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30.カラメルと生者とアンデット

本日(9/3)15回目更新

宜しくお願い致します。


 ブラックドッグ君と別れた後、私は目に付く部屋を片っ端から周りアンデットを駆逐していった。


 視界に入るゴーストは《光魔法》でまとめて消滅させていく。私はあまり光魔法が得意ではないが低級のゴースト位なら朝飯前だ。霊体でなければ普段通り炎を纏わせたモーニングスターで文字通り叩き潰していくのだが、ゴーストが殆どのこの施設では出番があまりないかもしれない。


 ゴーストを消滅させ要塞の中心へ向かうと、要塞の中では一番大きそうな広間に出た。


 相変わらず薄暗いが、何とか反対の壁が見える程度の明るさはある。

 だがそんな薄暗い中で赤く輝く目が二対。


 アンデット二体と……?

 なんだ、奥にもう一体いるのか?


 アンデットではなさそうだが、人型の何かが蹲っており二体のアンデットが守るように傍に控えている。


 一瞬ブラックドッグ君の探している傭兵かと思ったが……アンデットに守られているとなると関係ないか。

 アンデットだろうがなかろうが、人間だろうが構わない。


 人間であるなら、忌むべき死霊術師である可能性も高い。


 アンデットを始末しているうちに逃げられても面倒なので《光魔法》は使わずに、まずは術師を始末する。


 自身の得物であるモーニングスターを脇に構え、私は魔力による身体強化を用いて広間を走り抜る。


 発動するスキルは《付与魔法・炎》。

 モーニングスターの先端、星球部分が燃え上がりアンデットにとどまらず部屋全体を激しく照らし出す。


 術師が気づき此方を視界に入れるが、もう遅い。


「灰となれ!!」


 身体強化も含めた最大出力の一撃を振り上げる。

 腕に返ってきたのは肉や骨を砕き潰す感触ではなく、武器が何か硬質な物に逸らされた感触だ。


「あ?」


 何が、と自問するが、自身の経験から答えは直ぐに理解できた。


 この二体のアンデットはゴ(・)ー(・)ス(・)ト(・)で(・)は(・)な(・)く(・)レ(・)イ(・)ス(・)だ。

 ゴーストと動きの速さは変わらないが、魔法を使用するアンデット。対象からの魔力吸収率が非常に高く、元々持っていた魔力も高い、正直言ってコイツがいるだけで任務の難易度が上がる程だ。


「面倒だな」


 幸いレイスの攻撃は魔法を用いたものではないため回避は容易だが、如何せん防御魔法が固すぎる。


 突破は無理か? 面倒だが邪魔なレイスを先に片付けるか考えていると、術師の人間が口を開く。


「邪魔……しないでっ!!」


 声は高く、そして照らされた顔から術師が女の子だと理解したがそれどころではない。


 叫ぶと同時に術師から放たれたのは__《光魔法》。

 対象を焼く光の熱戦が私を襲う。


「んなっ!?」


 その魔法は明らかに制御、火力共に私の《光魔法》よりも上で、回避が少しでも遅れれば死んでいた。


 死霊術師が《光魔法》? なんの冗談だろうか。

 実際私に充てるために放った熱戦は、片方のレイスに掠り霊体の端を消滅させている。


 ただの死霊術師ではないと警戒レベルを引き上げるが、少女の様子がおかしい。

 動揺か? 何故か身じろぎもせずに、レイスを、熱戦が掠った部分を凝視している。


 気味が悪いので距離を取ろうとしたその瞬間、術師の少女が涙を流しレイスに向けて謝り始めた。


 レイスは反応を示さないが、少女は泣き、自分を責めている。


 その光景は私の記憶の奥にある光景を想起させた。

 頭の中にある可能性が浮かび、私は少女に問い開ける。


「君……まさかそのレイスは君の家族か?」


 幸い少女に此方の声は届いていたようで、少女は頷き、二体のレイスが家族であると肯定した。


「気の毒だが、このままでは君も危険だ。アンデット、それもレイスと共に過ごしているだけでも危険だが、スキルを使用し続けて何日目だ? このままでは本当に死んでしまうぞ」


 睡眠や食事をまともにとっていないのか、少女はやつれ、思考も回っていない状況だ。

 それに加えて不安定な精神。恐らく家族の死によって精神に多大なストレスが掛かっているのだろう。


「家族を……見捨てるくらいなら、このまま、死ぬまで一緒に、いる。邪魔……しないでっ……!」


 この子……死者と心中する気か。


 本来どう生きようが個人の自由だし、死者が関わっていなければ見逃したかもしれない。


 だがその選択だけは見逃せない、認めることは出来ない。


「すまないが、アンデットを見逃すことは出来ない。今君は二人を縛り付けてしまっていると思っているだろうが、逆だ。縛られているのは君なんだ。」


「だめ……だめだよ……一緒にいてよ、まだ、」


「死者はいつだって生者の足を掴んで離さない」


「やめてっ……!」


 泣こうが頭を下げようが、少女の望みを叶えてやることは出来ない。

 ここで同情でもして心中を肯定すれば私の信念もまた折れる。


「死者は滅するっ!!」


「来ないでっ!!」


 控えていたレイスが防壁を張り、少女は先程とは比べ物にならない魔力を使用し光魔法を編み始める。


 最早けん制としての魔法ではない、此方を殺せる威力を持った魔法が来るのは確実だ。


 対して私はもうこの少女を殺すことは出来ない。

 事情を知ってしまった以上、選択肢は少女を死者から解放すること以外ない。


 防壁を掻い潜り少女の意識を断つ、もしくは魔力切れまでの耐久戦、そして攻撃を全て交わしながら光魔法でレイスのみを消滅させるか。どれも容易ではない。


 攻撃を全て躱し、光魔法でレイスのみを消滅させても良いが、死者とはいえ少女の前で消滅させるのは気が引ける。


 相手は体力・魔力共に限界が近いかもしれない。

 魔力切れまで耐久戦を仕掛けるか、防壁を掻い潜り少女を気絶させるかの二択かのように思えるが、耐久戦は無理だろう。


 実力的な問題ではなく、この後(・)の戦闘を考えてのことだ。


 ブラックドック君が言っていた上級クラスのアンデットはこの少女の傍にいるレイスの事ではないだろう。

 これまでの言動からして、わざわざ傭兵を襲うとは思えない。


 となるとまだこの付近に上級クラスのアンデットが潜んでいることに他ならない。


 速攻で少女の意識を刈り取るべく、私は足に力を籠める。


 武器も《付与魔法・炎》も使えないため、殺傷能力の低いスキルを使おうとしたとき__


「どういう状況だい? コレ」


 そこには地下の探索を終えたのか、ブラックドック君が緊張感のない声色で状況を確認してきたのだった。



柿の種はピーナッツ無しで。豆類が得意ではないのです。

読んでいただきありがとうございました。

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