31.少女は
本日(9/3)16回目更新
宜しくお願い致します。
ファントムを無事浄化し地下の探索を終え要塞の地上層に戻ると、かなりの数がいたゴースト達は綺麗に消えていた。
周囲にアンデットがいないとなると、カラメルとの合流が再優先だ。
既に救出対象を見つけていれば面倒がなくて良いのだが、二体の蜘蛛型キメラも気になる。
何処から探していこうか迷っていると、要塞の中心辺りから何かが衝突するような爆音が要塞全体に轟く。
「生き埋めは勘弁してほしい所だが」
要塞が崩れないか心配しながら、音がした方へ走って向かうと、カラメルが何者かと対峙していた。
目を引くのは二体のゴースト系のアンデット。
だがよく見ると場違いな少女がアンデットの傍にいた。
カラメルと少女が戦闘中であることは明らかだったが、戦っているのが蜘蛛型キメラでもなく、救出対象もいないとなると争っている場合ではないのではと思ったので、まずは状況を確認することにした。
「どういう状況だい? コレ」
カラメルの横に並び状況を聞くと、カラメルは戦闘態勢のまま簡潔に状況を伝え始める。
「救出対象の傭兵と上級クラスのアンデットはまだ遭遇していない。目の前のの少女は恐らく別口、防御系の魔法を扱うレイス二体に、少女自身も《光魔法》を使う。……それと、あの二体のレイスは少女の家族だったらしい。少女を守りを優先していたことからも確定だと思う。このままだとアンデットと心中しかねないから迅速に祓うつもりだ、君は捜索を続けてくれ」
状況は理解できたが事情を聞いてしまうと、カラメルに任せてしまって大丈夫か心配になる。
恐らくカラメルは《浄化》を使えない。
というよりこの世界の住人は《浄化》を使えたとしても使用はしないだろう。
前世ではアンデットは《迷者》とされ、天へ還すことが前提の故人だった。
だがこの世界には魔物という種が存在しているせいで、アンデット=魔物、害をなす存在とされてしまっている。
完全に祓うことを前提としているため、アンデットへの対処が乱暴になるのも半ば当然である。
だがこの状況、少女が両親と離れたくないと考えているなら無理やり祓うのは得策ではないと私は思う。
時間が掛かってしまうが仕方がない。
「カラメル、悪いけどここは任せてもらえるかい? 私が彼女を説得して見せるから」
「無理だろう、彼女は死ぬまで家族を放しはしないぞ。それにこうしている間も救出対象は死にかけているかも知れないんだ。私は構わないが、君は依頼が達成できないと不都合があるんじゃないか?」
「ああ。だがそれでも目の前の少女と、彼女の家族を見捨てられない。君もだろ? もし君に戦う以外の選択肢がないのなら私に任せておくれよ」
「……見逃すのは無しだぞ。ここで確実に祓わないと手遅れになる」
「分かってる。まあ見てなさいよ、伊達に長生きしてないからね」
「いやどう見ても子供でしょ」
分かってもらえたようなので、私は戦闘態勢を解かない少女の前へ出た。
此方を警戒しているようだが、私が全く戦闘態勢に入らずに自然体でいることに若干困惑しているようだ。
思えば今の私は目の前の少女より幼い外見をしているため、少女からは突然場違いな少女が現れて構えもせずに近づいて来るという謎の状況になっている訳だ。
困惑で手が止まっている状況は此方にとって好都合なので、戦う気をうやむやにするためできる限り明るい声で声を掛ける。
「やあ、おはよう」
「お、おは……よう?」
「なんだ、ちゃんと話を聞いてくれるいい子じゃないか。私の名前はブラックドッグだ。人を探しているんだが、髭を生やした怖い顔のおじさんをこの辺りで見ていないかい?」
「見てない、けど、あなた達がここに来る前に何処かで戦ってる音はしてた、気がする。気のせいじゃなければ」
「おお、そうか! 急いでるから、少し前まで生きて戦っていたのが分かっただけでも助かるよ。お礼に何かできることがあれば言ってくれ。食料でも、魔力の回復薬でも、家族を救う方法でも」
「________え?」
「このままだと君は死ぬ、そして君達三人共祓われて終わりだ。救いも何もありゃしない。生き返えらせることは出来ないが、君が辛い思いをすればご両親が救われるとしたら君は二人を解放してあげられるかい?」
「する。パパとママが救えるなら、わたしはなんだってする。」
少女は私の目をまっすぐ見て即答した。
家族と共にあるために自死を選ぶ程深い愛、この手の性格なら前世で何人も説得してきている。
情に訴えるのが一番効果的であるということも、分かっていた。
「質問だ。ご両親は死してなお君を守ろうとしているが、君は二人が君の死を願っていると思っているのかな」
「……そんな訳ない」
「二つ目の質問だ。君のご両親は君が未来へ進むことを応援してくれる人達かい?」
「がんばってって、いつも背中をおしてくれた。最期も、だった」
両親との時間を思い出したのだろう。
少女の頬には目から溢れた涙が幾筋も伝っていた。
「これが最後の質問。これから先、辛いこともあるだろう。寂しさを感じる夜も来るだろう。でもそれらを覚悟の上で二人を解放してあげられるか?」
「…………」
少女はまだ答えない。
「二人の魂は私がきちんと浄化して、天へと還そう。乱雑に祓ったりは絶対しないと誓う」
「……お願い、します。二人をっ……! どうか、 お願いしますっ……」
少女は両親と別れるという決断を下せた。
だがまだ感情が追い付いていない。心の中では納得ができていないのかもしれない。
「任された」
私の役目はしっかりと死者の魂を救い、死者も生者も同様に未来へ進めるように邁進することだけだ。
少女が下を向かずに済む人生を実現するために。
好きなアニメの二期が決定していてうれしい。ループ再生中。
読んでいただきありがとうございました。
良ければ評価、ブクマ等お願いします。




