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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 25

不穏な影、MRE型(完全食)の完成

【太郎国・王城 大食堂】

戦闘糧食1型(缶詰)、2レトルトパウチの圧倒的な美味さにより、大食堂は完全なる祝祭ムードに包まれていた。

「ぷはぁーっ! 食った食った! 太郎国の兵士は毎日こんな美味いモン食えるんスね! 俺様、明日から騎士団の入団テスト受けるッス!」

イグニスがぽっこり膨らんだお腹をさすりながら、幸せそうに天井を仰ぐ。

「もう思い残すことはありませんぅ……。私の胃袋は、幸せでいっぱいですぅ……」

リーザも、始祖竜トカゲと一緒になって満腹の余韻に浸っていた。

「さぁ大将。前菜とメインディッシュは終わったで。次はデザートか、それとも極上のツマミか? まさかこれで終わりっちゅうケチなことは言わんよな?」

デュアダロスが爪楊枝で歯をシーシーとしながら、丸眼鏡の奥で期待の眼差しを向ける。

ルチアナに至っては、すでに「酒! 酒!」と箸で茶碗を叩きながらコールを始めている。

「ふふふ。安心しろお前ら。次こそが、今日のメインイベント……『究極のサバイバルレーション』のお披露目だ!」

太郎がパチンッと指を鳴らすと、キッチンの奥から、宮殿料理長サクヤがワゴンを押して静かに現れた。

しかし、その様子がどこかおかしい。

先ほどまでの「美味しいご飯を作りました!」という華やかなオーラは消え失せ、まるで『禁忌の錬金術を成功させた狂気の科学者』のような、暗く冷たい達成感に満ちた笑みを浮かべていた。

「皆様……お待たせいたしました。太郎様のオーダーを元に、私の栄養学と料理の知識を『極限』まで注ぎ込んだ、究極の完全食です」

サクヤがテーブルの上にドンッ!と置いたのは、無骨な濃い茶色の分厚いビニール袋だった。

外側には、ただ黒い文字で無機質にこう印字されている。

『MRE (Meal, Ready-to-Eat) - Menu: Cheese & Veggie Omelet』

「おおっ!? これが究極のサバイバル食! パッケージからして玄人感が出とるのう!」

「オムレツですか! 卵料理なら、私、大得意ですぅ!」

何も知らないイグニスとリーザが、無邪気に歓声を上げる。

「説明しよう!」

太郎が、少しだけ後ろに下がりながら(安全距離を取りながら)解説を始めた。

「これは、どんな過酷な環境……灼熱の砂漠から極寒の雪山まで、あらゆる状況下で兵士の命を繋ぐために作られた『MRE型』だ。カロリーと栄養素を限界まで圧縮し、なんと常温で10年間放置しても絶対に腐らない!」

「じゅ、10年!? 魔法の氷結保存もなしにですか!?」

軍事担当のライザが、信じられないというように目を見開く。

「ええ。食材の水分を極限まで抜き、防腐のための特殊な香辛料と塩分を緻密に計算して配合しました。味よりも『カロリー摂取』と『保存性』を最優先した、まさに命を繋ぐための奇跡の兵站食です!」

サクヤが、白衣でも着ているかのようなドヤ顔で語る。

「……ほう。それは凄いんスけど……なんか、匂いが一切しないッスね」

イグニスが、袋の匂いを嗅ごうと鼻を近づけるが、ビニールの匂いしかしない。

「開けてみれば分かるさ。さぁ、遠慮せずに開けてみてくれ」

太郎が促す。

「よーし、俺様が一番乗りッス! ビリィッ!!」

イグニスが、力任せに茶色いビニール袋を破り捨てた。

そして、中に入っていたレトルトのメインディッシュの封を切った。

その瞬間。

「………………え?」

イグニスの動きが、ピタッと止まった。

袋の口から漂ってきたのは、食欲をそそる卵の匂いでも、チーズの香りでもなかった。

それは——『絵の具』と『プラスチック』と『古い粘土』をミキサーにかけて、真夏の密室で三日間放置したような、得体の知れない化学物質の異臭だった。

「な、なんやこの匂いは……!?」

デュアダロスが、思わず口元の葉巻を取り落とした。

ルチアナも「お酒……じゃなくて、悪酔いしそうな匂いね……」と顔をしかめる。

「イ、イグニスさん。中身は……どうなってるんですか……?」

リーザが恐る恐る覗き込む。

イグニスが、震える手で袋の中から中身を絞り出した。

銀色のお皿の上にドサッと落ちたのは……

オムレツのふんわりとした黄金色など微塵もない。

どす黒い黄土色をした、カッチカチの『黄色いゴム板(あるいは水を含んだ巨大なスポンジ)』のような巨大な塊だった。表面からは、謎のチーズらしきゲル状の液体が不気味に滲み出ている。

「…………これ」

イグニスが、フォークでその『黄色いゴム板』をツンツンと突く。

コンッ、コンッ、と、到底食べ物とは思えない硬質な音が食堂に響いた。

「これ……本当に『オムレツ』なんスか……?」

エリート竜人の本能が「これを口に入れたら危険だ」と警鐘を鳴らしていた。

「あはは! 見た目はちょっとアレだけど、栄養満点だから! さぁ試食係! 冷めないうちに(元から冷めてるけど)思いっきり食ってくれ!」

太郎が、悪魔のような笑顔で試食を命じた。

ミリタリー界隈で「軍法会議モノ」「廃棄物」「ゲロムレツ」と恐れられた最悪のレーション、『ベジオムレツ』が、ついに異世界の者たちの口へと運ばれようとしていた。

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