28.奇遇遭遇、私達
本日(9/3)13回目更新
宜しくお願い致します。
空が白んでいく深夜の狩りの帰り道、誰もいない街道をゆっくりと進んで行く。
周囲には魔物一匹おらず、偶に鳥の囀りが聞こえる程度だったからか、少し離れた場所から此方に走ってくる人の存在に気づく。
「あれは……確かグウィだったかな」
こんな時間帯に一人で、それにあんなに必死に走ってどうしたのだろう。
一人で、そしてこんな時間帯にというのはお互い様か。
そんなことを考えているとグウィも此方の存在に気づいた様だった。
「テメェはっ」
「挨拶ぐらいしようよ、おはよう。そんなに急いでどうしたんだい?」
聞いても適当にはぐらかして先に街へ戻ってしまうと思っていたが、予想に反してグウィはその場で考え込んでいる。
歯を食いしばって、髪ををぐしゃぐしゃにかき回し、それでもしっかりと目を合わせ口を開く。
「兄貴が……この間俺と一緒にいた傭兵が例のキメラと戦闘中なんだ。敵は二体いて、最低でも片方は言語を解するるほど知性が高い。おまけにアンデットだから頭を吹っ飛ばしてもすぐ再生しちまった。それで俺が先に撤退してギルドに応援を呼ぶところだったんだ」
アンデットとな。
ならば私が行くしかあるまい。他の傭兵ではアンデットは消滅させて終わりだろう。
それに自分のプライドよりも人命を優先した若者のために一肌脱ぐのも年長者として悪くない。
「場所は?」
「兄貴は龍骨の森の南に位置する要塞跡に退避するって言ってた。もしかしたら隠れてやり過ごしてるかもしれねぇ。ただ要塞跡は普通の魔物はいないが、何故かゴーストみたいな体がない魔物が溢れてるから気を付けろ」
「了解した。私はこのまま現場に急行するから、君はこのままギルドへ向かって状況を報告してくれ。救援はとりあえず送らなくていい。」
「……これで兄貴が死ぬことになったらテメェはいつか必ず殺すぞ。本当に大丈夫なんだろうな」
「大丈夫だ」
「言い切る自信がムカつくが、……今は信じる。兄貴を頼む」
「任された」
返事を言い切る前に、私は街とは反対方向に走り出す。
身体強化を使用して街道を超えて平地を駆け抜ける。
「邪魔」
遭遇する魔物はすれ違いざまに《封緘》で捕獲し、キューブの中で凍結させる。
龍骨の森の南方、大まかな位置しか分からないので、グウィが街に向かってきた方向へ進んでいる。
恐らくグウィも急いでいただろうし、最短距離を駆け抜けてきたに違いない。実際グウィは鎧や肌に新しい傷がいくつもついていた。
「急がないとね」
要塞跡のゴースト群についても気になってしまい、私の走る速度は加速していった。
*
「あれかな?」
平原を走り続けていると壁に囲われたようなものが見えてきた。
スクリューの街を見てからだと小さく見えるが、壁はなかなか高く、中の広さは村ぐらいの広さはありそうだ。
要塞跡、というぐらいだから侵入できないということは無いだろうが、目を凝らして入口を探す。
すると入り口ではなく、要塞跡に近づく人影を発見する。
少しして向こうも此方を振り返り、私の存在に気づいた。
「おっ! 君は確かブラックドッグ君だったかな。奇遇だね、君もあの建物に用があるのか?」
そこにいたのはカラメルだった。
街を出てハイテ村方面へ向かったはずだが何故ここにいるのだろうか。
「そうだが、カラメルもここに用があるのかい? 私は傭兵の救出と魔物の討伐に来ている所だけど」
「うーん、用があると言えばある、と言った感じかな。これは完全に私の勘なんだけど、多分あそこいるね。いるなら必ず殺さないと、危険だからな、アンデットは即滅殺、一欠片も残してはならない」
一瞬カラメルの目が暗く沈んだように錯覚するが直ぐに元の様子に戻る。
これはアンデット関連で何かあったのだろうと察するには十分だ。
「……あの中にはゴーストが大量に集まっているらしい。今回私が追っているのも上級クラスのアンデットだ」
「なら目的はほぼ一緒だね。共に乗り込もうじゃないか」
ここまでアンデットに固執する者を追い払うことは難しいだろう。
それに傭兵の捜索まで含まれている依頼ならなおさら同行を断る理由がない。
カラメルがアンデットを消滅してしまうのが少し気になってしまうが、死者のために生者を蔑ろにするのは本末転倒なので同行は拒否しなかった。
「取り敢えず中に入ろう。後は成り行きで」
「了解、目に入ったアンデットは片っ端から潰していこう」
「……そうだね」
私はカラメルと並んで要塞跡に突入した。
*
この要塞に来たのは最近だったか、数週間前だったか、数日前だったか。
ここに来た時と変わらない。
私たちは三人のままで、誰一人欠けていない。
欠けてはならない、欠けさせてはならない。
意識を保たなければ。
意識を手放せばその魂が失われてしまうかもしれない。
狂わないように、大事な人のことを考える。
考えることが自分を更に追い詰めると分かっていても、もうどうすることもできない。
人は何も見えない暗闇の中にいつまでもいると狂ってしまう。
私達のいる空間は天井や壁に亀裂が入っているせいか、照明が無いこの空間も薄暗い程度で済んでいる。
朝は日差しが入って来るし、夜は月明かりによってこの空間は優しく照らされる。
二人は朝が少々苦手なようだが、この空間は二人にとっても過ごしやすい様だった。
どうかこのまま、誰の邪魔も入らない、この場所で。
「ああ、あああああ」
たとえ私が終わっても、私達は永遠だ。
それでいい。
それでいいんだと、自分に言い聞かせて、薄暗い空間の隅で蹲っている
風がつよい。髪がみだれる。視線がきになる。
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