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27.死者の襲撃

本日(9/3)12回目更新

宜しくお願い致します。


 街の連中が寝静まり、月明かりだけが大地を照らす平地に俺はいる。


 辺りには人一人おらず、偶にアンデットが地面から湧いてくる以外は平和なものだ。


 湧いて出るアンデットを一体一体引き付けて、握りしめた片手剣でその腐った肉体を断ち切っていく。

 スケルトンは剣の柄頭や盾を使って丁寧に叩き潰していく。


 ゾンビも、スケルトンも溜まった怒りや悔しさを叩きつけるには最高の相手だ。目の前の奴らは死んだ後魔物として恥を晒し続ける馬鹿な奴ら。


 俺より立場の弱い、言わば人生に負けた者共の成れの果て。


 自分はこうはならないと奮起しながら、せめて俺の練習台兼、サンドバックとして利用し続けてやると意識的に見下し続ける。


「オ……ラァッ!」


 今倒したアンデットで五体目。

 安全を考えているとはいえ、怒りに身を任せ渾身の力で攻撃しているため既に息が切れてきている。


 休憩しようとも考えたが、たった五体倒しただけで体力を消耗している自分に腹が立つ。


 こうも自分がイラついている原因は分かっている。


 最近傭兵ギルドに登録した新人__ブラックドッグとかいうガキが原因だ。


 ガキ、それも女が傭兵だぁ? 馬鹿にしやがって!

 だがそれはまだいい。俺が一番気に食わないのは、兄貴の忠告を碌に聞かなかったことだ。


 アルの兄貴はお世辞にも人当たりがいいとは言えない。見た目も少し怖いかもしれない。

 だけどあの人は本当は優しい人なんだ。


 少し前まで孤児だった、路地裏で這いずっていた汚らしい身なりの俺を助けてくれた。

 本人は助けたという認識は無いかもしれない。丁度前衛の傭兵が足りていなかったとか理由を付けて、俺に生き方を教えてくれた。


 それに兄貴は怒るときに俺を子供扱いしない。『一人前の傭兵なら』と俺に足りていない部分を厳しく指摘してくれる。

 俺はそれが誇らしくて、役に立ちたくて、兄貴に追いつけるように頑張っている。


 そんな中、兄貴の心配を無下にして口答えしているガキを見て怒りが湧いた。カッとなって手を出してしまった。


 結果は惨敗、軽くあしらわれて、逆に兄貴の顔に泥を塗る結果になっちまった。


 兄貴は怒らなかったけど、少し考えこんでしまっていた。


 どうしようもない怒りがどんどん腹の奥底に溜まっていく。


 ____その新入りが中級に昇級したと聞いたのはその二日後だった。


 兄貴に稽古をつけてもらったり、仕事を手伝わせてもらったりする合間に修行して、下級の魔物を安定して狩れるようになったのは最近だ。

 いまだに五体以上の魔物に囲まれたら死ぬかもしれないと思ってしまう様な実力で、中級に上がるにはまだ時間が掛かるだろう。


 それをあのガキは二日、正確には一日で中級に昇級し、既に上級クラスの魔物も狩っていると聞く。

 アンデットの討伐依頼があれば優先的に受けているようだが、それでも相当な数の魔物を狩っており、上級への昇級も近いらしい。


 ……この差はなんだ? 俺だって毎日努力は欠かしていない。

 一人でも戦えるように考えながら戦闘を行い、様々な経験を積んでいるはずだ。


 なのになんで置いて行かれる?

 悔しすぎて、情けなくて、怒りでどうにかなりそうだ。


「アアアアッ!!」


 目の前のスケルトンを殴りつける。

 

 この程度では直ぐに起き上がり、再び此方に襲い掛かってくるだろうが、それより拳に走った痛みの方が勝った。


 ……まずい。まだギリギリ剣は握れるか?

 逃げるにしても早朝までは街の門は開かないし、こいつを街へ連れていくのも違う気がする。


 まあこのスケルトンだけなら何とかなるだろう。ゴースト系の魔物が城塞後にしか出現しないということもあり、周囲にそこまで脅威になる魔物もいない。


 問題ない。


 そう考えてスケルトンへ止めを刺そうと近づいた瞬間、地面から出てきたスケルトンの腕が俺の足を掴んできた。


「___ッ」


 二体、いや、前方からゾンビが一体此方に向かっている__!


 地面のスケルトンを引き剥がそうとするが、既に下半身に纏わりついており引き剥がせない。


 辛うじて鎧で防いではいるが、既にスケルトンは俺の鎧の腹の部分に噛みついてきている!


 前から二体のアンデットが俺の命を奪おうと接近し、掴みかかったその時、横から突き出された盾によってアンデットの頭が吹き飛んだ。


「兄貴ッ!?」


「動くな」


 そういうと兄貴は俺に纏わりつくスケルトンの頭のみを正確にハンマーで打ち抜いた。


 また、助けられた。

 迷惑を掛けてばかりで、これではあの新人より俺の方がよっぽどガキだと思ってしまう。


「ここ最近、お前の様子がおかしいと感じてな。そんな時夜中にお前が街の外に出るのが見えて、馬鹿な事しねぇか見張りに来たんだよ」


「すいません」


「……焦ってんのか」


「…………」


「焦ってる奴に言うことじゃねえが、先を見ろよグウィ。例の新人は余程才能があったか、血の滲むような努力をしてきてんだろ。あるいは、両方かもしれねぇがな」


「分かり、ました」


 そう返すのが精一杯だった。


 その時俺は下を向いていて、何も見えていなかった。



 俺の頭上に高速で落下してくる二つの影に、全く気付いていなかった。


「下がれっ!!」


 気付いたときには俺は兄貴の手で後方へ投げられていて、敵の攻撃範囲から逃れていた。


 頭上から飛来した二体の魔物は兄貴の前後に位置取り、攻撃を仕掛ける。


 だが兄貴は攻撃を最小限の動きで回避しながら前方の敵へ肉薄し、その頭部を吹き飛ばす。


 そして次の瞬間には頭部が再生し、兄貴に反撃を叩き込んできた。


「__え?」


「アンデット、しかも二体とも噂の蜘蛛型キメラかぁ!?」


 蜘蛛型キメラ__最近出没している厄介な魔物。その強さは上級並みだと聞いている。


「グウィ! 先に撤退してギルドに救援頼め! 俺はこのまま要塞跡に退避してこいつらを削ってから戻る!」


「はい!」


 俺がここにいても足手まといにしかならない。幸い街までのルートは塞がれていないため、街へ向かって走り出す。


「逃ガサナイ」


「____《我が献身の(デディケーション)左(・レフト)》!!」


 __兄貴がスキルを使用した。


 魔物は俺を補足して狙って来ようとするが関係ない。

 兄貴がスキルを使用した今、俺に攻撃が向くことは無いだろう。


 問題があるとすれば、兄貴のスキルは攻撃的なものではないため決定力に欠けることか。


 頭部を破壊したときの反撃によって傷を負っている状態で、あの二体の魔物の猛攻をしのがなければならない上に、内一体は言語を理解するほどの知能を持っている。


 今から街へ向かうと到着は夜明けになるため、街門は開くが直ぐに実力のある傭兵が集まるとは限らない。

 俺は兄貴を信じて振り返らずに街へ急いだ。



台風ちょっとテンションあがる。洗濯物は絶望しかないけれど。

読んでいただきありがとうございました。

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