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32.おわかれコネクト

本日(9/3)17回目更新

宜しくお願い致します。


 わたしの頭の中にある、一番古い記憶は揺れる馬車の中、膝の上で見るママの笑顔だった。


 わたしが物心付くころには、わたしたち家族は各地を転々とする商人となっており、忙しくも満ち足りた生活を送っていた。


 一ヶ所に留まり店を持っているわけでは無いので主に信用面で苦労することもあったが、わたしたちは何とか商人としてやれていた。もっともわたしは売り子を手伝うくらいしかできていなかったけど。


 パパは元々魔法使いの名家の人で、ママと一緒に駆け落ちってやつをして国も出てしまったらしい。本人たちは少しやりすぎたと言っていたけど、二人はいつも笑顔で過ごしていた。


 わたしが何処で生まれたのかは教えてくれなかったけど、大人になったら教えてくれるって言っていた。


 もしかしたら、二人が戻れないところにわたしが興味をもって、そこに行きたがるのを止めたかったのかもしれない。


 遠慮して控えめに言ってもわたしは二人に愛されていたから、余計にそう思ったのかもしれない。


 わたしは二人のことが大好きで、二人も私を愛してくれている。だから二人が私を置いていくことなんて微塵も考えていなかった。


 いつか別れは必ず来るのに、その時はもっとずっと先の事だってまともに考えてなかったんだ。





 わたしたちの別れは最悪な形で訪れた。


 その日、わたしたちは内戦真っ只中のアルカイダを後にして、スクリューの街を目指して移動を始めた。


 商人も上手く立ち回れば稼ぎ時になるみたいだったけど、わたしがいるから念のため違う国で商いをすることになった。


 そこを盗賊に狙われてしまった。


 どうやら内戦中の国から脱出する人たちを狙った物取りだったらしく、わたしたちは盗賊が仕掛けた罠にはまってしまった。


 相手が強くて真正面から略奪していく様な盗賊なら、違った未来があったかもしれない。


 だが現実は甘くない。生き死には強さ以外の要因でも簡単に決まってしまう。


 盗賊が仕掛けた罠は足止め程度、被害が出たとも言えないお粗末なものだったが、親(二人)が子供(わたし)から目を離すには十分だった。


 そこからの記憶は曖昧でよく覚えていない。


 罠の対処で注意を引き付けている間に、盗賊はわたしを人質にとった。

 その後わたしは少しの間恐怖で気絶してしまったからだ。


 そして次に目覚めた時には、既に二人は死んでいた。


 剣で体を地面に縫い付けられて、パパは首も落とされて、確かに二人は死んでいた。


 だけどわたしは無事だった。正確に言えば守られた結果、わたしだけが生き残ったというだけの話。


 盗賊は数を減らし、わたしの周囲は半透明の光の壁で囲まれていた。


 状況が良くなったわけじゃなく、むしろ悪化している。どれだけ盗賊に囲まれようと、わたしの周囲の壁が崩れていこうともわたしにとって恐怖にならなかった。


 わたしにとっての”恐怖”は、二人が死んで一人ぼっちになってしまうこと、二度と会えなくなることでいっぱいだった。二人に駆け寄る最中に、盗賊に腕を切り付けられたことも、他の事なんて考えている余裕は微塵も無かった。


 傍に駆け寄って二人の手を胸に抱き寄せる。


 誰にも奪われないように、手を放してしまわないように、取り残されないように。


 そんなことをしても意味なんてない、盗賊もすぐにわたしを捕まえるだろう。

 だけどわたしは祈り続けた。


 たとえ腕を切り落とされようとも、自分から二人の手を離したりしない。

 背中を蹴りつけられても二人のことを考え続け、祈り続けた。


 そしてわたしが殺されそうになった時、奇跡が起きたんだ。


 元々備わっていたのか、祈によって目覚めたのかは分からないけど、わたしのスキルが発動した。


 目の前に二人の幽霊が現れたんだ。


 見た目は骨みたいで全然違ったけど、絶対にパパとママだってわたしには分かった。


 盗賊がわたしに攻撃してこようとしたけれど、パパとママが作ってくれた光の壁が全部防いで守ってくれた。


 この時には感覚的にだけど、わたしのスキルがどういうものなのか理解し始めていた。

 盗賊が二人に攻撃が通らなくて困惑している間、わたしはパパの死体にスキルを使用する。すると切断されていた首が再び繋がり、再び首が落ちることは無かった。


 《繋げる力(コネクト)》、それがわたしのスキル。元々持っていた《光魔法》よりも戦闘ではあまり使わないかもしれないが、今はこのスキルがあって良かったと心から思った。


 何時の間にか盗賊はわたしたちを諦めたらしく、散り散りに去って行ってしまった。

 一瞬復讐も頭によぎるが、そんなことよりも二人の体をどうするかが大事だった。


 馬車は壊れて使い物にならないし馬も殺されてしまっている。

 食料などを持って二人の体を運ぼうとしても碌に動けないし、魔物だって出る。


 わたしは泣く泣く二人の体を埋葬することに決めた。たとえ体が無くても二人はわたしと一緒にいてくれると思っているからだ。


 金品や武器などを持っていかれ、地図も持っていかれたのは痛いけれど、幸い保存食に手を付けられてはいなかった。


 そして私は迷った末に、とある要塞跡にたどり着く。


 ここに来る途中までは街へ行こうか悩んでいたが、要塞の中で落ち着くとその考えもなくなった。


 ここには何故か大量のゴーストがおり、人はおろか生物が殆どいない。まるでこの施設が一つの墓の様だ。


 ……ここで二人と死ぬまで過ごして、ここがわたしの、わたしたちの墓になる。




 一人でいると不安になる。


 罪悪感で潰れそうになる。


 なぜ人質に取られてしまったのかと自分を責める。


 なんでわたしだけ生き残ってしまったのか。


 なんで、なんで、なんで、なんで________、





*





 それからしばらくして、わたしの前には二人の不思議な人たちが現れた。


 初めは邪険にしてしまったけれど、二人とも方法は違えどわたしのために行動してくれようとしているのは伝わってきた。


 本当は一人になるのが怖いけれど、何よりこれ以上パパとママを悲しませたくない。


「……お願い、します。二人をっ……! どうか、 お願いしますっ……」


「任された」


 そしてこの人なら、きっと二人を救ってくれる気がするんだ。



氷いっぱい入ったコップに炭酸を注ぐ動画で涼をとる。のどがかわく。

読んでいただきありがとうございました。

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