気にしないことにした。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
バタンッ!
太郎は扉を閉めて、台所に向かった。
太陽芋の香ばしい匂いが漂っている。
サンガはすでに畑仕事に出ているのか、姿は見えなかった。
「あ、卵! ありがとうございます! 太郎さん!」
「うん、はい」
太郎はサリーに巨大な卵を渡した。
「ととっ……じゃあ……せーっの!!」
ガンッ! パリッ!
サリーは木のハンマーで卵を割り、そのまま鉄のフライパンで目玉焼きを作り始めた。
ジュワアアア……。
辺りに、食欲をそそる良い匂いが漂ってくる。
しばらくして……。
ホクホクの太陽芋の煮っ転がしと、巨大な目玉焼き、ネタキャベツと人参マンドラのサラダが食卓に並んだ。
人参マンドラは、収穫する際にギャーッと泣いて逃げ出す厄介な野菜だ。
太郎は一度、人参マンドラを追いかけるサリーを見たことがある。
速かった。
たぶん、普通にオリンピック選手より速かった。
「闘気をちょっと使えば、村の人ならこれくらい普通ですよ?」
とサリーは笑っていたが、運動音痴の太郎は思った、アナステシア世界やべぇ……っと。
「太郎さん! サラダにマヨハーブを付けますか?」
サリーは、不思議な葉っぱを手に取った。
「ありがとう、サリー。うん、貰うよ」
太郎がマヨハーブを手にし、プチッと千切ると、中からトロリとしたマヨネーズが出てきた。
そう。
マヨハーブ、ソイハーブ、醤油草は、アナステシア世界に独自に存在するハーブで、千切れば現代の調味料がそのまま出てくるのだ。
あの芋ジャージ女神は、適当に見えてこういう所だけはしっかりと作っていやがる。
「では、頂きます!」
太郎とサリーは合掌をして、食べ始めた。
窓辺から、トライバードの『その卵はうまいか?』と言う憎しみを背にしながら、今日も、太郎たちの充実した幸せなスローライフが始まった。




