↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/38

35.流星、太陽

本日(9/3)20回目の更新

宜しくお願い致します。


「一応名前だけは聞いといてやる。私は土蜘蛛。お前は?」


 土蜘蛛は名乗りながら岩の鎧を体に纏っていく。


「ブラックドッグだ。よろしく」


 私も応じて名乗り、《氷の殻》を発動して構える。


 そして同時に動き出し、戦闘が開始された。


 先程と同様、土蜘蛛は後方へ飛び退き遠距離からの全開火力で仕掛けてくる。

 その行動を読んでいた私は先程の突貫より更に早く相手の懐に潜り込み、《封緘》で捕獲する__つもりだったが、土蜘蛛は《封緘》の対象にはならなかった。


 一気に戦闘が面倒になった瞬間だった。《封緘》の対象にならないということは体内に複数の別個体を格納しているか、一つの肉体に複数の魂が搭載されているかのどちらかである。


 そんなことを考えていると、私と土蜘蛛の間に入ろうとする影一つ。

 その正体は__先程キャラメルが焼き切った下半身。蜘蛛型の胴体が独りでに動き接近する。


「舐めすぎだろ」


 だが胴体が私に辿り着くことはなく、カラメルによって焼き潰された。

 よく観察してみると、土蜘蛛の下半身は蜘蛛型、しかも最近よく見たギガスパイダーのもので間違いない。


 恐らく偶然ではないだろう。間違いなく目の前のアンデット、もしくは改造した奴が関わっている。


「最近この辺りで見る蜘蛛型のキメラもツクモ様とやらが作ったのかい? 随分暇なんだな」


「はぁ? 依頼されたならまだしも、ツクモ様がこんな失敗作何体も作る訳ないだろう? これは私の体の一部を分けて作った下僕みたいなもんだよ。さっきみたいに体の一部を切り離して、適当な魔物にくっつけて使うんだ。簡単な命令なら聞いてくれるから基本使い捨てだけどね」


 キメラの発生源は土蜘蛛だったらしい。

 つまりコイツを倒せばキメラが増えていくことは無くなる訳だ。


「倒す理由が増えたね」


「やってみろ、お前らじゃ私を殺しきれねぇよ」


 その言葉を皮切りに、土蜘蛛の周囲の地面から岩の牙が発生し、私達のいる場所目掛けて飛んでくる。

 同時に蜘蛛の前脚が私達を切り裂かんと振るわれる。この程度で倒せると思っていないのか、振りはコンパクトで隙が無い。


 再生が容易なアンデットが人間を相手にすればこうなるか。此方は一撃で相手を粉砕しなければならないが、土蜘蛛からしたら少しずつでも傷つけていけば相手の動きは勝手に鈍っていくのだから無理する必要が無い。


 今のところ戦闘の速度は問題ない。カラメルも相手の攻撃を的確に処理し反撃の隙を伺っている。


 だが如何せん土蜘蛛の手数が多い。絶え間なく生成、射出される岩弾と地面から生える牙に、接近戦までこなすバランスの良さ。


 出会い頭の一発や弾幕の展開から攻撃重視の脳筋タイプかと思いきや、中々に考えられている。恐らくコイツを作った奴は相当バランスを重視していたに違いない。


 人間ならまだしも不死の怪物が持っていていい能力ではないと思う。


「ペース上げてくぜぇ!!」


 攻撃を捌きながら考えていると、攻撃の速度と密度が跳ねあがった。


「むっ!?」


 それまで対応できていたカラメルから苦悶の声が上がる。徐々に余裕がなくなり、紙一重で躱す攻撃が増えている。


 この辺りが限界か。これ以上は何か打って出ないとカラメルが詰む。

 私が状況を立て直そうと氷壁を生成する前に、カラメルは自ら打って出る。


 岩弾を最低限の動きで躱し、当たっても致命傷にならない攻撃は無視して土蜘蛛へ突っ込む。


 同時に私もサポートすべく、岩弾を氷塊で撃ち落とし、先程見た相手の魔法を模倣し《氷魔法》を繰り出す。


 私の周囲の地面から発生した氷の牙が、岩の牙を相殺する。


「《マッド・プレイ》・《サンドフォグ》」


 カラメルが相手の懐に飛び込もうとした瞬間、土蜘蛛の周囲の地面が泥沼へと変化し、視界が舞いあがる砂で満たされる。


「カラメル!」


「分かってる、一旦引く!」


「逃がすわけねえだろが、ボケ」


 砂が舞い碌に視界が確保できない中、足元もぬかるんで機動力が落ちている状況だ。先程まで万全の状態で押されていたカラメルには厳しい。


 自分で張った目くらましだ、何か此方を判別するスキルがあるのだろう。あるいは獣人特有の嗅覚か。

 声の位置から距離を計算して魔法を放っても当たる可能性は低い。

 なら__


「カラメルッッ!! 全力で跳べっ!!!」


 腕力で鬱陶しい砂を吹き飛ばす。


 身体強化を全開で使用し、右腕に貯めた魔力を解放する。

 狙うのは泥沼。ぬかるんだ地面ごと周囲の砂を吹き飛ばす。


 相手への目くらましと妨害になるよう土蜘蛛の方に飛んでいく様に調節する。


「チィッ!」


 カラメルは無事かどうか確かめるために周囲を見渡すと、カラメルの姿は地上になかった。


 次の瞬間、私はカラメルの意図を理解し、間髪入れずに土蜘蛛への攻撃を開始する。


 放つのは氷の弾幕と目眩まし。土蜘蛛が使用していた魔法をまた真似させてもらう。

 目眩ましは相手の様子が見て取れるぐらいに効果を限定しておく。


「《氷の弾幕(アイス・レイン)》、《吹雪(ブリザード)》」


「上等だよ、どっちが上かハッキリさせてやる」


 土蜘蛛も無数の岩弾を生成し、氷塊を迎撃する準備を整えた。


 だがまだ足りない。成(・)功(・)率(・)を上げるため、更に畳みかける。


「君(・)も(・)ツ(・)ク(・)モ(・)様(・)と(・)や(・)ら(・)の(・)作(・)品(・)な(・)ん(・)だ(・)ろ(・)? 私が目覚めたのは最近だし、最高傑作は私かもしれないね。見た目も私と比べて雑という他ないし、失(・)敗(・)作(・)は(・)君(・)な(・)ん(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)か(・)?」








「…………………………ころす」


 土蜘蛛は私という存在に合点がいったようだが、挑発の露骨さに気づかない程激昂していた。


 石の仮面が生成され表情は読み取れないが、隙間から覗く眼球は血走り瞳孔が開き、一切の瞬きをせず視線で此方を縫い付ける。


 生成されていた岩弾は砲弾のようにサイズを増し高速で射出された。


 此方も呼応するように氷塊を強化し射出する。先程の一撃のように高度、貫通力の上昇、極低温化。絶対零度まではいかないかもしれないが、可能な限り温度を下げた。


 最早氷の雨ではなく流星の様に土蜘蛛へ殺到する。


「《流氷星群(メテオシャワー)》」


 降り注ぐ氷の流星は岩の砲弾を砕き、着弾した箇所を凍らせていく。

 地面を、岩の砲弾を、そして土蜘蛛の身体を凍らせていく。


 致命傷には至らないが、このまま凍ってしまえば捕獲してもいいかもしれない。


「……嘘だ、嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! ふざけんなっっっっ!!!! なんで私が押されてんだ!! 私は魔力量も改造で増大してんだぞ!? しかも火力面でも押し負けんのかよぉっっ!!!!」


 既に土蜘蛛の周囲は氷漬けになっており碌に動けない状態だ。

 岩の砲弾も出力が落ち始めている。


「負けてっ…………否定されてたまるかよぉぉぉっっ!!!!!!!!」


 意地でも火力勝負にこだわろうとしているのか、完全に自分の強みを見失っている。

 それにこの火力勝負に勝とうと負けようと、結果は変わらない。


 どうやら既に準備は整った様だ。

 まだ土蜘蛛は気づいていないようだが、今更気づいたところでもう遅い。


 流星の次は太陽が土蜘蛛を焼き殺すために落ちてくる。


 《吹雪》を解除し視界を晴らす。


 土蜘蛛の上空で輝くのはカラメルのモーニングスター。特殊なギミックがあったのか、その先端の球体が内側から押し広げられたように大きく開いており、更に高速で回転していた。

 通常の付与される炎に加えてモーニングスターは赤熱化しており、さながら太陽のように輝いている。


 晴れた視界では氷によって光が乱反射し、上空から文字通り身を焼くほどの光が降り注ぐ。離れていてもまともに見ることが出来ない程の光量、至近距離でくらう土蜘蛛は既に視界を焼かれていることだろう。

 アンデットは光が苦手な上に、土蜘蛛の身体は凍り付き、今からでは僅かに身をよじる程度にしか動けない。


「クソがっ……!!」


 モーニングスターの先端が外れ、土蜘蛛の方へ落下していく。

 しかし鉄球の自由落下よりも早く、空中を駆けるように加速したカラメルが、燃え上がる右足で鉄球を土蜘蛛目掛けて蹴り抜いた。


「《太陽の女神(ザ・ソール)》」


 赤熱化した小太陽は土蜘蛛へ吸い込まれるように向かっていき、次の瞬間には膨大な熱量と衝撃が辺り一帯に撒き散らされた。




あとちょっと、あとちょっと。

読んでいただきありがとうございました。

良ければ評価、ブクマ等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。