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悪魔でファンタジー  作者: nannryou
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悪魔で萩の乱

 萩の乱の指揮官は尼子一誠で、主力は彼が自衛隊山口基地から引き抜いた『殉国軍』と、松下政経塾の熱烈的な義勇兵と旧松下村塾の新紀元維新義勇軍だが、さて・・・。報告によると萩の乱では機械化師団と強化人体兵が確認されている。一〇式戦車が素手で破壊され、F35が人間とドローンの混成師団に撃墜されているそうだ。もはや、あり得ないレベルだ。"DESIRES"の未知技術だ、と断定したくなるが、既存のサイバネティクスと炭素マシンの融合で、人類既存技術の延長線上にあるのだそうだ。さて、問題は勝てるかどうかだ。『予定通り負けるだろう。少年』悪魔は容赦ないが、ここで敗れれば大阪表まで一気加勢だ。『そうだ、そして鳥羽伏見が四十七日後。おっと、もう四十三日か。少年』悪魔が言うことはよくわからない。けれど、全ては歴史を逆巻きにしたように進んでいるのは確かではある。田原坂の戦いから始まって、悪魔が言うには鳥羽伏見と戊辰戦争があって、江戸無血開城が起こるそうだ。まるで、江戸と大日本帝国の夢を辿るように・・・。『さあ、少年。今回は遺伝子操作とサイバネティクス特集だぞ』そうらしいよ、悪魔さん。ところで、あの石は? 『ああ、おいしく我々悪魔がいただいた』それは、残念だね。悪魔さん。からしだねのように増えるかな? 『ぞっとしないが、悪魔も減るより増える方がよくはあるな。少年』二手に分かれた岩国解放軍は米軍と四国自衛隊師団に任せ、関西自衛隊と合流した僕らは妨害のため山陰道を東上してくる萩の乱軍を鳥取砂丘で迎え撃つ、わけ、だ、が・・・。十式戦車が素手で半分に割れて爆炎を上げるのを見たとき、これは、さすがにフィクションかなあ、と真剣に悩んでしまう自分がいた。『これは、なんていったか? 実際に見ると、少年、確か、絵で表現したり、挿絵が豊富なあれだな。少年』漫画か、ライトノベルだな、まあ。ありえなー。『だが、まあ、フィクションに近いが、な。この戦いの時代があることはあるわけだが。少年』ライフルを引きしぼって前線を突破しつつある強化兵の一人に銃弾を引く。強く吹き飛ばされた強化兵が跳ね飛んで、そして飛び起きた瞬間、僕はほおがひきつるのを感じた。『あー、あれだな。少年。なんていったか?』あー、リアルゴーストダンスとマジマジだよ。全く。『しかも、相手の方が実は文明が進んでいるというあたり、何だろうな少年』しかし、そういうのもあれだが、本当、全線で前線が破られるのを見ると、幕僚本部の怒りが少しだけ理解できるような気もしないではないかなあ。全く、簡単に一〇式戦車がひっくり返ったり両断されるのを見るのは、何なのだろう。うわー、人間、では、いや、もう人間ではないわけだけど・・・。跳躍した強化兵がミサイルを撃墜させ、ドローンから強化足が引っ込められたかと思うと一気に飛躍する。強化兵も足を折りたたみジェット噴射を行い滑空している。人間って、イエスキリスト以外も飛べる時代なんだなあ。としみじみ思う。そういえばゆるすというのは足萎えが立って歩くよりも難しいという言葉もどうだろう。足萎えはもう科学で立って歩く時代かなあ。全く。人類の力は途方もないところまで来ているわけだが、"DESIRES"をその勢いでどうにかできないかなあ? それとも、どうなんだろう。はっきり言って、この段階の科学レベルの相手では『神頼みかね。少年?』そうだね。『私に頼んではどうかね。少年』ライフルを再度絞る。強化兵とドローンを貫くように射撃する。キリキリと引き絞られた音がして、撃破一とカウントする。『ゲームではないがな。少年』シューティングゲームみたいだけど、違うのはわかるよ。はっきりとね。そう、命の価値は、価値は、価値は、ああ、それなら、銃を取らない方がよいかもとも思うよ。『それも勇気だ。少年』自分に頼めと言ったり、命の価値を説教したり、変わった悪魔だよ。君も。幕僚本部から指令が来る。敵の主力を引き受けて敵を中央に集中させるのが任務のようだ。どうも、敵兵力の練度が高い対ゲリラ戦を参考に戦うつもりらしいが。まあ、セオリーだね。けれど、中央が密集体系を取って突出するのにあわせて僕らの部隊も突出する。スプラッターだ。人間が人間の首を手刀で切り裂いたり、首をねじ切るのは。こういうのアニメの中だけの方が幸せだ。『宇宙人が登場するのもアニメの中だけが幸せだと思うぞ。少年』だね。小角君がげろ吐いて、後方に引っ込もうとするのを何とか鼓舞しながら、僕もげんなりとしていた。ライフルを引いてかつて弓の名人が一射で数匹の鳥を射抜いたように銃撃と衝撃のサンドイッチで仕留めていく。だが、全く普通の射撃では人間が死なないでいる。おかしいんだよ。こういうの。人間が銃に敵うはずがないんだよ。こんなことができるのなら、神はなぜ、モンゴロイドを銃に敗れさせたもうたか? しょせん、釈迦もキリストもマホメットもコーカソイドだ。僕は今更の自嘲と暗い笑いに包まれる。そして、僕らは"DESIRES"に負けて宇宙を失った敗戦惑星人に落ちてしまうわけでもあるわけだ。銃撃を繰り返す。怒りに駆られて。何への怒りなのだろう。わからない。『少年。君が呪っているのは』ああ、しょせん僕らはモンゴロイドなのさ。夢を見ているわけだよ。悪魔! 『悪魔とはいうが、どうかね。少年。我々は君らが概念だけたどり着いているあの存在のことは決して恨まんがね』ふふ。しょせん愚かな地上の一日本人のたわごとだと笑ってくれよ。戦車の銃砲が敵強化兵を吹き飛ばし、数分沈黙させる。そして、気を取り戻すと立ち上がるわけだ。ふつふつと怒りが立ちわいてくる。なぜ、なぜ、なぜ、『少年。なぜ、私に頼まん』F35のアメリカ貸与の劣化ウラン弾が貫いて敵強化兵はようやく沈黙する。そして投下したF35は墜落する。全く馬鹿げている。一機いくらするんだ? 引き金を引いて、ショット。自衛隊の友軍はとにかく弾丸を命中させて、数十秒の時間を稼ぐのに必死だ。こんな戦いはあり得ない。まるで、戦車と戦っているようだ。対戦車砲の代わりが劣化ウラン弾や、タングステン弾では割に合わない。しかも、挙動は戦車を上回っているし、照準の標的も小さい。幕僚本部では、内通者の強化兵の情報提供を受けて何とかしようともがいているそうだが、幕僚本部からの裏切りもあり情報戦の現状は意味が分からない状況だ。F35が雁の群れのように次々と編隊を組んでは落とされていく。強化兵が跳躍とともに、足を折りたたみジェット飛翔を行うのは垂直離着陸機のようで妙な感動を覚えてしまう。しかし、これどう考えてもアレを切り落としているだろうし、改造されたら元にも戻れそうもないがどうしたものだろう? 世界の終末にこんなことを考える方が変か。つまり、全てを賭けているわけだ。僕は、僕は、僕は、まあ、賭けるまでもないことだね。しょせん人間の命などというものは"DESIRES"が来る以前から十万円がいいところだ。十万円で何が買えるか兄貴に聞くと、真顔で女が二回買えると言われて爆笑したのを覚えている。全く、笑っておいてあれだが、このまま死ねばあれだね。・・・ま、いいけど。『うーむ、少年。この戦いは完全に不利だな。わざと中央に集めて居るがこれは・・・』ああ、そうだね。悪魔さん。再度銃創に弾を込め、目を細めて射撃する。敵部隊が中央に密集しつつある。幕僚本部から、中央指揮官への撤退命令が出る。なぜ指揮官だけなんだ? 疑問の答えはすぐに出た。暗号名コードがカムに流れ、隣の指揮官がカムを地面に投げつけた。そして、ある方向を眺めた後、部隊毎撤退を始める。アレだ。米軍機のラプターF22と自衛隊のF35が直護衛を受けたミサイルが飛んでくる。『あー、これは、死ぬな。少年。ゲームオーバーだ』です、かね。悪魔さん。僕は即座に小角君に指揮権を委ねて撤退するように伝える。そして、走った。小型核、なのだろうか? そうでなければ、これは中央軍を餌にした最後の手だ。日本帝国は強い。あまりに強い。そして、この戦いは民族戦争を超えているのだろう。砂丘の中に作られた塹壕を思い出し、僕はそこに向かって駈けていた。途中三度射撃した。敵中央軍は再度ばらける可能性もあったが、彼らは空を見て、次々と空中に浮かび上がる。だが、それは、遅いのだ。ミッドウェーの機動艦隊のように・・・。『さて、被害比がどうでるか。少年』そんなことは、僕が死んだ後は数えられないし、逆に死んだなら数える必要がないでしょうが。『神が気にするかもしれないぞ。少年』では、生き残ることに望みをのせて、見ることにでもするよ。悪魔さん。F35がミサイルを撃ち尽くした後、紙切れのように落ちてゆく。ラプターが華麗に舞って翻弄する。ミサイルは無事だ。そして、僕は塹壕にたどり着くとさっと身を隠した。そして、暗闇のはずの世界に閃光が舞った。原子の力というのは神の力。原子の力というのは人間の力。原子の力というのは自然の力。空が真っ白で見えない。三十秒、四十秒、五十秒。皮膚が痛い。わずかに火傷したようだ。全身がひりひりする。『少年。死にかけるのは何度目かね?』さあ。ゲームだったらもう何度セーブロードを繰り返したのかなあ? 『高難易度のゲームだな。少年にとっても、な』僕以外にとっても高難度ゲームなのかなあ? 『この内戦の死者は五十万を超えているがな。世界で行われている"DESIRES"の本軍との戦いを含めると既に一億はやられているはずだが』あー、部隊損耗率的にそれ以上はアウトだね。『いや、もっと少年、こう"DESIRES"め! という怒りが、な』な、なんだって、"DESIRES"め、くそっ! 『いや、そんなわざとらしくやられてもな』仕方ないね。だって、日本帝国が"DESIRES"についちゃってるから。『出来レース、か』そこまで割り切れちゃいないけどね。視界が戻る。晴天だった空に雲ができていた。立ち上がって敵布陣を見る。壊滅だ。敵の強化兵団とドローン混成師団がほぼ壊滅している。どろどろに溶解した金属に炭素が焼かれながら、それでも生きている敵強化兵団には戦慄を覚える。これが、"DESIRES"流の拷問だと言われても納得しただろう。爆心の中心地から離れたところにいた強化兵が激昂に駆られて左翼と右翼に突撃していく。味方の舞台に目を向ける。炭化した元有機生命体の残骸だけが見るに忍びなく転がっていた僕は誘って逃げればよかったことに今更気づき顔が歪むのに気づいた。『軍人だからな。名誉を果たしたわけだよ。少年』軍人だからか。つまりこういうわけだ。"技術当局は「必死でない必中兵器」を生み出す責任があるが、その完成を待たず「必死必中」の特攻隊の出動を必要とする戦局になり慙愧に耐えない"、とね。『何かの名言かね。少年』昨日呉の軍事資料館を見てるときに検索した言葉さ。悪魔さん。敵後方から、最後の備えの強化兵団が出動するのを横目に見ながら、僕は幕僚本部がどうするか、皮肉な気持ちでカムを手にとっていた。幕僚本部は内通した強化兵団を戦車補助舞台と共に投入する決断を下したようだ。さてさて、左翼と右翼の崩壊までに間に合うものやらね。僕はひりひりする肌をこすりながら原爆資料館の夢を見ていた。ぞっとする。生きながら死ぬものに戒律はないとはいうけれど。核で生きながら死ぬこと以上の拷問は稀だろうと僕は実感する。あの火傷と水を求める苦しみ以上の責め苦は探す方が難しい。中央をかき分けて予備同士が会敵するまでは、後五分ほどあるだろう。小角君は助かったかな? 神のみぞしる、だ。僕はライフルを片手に会敵するまでに悠々と射撃体勢に入ると、アルゴリズムを調整していた。少し子が震えた。放射能のせいか、火傷のせいか、あるいは、感情の問題だったのかもしれない。ついに始まる遺伝子操作の極限で起こるであろう戦いを眺めていた。コロッセウスの入場費用は神の光を浴びて生き残ること。さて、さて、世紀の見世物だ。・・・漫画でも見た方が健全かもしれないな。『世の中には、個人の芸術作品では満足できないことも多々あるだろう。少年』封建貴族も顔負けだね。『そうかな? 少年はゲーム好きではなかったかな?』もう、ウォーシミュレーションには手を出さないと誓いたくなるよ。本当。『うむ。少年の国は覇権国ではないからな。マネジメントゲームまでがよいだろう』漢と漢のぶつかり合いだ。腕がしなったと思ったときには相手はもう吹き飛ぶか跳躍するか両方が吹き飛んでいる。超人の戦いというのは見ていて面白いものではないね。機械化された目でも持っていないと情報処理が追い付かない。日本国側の自衛隊右翼が後退していた。後三十分というところだろう。左翼は奮闘している。中央では凄惨な勝負を決める殴り合いが続いている。拳がめり込むと金属オイルと炭素の液体が地面に滴って蒸気を上げる。どうも、自衛隊側の士気が低い。強化ボディの質もどことなく悪いような気がする。『機体の差がもろに出ているな。少年』豆タンクとは違うのだよ。『さて、どう違うのかは知らないが、中央の戦局は敗色濃厚だな』空中戦もたけなわだ。ひどい音を立てて、人間型のサイバネティクス強化ボディが空中で破断、爆発を続けていた。どうも足元を狙うのが鍵らしい。不燃性のジェット燃料に違いないのだが何らかの手法で着火させているのだろう。しかし、ボディからは血の代わりにオイルが流れてはいるわけだが、何となく現実感がない。自衛隊の指揮官とも思しき機体が苛立たし気に敵軍の将兵を手刀で貫いた後、放り投げて周囲を見回した。どうも、彼のボディは性能が違うようだ。『さて、宴もたけなわだな。少年』と、敵軍から一人の将校と思しき人物が大音声で名乗りを上げた。

「我こそは、その名も高き日本帝国の尼子一誠なり。裏切り者の陶義一はどこに!」

「裏切りとは的外れもはなはだしい。そもそも人類社会に裏切りを犯したのは貴様ではないか! 尼子一誠!」

「おお、そこにいたか。陶義一。貴様はそういうが、あの核の跡を見ろ! 我が手塩にかけた自衛隊中国旅団は壊滅ではないか!」

「・・・それは、だが、我々は日本男児、敵に」

「日本男児ならばなおさら、神代より神州不敗の日本を我らが新天皇、新維新側ともに取り戻すことが愛国忠義、七生報国、忠節の化け物と化し働くべき時ではないか!」

「あなたには、わからぬのです。尼子幕僚長。我々、非薩・・・」

「陶義一! もはや、言葉では分かり合えぬというのならば、私との一騎打ちで正々堂々の賞美を決めようではないか。私が勝てば強化兵部隊は皆降伏する。貴様が勝てば我々新日本帝国中国鎮台の首脳陣は自決しよう!」

 どうなんだろうね。ボディ性能的に勝ち目はないわけだが。これ卑怯じゃないのか? 『少年。戦争というものは戦う前に結果が決まっているものだ』うん。だんだんそうなってきてるなあとは平和な時も感じてた。『敵の指揮官はどうも、少年の側の指揮官の上官のようだな』うん。どう考えてもね。陶家も名の知られた武家なのだろうけど、相手がね。全く、裏切りは好きではないけど陶義一に心情移入してしまうね。昔クラスで起こった某重大事件について思いだすよ。『某重大事件というと?』昔クラスに中国系のハーフの子がいたんだけどね、その子とある男系天皇家の某苗字の子の仲が良かったわけだけど、ある時、その子たちが喧嘩してしまったらしいという噂が流れたんだ。それで、クラスメートのムードメーカーだったある子がその中国人のハーフの子をからかって男系天皇家のぼうっ苗字の子と笑おうとしたんだけど、その子不愉快だって言って中国人のハーフの子以上にその子のことを嫌ってしまったわけ。『それで、少年?』それでって、後はお決まりのパターンだよ。『うーむ。いまいちわからんが。少年?』まあ、人類終末の時に持ち出すべき話題ではないよね。『ようするに、あの尼子一誠にとって陶義一は差別対象なのか?』というより、向こうは差別している気もないわけだよ、悪魔さん。『つまり、聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、というものか?』確かに、神は人間を困らせるつもりもないだろうけどね。その間、陶連隊長は幕僚本部と連絡を取っていた。だが、悲しそうに首を振る。

「尼子幕僚長。残念ながら幕僚本部の許可が取れません。ここで、最後の一兵まで戦って勝敗を定めましょう」

「愚かな! 愚かな! 愚かな! 行け、特攻!」

 そのミサイルを抱いた強化兵が飛翔し、幕僚本部手前に飛び込んだかと思うと光があった。瞬間幕僚本部手前の予備役が消滅したらしいことを僕はカムの音声で知った。なんなの。だこれは、正しく気が狂ってる。

「さあ、陶義一。我々の一騎打ちを止めるか、もう一度幕僚本部に聞け!」

 陶連隊長は困惑しているようだったが、再度カムに語り掛ける。渋面を創ったかと思うと陶連隊長がカムを捨てて、服を破いた。

「性能では尼子一誠幕僚長には敵いませんが、敵わないまでも日本人として見苦しくない最後を遂げて見せましょう!」

「裏切り者にも、一分の意地があったか陶!」

 日本人として見苦しくない最後、か。僕らの祖先はあの大戦の時、その機会があった。そして今、アジアと地球世界の敵になった日本帝国が快進撃を続けている。まるで、太平洋戦争の初期のように・・・。さて、さて、照準器に尼子一誠を捉えながら僕は心の中で首をかしげる。さて、この"DESIRES"がアメリカの忠誠テストなら、旧敵国の全てがその罠に落ちたわけだが・・・。まあ、その場合イギリスが消滅することはあり得ないのだが、そこはCGとホログラフィでやってるのかもしれないからね。まあ、疑うときりはないけれど。『忠誠テストかね、少年。全く、あり得ないことだが、こんな低位次元でも底意地が悪いことを考えるな』マキャベリズムは覇権国がやると映えるからね。『音楽か何かかね。少年』一騎打ちが始まった。周りで強化兵が輪を作っている。幕僚本部からの指令がカムから悲鳴のように流れる。どうやら、幕僚本部で指揮権委譲が行われているようだ。さて、この戦場は負けという判断らしい。萩の乱も鎮圧に失敗したわけだ。次は佐倉で、悪魔が言う通りならその頃鳥羽伏見で関西最後の決戦が行われ、その後東京の無血開城につながるという筋書きらしいけれど・・・。『うむ。部下を見捨てて撤退する上官と居残って戦う下士官たち。王道だな。少年』普通、そんな士気の低い軍は現代戦にはいないはずだけどね。『普通ではないのだろう。少年』確かに、アタワルパが捕まったインカ帝国は一週間で滅んだけどね。さて、一騎打ちの方は、機動速度が速くてほとんど動きが捉えられない。性能は圧倒的に尼子一誠のボディが上のようだ。陶連隊長は防戦に徹しながら一撃にかけているようにも見える。と、陶連隊長が空に逃れる。ジェットブースターが砂埃を上げて、空中戦が始まった。と、加速力に差があったようだ。一瞬の交錯の後、陶連隊長の右腕が吹き飛んでいた。一瞬の間をおいて乾いた音共に切り離された腕が跳ねる。

「どうだ。陶。降伏しろ!」

「そういうわけには、そういうわけには、いかんのですよ。尼子幕僚長!」

 正確には元幕僚長だが、日本帝国中国鎮台の幹部尼子一誠が、唸り声をあげて地面をけった。まるで、漫画だね。『まあ、宇宙人が侵略してくるのはおおむね漫画だ。少年』悪魔さんはそういうけれど、宇宙には生命が存在する可能性は高くて、そして、異なる遺伝プールの生命が存在するとき、行うことは決まっている。人類がその宇宙人になる可能性もそう低くはなかったはずだけど。『まあ、負けた種族は技術供与の夢の跡によくそういうことを考えるものだよ。少年』そうかもしれない。戦後日本がアメリカの夢にくっついている金魚の糞であるように。

 うわー。陶連隊長の左手にプラズマパワーがー。尼子一誠の左手が炎上しているー。うわー。陶連隊長がついに膝をついたぞー。あー、尼子一誠の足が可変パーツの油圧変化で圧倒的な衝撃派がー。

「陶連隊長!」

 あー。陶連隊長の部下が割って入って、部下の腹部が吹っ飛んだー。

「宮川―!」

 たぶん部下の名前だろうけど。うーむ。もはや、人間の戦いとは思えないですが。『少年は漫画展開好きだっただろう?』うん。漫画は好きだけど、それはフィクションとして好きという意味であってこれはないよ。『その辺りの違いがどうも、わからんのだよ。少年。このような低次の存在にとって何もかもフィクションのようなものだろうに』うーん。人間には自由意志があるんだよ。一応。中世には貴族以外には自由意志がないと言われてロバの自由意志のたとえもあったけど、現代民主制は・・・。『いや、自由意志はないだろう。少年』

 あー、陶連隊長の前進が燃えるプラズマに包まれて、空気がバチバチしてるぞー!

 えー、尼子一誠が苦渋の表情を浮かべている。

「陶、貴様、ま、まさか、それは、"DESIRES"が示唆していた。スーパーモンゴロイドでは・・・」

「そうだ。一誠幕僚長。穏やかな心を持ちながら怒りによって目覚める・・・」

 この展開ってさ、どう考えてもシナリオを書いてる側が漫画をコケにしてるよねー。というか、真面目な話、超人兵の描写をきちんとやって見ろっていう話だよ。『少年。このシナリオに作者がいたら、超絶下手なバトル描写をごまかすために茶化しているのだろう。まあ、そんなはずはないが』うーん。というか、文章ではどうしても絵には勝てないよね。『ああ、そして絵は映像に負けるぞ。少年』そして、映像は現実に負ける。『何か名言だな。少年』

「はっはっはっ。だが、ボディの性能差はいかんともしがたいようだな。陶。お前も部下の後を追うがよい!」

「貴様、宮川のことかー!」

 うわー。プラズマ弾が尼子一誠に直撃する。『少年。少年の表現が下手なのだ。プラズマ弾とはそもそも何か辺りから始めるべきでは?』プラズマ弾はプラズマ弾だね。原子と電子の熱プールのことだよ。バチバチと電子が自由に動けるから高温電子分裂と融合が繰り返されているみたいなものだよ。『それでは、わからなくないか? 少年』要は、格闘ゲームの飛び技のようなものかなあ。『いや、そこをあえて詩的に表現すると国語がA判定をもらえるはずだが。少年』と言っている間に、尼子一誠が陶連隊長のプラズマパンチを左手で受ける。と、その左腕が吹き飛んだ。

「貴様―っ。許さんぞー!」

 尼子一誠のボディがプラズマ色に輝いた。これは、尼子一誠も「スーパーモンゴロイド」状態に?『少年、描写が下手だぞ』壮絶な破壊の殴り合いだ。触れそうになるたびに強化ボディであろうメタリックのかけらが吹き飛んで雪のひとひらのように燦然と輝いた。『雪のひとひらはなかなかだ。少年。国語Cだな』どうも、悪魔さん。周囲を囲んでいた敵味方が離れるように輪を広げる。尼子一誠が自衛隊側の強化兵の頭をつかんで握りつぶし陶連隊長に放り投げる。遊び終わった玩具のように無造作に。そして、計算されつくした陶連隊長の手刀にあわせて。連隊長の顔が苦悶に歪み、さっと背後に跳躍する。そこに右手に電子の海を漂わせた尼子一誠が犠牲者を粉砕したまま、ジェット加速で一気に陶連隊長に突貫し、陶連隊長の右脚が電圧の叫びに応じるように放電させながら吹き飛んだ。

「陶。やはり、ボディの差はいかんともしがたい。部下に投降命令を出せ!」

「そういうわけには、そういうわけには・・・」

 あー、ボディの差は歴然かあ。ロボットアニメを思い出すなあ。低スペック機体とは違うわけだ。低スペック機9とは。あー、萎え萎え。

 僕は、スコープを覗きながら、この"DESIRES"との戦いがなくとも、民主主義がいずれ辿った機械との共生の結論に暗雲たる茫漠たる怒りと苦しみの胸が痛くなる胃酸の逆流によるすっぱさと苦さを感じていた。結局、人間は叶うことがない夢に嫉妬するものだ。敗者はただ去るのみ、というのは覆せないけど、美しく去るというのは難しいことでもある。『やはり、性能差は絶対だな。少年。少年はあの三角形を墜落させてしまったが、普通はこういうものだな』あー、確かにあれは漫画的だったよねー。本来、B-29の高高度空爆作戦に日本軍が何の抵抗もできなかったのと同じで性能差は絶対だからね。悪魔さんの力が働いてるのかなあ?『いや、どうだろうか? 少年』そこらへんは不明ですか?『うむ。しょせんこの質量量では演算限界があるからな。それに"DESIRES"は完全包囲の封鎖戦がお好みのようだからな。少年』さて、人類は完全包囲されるほどの力があるのか、はたまたただの過大評価か。

 尼子一誠の最後の降伏勧告は終わったようだ。

「尼子幕僚長。私が倒れた後、部下は・・・」

「ああ。わかっている。投稿するにしろ撤退するにしろ好きにさせる」

 尼子一誠も漢だなあ。平家物語の熊谷直実と平敦盛を思い出させるなあ。たぶん、あれが日本武士の理想の時代なんだろうなあ。八百年代から地方に進出し始めた藤原家の女系の血や主だった豪族の血が従士ともいえる雑兵に完全に流れ始めたのはその三百五十年後の源平の乱の頃だろう。それは一つの封建社会の節目だ。そして、そして、この戦いの死者数は日本では既に一千万に近づいている。僕は、夢の世界に住んでいる。戦後日本に、戦後日本が滅ぼうとする夢の世界に。僕らの夢の戦後日本は"DESIRES"が来なくても終わりに近づいていた。なぜなら、それは一つの民主主義社会の節目だったから。僕らは、戦後日本の最後に生きていた。そして、今、その最後に立ち会っている。

 最後の激突。尼子一誠の腕は陶連隊長の胸を貫き、陶連隊長の腕は尼子一誠の右頭部を掠めてメタリックボディのかけらがガラス片のように飛び散った。そして、立っていたのは尼子一誠の方だ。

 ボディの差はいかんともしがたい、か。

 科学は途方もなく進化を続けるだろう。人類が退けようが"DESIRES"が滅ぼそうが。そして、限界は圧倒的な差と圧倒的な勝利となって現れる。ああ、僕らは消えるのだ。この永遠に続く科学の夢の世界を後に。

 日本帝国中国鎮台の勝利は確実だった。右翼は完全に突破されている。左翼は押し込みすぎで孤立している。中央は壊滅だ。そして、今、戦いも幕だ。尼子一誠の勝ち名乗りが響く。

「陶連隊長は名誉の戦死を遂げた! 日本帝国の勝利は疑いがない! お前たち裏切り者にも戻ってくる機会を与えるつもりだ。去りたいものは疾くとされ!」

 自衛隊の制服がむなしく揺れる。7割が日本帝国に向かい数人が陶連隊長の遺骸を抱いて撤退する。残りは・・・、むなしい殲滅戦だ。

「皆、残党の始末が終わり次第左翼の殲滅に・・・」

 潮時だ。

 僕は、銃撃を尼子一誠のメタリックボディが破損した右頭部に射出する。固い金属音と共に英雄は倒れる。そして、日本帝国中国鎮台軍に囲まれて苦しそうに撤退する。銃の設定で電磁パルスを帯びさせたから、その威力だろう。しょせん強化ボディも金属は金属で、半導体は半導体なのだ。脳チップと制御部がやられれば終わりなのさ。僕が幕僚本部を指揮していたら、成層圏核爆弾で電磁パルスを降らせて打尽にするか、米軍の最新電磁兵器を頼むけどね。『あのやられた味方の男の力あってのことだぞ、少年』そうだね。思いながら僕は撤退の準備に入っていた。小角君たちが無事ならいいけど。さてさて、岩国も救援が間に合わない以上陥落だ。全く、日本帝国に連戦連敗だよ。日本国自衛隊は。さすがにアメリカに疑われるんじゃないか、これ?『パワーゲームの主戦場はこの国ではないさ。少年』そう、だね。撤退しながら、左翼に突入しようとする強化ボディ兵を照準に入れて射撃して。何度もスナイプする。鳥取砂丘のケイ素化した海辺の水面に輝く屈折光のように瞬くガラスの海まで引いた時、僕は絶望を見た。その詳しい感想については、原爆資料館に見学に行くことを勧めるにとどめるしかない。なぜなら、絶望には絶望しかないからだ。砂が軍靴を破って足を裂く。急いで迂回するように近くの味方に叫ぶと、数十歩後退し、軍靴を裏返してガラス片を慎重に抜く。何度となく痛む足に心を折られながら、走って走る。そして、右翼の最後尾が壊滅し、敗走に移った後、鳥取砂丘に響き渡った勝利の声は僕らのものではなかったわけだが、なぜか、なぜだか、僕は暗いおぞましい歓喜の思いにつつまれていたのだ。それは、悪魔じみたことだった。そして、世界は悪魔じみている。

 萩の乱は反乱軍、日本帝国中国鎮台の勝利で終わった。岩国はついに解放された。新たな"DESIRES"なる支配者の従属的独立国である日本帝国の名において。僕は、輸送トラックから沈みゆく永遠のアポロン、ラー、天照大神、人類が有史以降頼り続けていた一つの恒星を眺めていた。日はまた沈む。かつての太陽の沈まぬ帝国とは音信が途絶している。大日本帝国があがめていた日章の二つのパターンの一つを眺めながら、僕は痛む足と共に痛む心を抱えて忸怩たる思いで涙していた。小角君は部下を逃がすために中央軍にとどまって交戦をしたらしい。今となってはただの炭素の塊だろう。日はまた沈む。大日本帝国が夢見た旭は明日もまた来るだろう。そして、そこにはあの中央軍を守り切った戦死者たちはいない。僕は日の名残りを見ながら茫漠としていた。確か、そういう邦題の小説があった。僕らは人類の残照に生きているのだろうか? それとも、それとも、それとも、勝利の道はゼロではないのだろうか? このあまりに狭い神の門を通り抜けることができるというのだろうか? 僕は近頃祈らない。だから、祈った。決して叶わないだろう願いを。なぜなら、僕らには挫折した未来しかないのだから。

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