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29.地下の淀み

本日(9/3)14回目更新

宜しくお願い致します。


 カラメルと要塞跡へ突入し、ひしめき合うゴースト達を浄化して回る。


 要塞を外と内から見た感じ、ここはそこまで防衛に力を入れている施設ではないのかもしれない。


 どちらかと言うと補給物資を運び込み、昔に近くの龍骨の森で出現したとされる死獄龍ヘルヘイムと活発化した魔物を南方へ行かせないために戦う拠点として建設されていたのだろう。


 敵戦力へ使用する兵器は大砲やバリスタしか設置された形跡はなく、要塞の内側には入り口付近を見ただけでも弾薬庫のような空間がいくつもあり、それに加えて貯水するための設備まで見て取れた。


「部屋も多いが地下があるとはね。どうする? 地上と地下で別れる?」


「そうだね、では私は地下に行くよ。終わり次第合流しよう」


「了解」


 地上部分の探索をカラメルに任せ、私は地下へ降りていく。

 正直地上部分は劣化、というより破損が酷く結構日の光が入ってくる。私としては地下の方が過ごしやすいし、アンデットは此方に集まっているだろうと考えてのことだ。


 正直傭兵のアルという男がどの程度の実力で、どういう思考回路をしているのか把握していないため、結局のところ虱潰しに捜索するしかない。


 逃げ場のない地下に入るか分からなかったが、もし敵が巨大なら地下に逃げるのもありかもしれない。

 救援が来ると分かっているなら尚更だ。


 石造りの階段を下り、広いとは言えない廊下を進んで行く。

 廊下には左右に部屋が幾つかあったが、どこもゴーストが偶にいるだけで変わったものは無い。


 だが分かったこともある。この地下空間は主に怪我や病気に罹った人たちが利用していたのだろう、棚には治療器具や薄汚れた薬品の容器が転がっていた。


 流石に木製のベッドは朽ちていたが、血のこびり付いたシーツなどを見ればここがどういった場所かは分かりやすかった。


「ん?」


 なんの変哲もないと思っていた廊下。だがよく見ると砂ぼこりに跡が残っていた。


 人の足跡、それも大きさからみて子供の足跡だ。


「なんでこんな所に」


 足跡は最近つけられたもので、他に足跡は見当たらない。

 子供が一人でここまで来て戻っていった痕跡しかないし、足跡はその一往復分しか見られない。


 取り敢えず足跡の終点まで追ってみると、そこは保存食を置いておく部屋だった。

 とはいってもこの要塞が利用されたのは二十年前。いつまで利用されたかは不明だが食べられるものは見当たらず、腐って判別不可能な物しかない。


 恐らく食料を探してここまで来たが収穫がなく戻ったのだろう。


 信じられないが子供が一人で、ゴーストがいるこの廊下を抜けて。


 分からないことだらけだが、まずは捜索を続行する。


 食料保存庫から少し進むと廊下の最後に手狭な部屋が一つ設置されていた。


 中に入ると、そこには乱雑に布やゴミがあるだけだったが、部屋の隅の床板が崩れ、階(・)段(・)が見えた。


 この要塞が地上部分だけでも高めに建てられていたので、勝手に地下は一階しかないと思っていたが、更に下の階層があったようだ。


 廊下ではなく最奥の部屋の隅にある隠し階段となると正直嫌な予感しかしない。


 要塞跡の周囲にしかいないゴースト達、地下病棟の様な空間、一体この先に何があるのか。確かめるために慎重に階段を下っていく。


 階段はそこまで長くないが、階段を下りきると頑丈そうな鉄製の扉が鎮座していた。


 錆びて開きづらくなった扉を無理やり開き中を覗くと、そこには今開いた扉と同様の扉がもう一枚設置されていた。


「なんでだ」


 悪態をつきながら再び扉を開く。

 また扉があるのではと疑って中を覗くが、扉の奥に見えたのは想定していなかった光景だった。


 そこにいたのは地上とは比較にならない数のゴースト達。

 それに加え____


「ファントム……!?」


 ファントムはゴーストの上位互換であり、前世でも見たことのある不死者だ。


 その特徴は発生した場所から離れられないということと、ゴーストをはるかに超える負の感情、つまり怒りや怨念の強さだ。


 生者に対する執着が強く、知性を獲得している場合もある厄介なアンデットである。


 この数のアンデットを処理するのは数分かかるかもしれないが、この大部屋を調べるにはどのみちやらねばならない。


 私は部屋に飛び込みファントムへ接近して《浄化》を掛ける。


 流石にゴースト達とは違い一瞬で浄化できず、ファントムも反撃を仕掛けてきた。


 変形した腕で私を振り払い、距離を離そうとしてくる。

 その速度もゴースト達とは比較にならないため、少し掠ってしまう。


 私の体の一部とファントムの腕が重なる瞬間、私の体には全く外傷は無いが魔力を少し持っていかれた。


 だが私も《浄化》をファントムにかけ続けているため、そろそろ倒せるだろう。

 ファントムの攻撃を避けながらそんなことを考えていたが、次の瞬間ファントムは周囲のゴーストを吸収し始める。


「それは予想して無かったな」


 私には実質《浄化》しか実体のないアンデットに対抗する術がない。

 前世では《浄化》の力を身に纏うことが出来たのでまた違ったが、今はある程度接近して対象に《浄化》を掛けていくしかない。


 つまり今取れる行動は、先にゴーストを浄化しファントムを仕留める、ファントムの攻撃を避けつつファントムを浄化し続ける、取り敢えずファントムは無視して地上へ戻る、の三択か。


 ここに蜘蛛型キメラはいないし、この部屋で地下は最後だと考えると、さっさと地上に戻り傭兵のアルを探した方がいいかもしれない。


 だが今回は一人ではなくカラメルもいる。せっかく捜索を分担したことだし、ここの部屋は調べてしまった方が良いか。


 このままファントムを浄化してしまおう。


 私はファントムの攻撃を避け、偶にゴーストを浄化しつつ、ファントムを浄化していった。



だいふくは雪見だいふくしかたべれません。アイスたべたい。

読んでいただきありがとうございました。

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