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25.禁忌の領域

本日(9/3)10回目更新

宜しくお願い致します。


 傭兵ギルドの中にある解体室で肉が床に落ちる音が続く。


 この街に来る前から回収していたスケルトンや猪の魔物も、浄化が済んでいるため同じく並べていった。

 流石に二万を超えるアンデットの死体を出すことはしなかったが。


「ゴブリン、コボルト、サンドワーム、カースラビット……森で遭遇する下級の魔物は全種類狩ったのかい? それに加えてオークとレッドハウンドが一体ずつ。後はスケルトンか、ずいぶんな量だな」


「一番多かったのはジャイアントバットだね、鬱陶しかったよ」


 自分の中ではそんなに多いとは思っていなかったが、無心で倒しては回収の繰り返しだったので相当数が溜まっていた。


 死体を並べていったが、最後の一体は特に場所をとるので注意喚起をする。


「最後の魔物だけど、これは少し判断に困ってしまってね。きちんと報告しておきたかったんだ」


「これは……」


「アンナさんっ! この魔物っ……!」


「ああ、恐らく最近出現した奴と同系統の魔物だ。これで確定かな」


 森で遭遇したギガスパイダーの複合種を床に置くと、近くにいた職員の一人が反応し駆け寄ってきた。

 どうやらギルド内で既にこの複合種についての情報は周知されているらしい。


「この魔物は龍骨の森の奥地で発見してね。森を荒らしているというか暴走している様にも見えたから倒してしまった」


「こいつと戦ってよく無事だったね。……詳しい話は別室でしようか。これだけの死体と昇級処理なら時間もかかるだろうし、それでいいかい?」


「私は構わないよ」


 アンナは先程駆け寄った職員に事情を説明し、査定や解体を任せ、別室へと案内してくれた。


 話が長くなるのか、高級そうな茶請けと紅茶を用意してからアンナはソファに腰かけた。


「さて、どこから話したもんかな」


 アンナは紅茶を一度傾けて思案する。


「まず話の内容だが、さっきあんたが出した蜘蛛の特徴を持った魔物についてだ。最近、同じように蜘蛛の特徴が見られる魔物の変異体の目撃情報が頻発している。確認されたのは二種類だったんだが、片方は未だ討伐されていない」


「片方? と言うことは討伐済みの個体もいたんだね。しかも口振りからして蜘蛛以外の特徴は一致していなかったのか」


「その通りさ。最初に発見されたのは蜂の魔物であるスパークビーと蜘蛛型魔物の融合種。スパークビーとしての素早さと小さな的、電撃に加えて蜘蛛の神経毒と糸攻撃、更には切り裂き。追い詰めても飛んで逃げちまうってんで現在は二種探索者による捜索中だ」


「私が相手にしたのとは逆で小さいやつだったのか。それは難儀だったね」


「ああ。続けるよ、もう一体はあんたが倒したヤツと同じギガスパイダーの特徴があった。違うのは融合した魔物がキャノン・センチピードっていうムカデ型の魔物でね、これまた厄介な奴で上級の傭兵が出る羽目になったよ。キャノン・センチピードはその長い巨体で縦横無尽に暴れまわる魔物なんだが、基本跳んだりしないし毒も持っていないから討伐はしやすい。だが今回は足の一本一本が蜘蛛のものに変容していることによって跳びまわって大変だったそうだ。空中に跳ねて、回転しながら体の一節一節から生成した弾丸を射出する上に、蜘蛛の神経毒持ちってのはもう悪夢だね」


 正直想像もしたくない。強さ云々ではなく見た目も酷そうだ。


「私が遭遇した奴はスライスビートルの特徴を持つギガスパイダーだった。飛ばせずに倒せたからあまり強いとは感じなかったかな」


「そうか……だが三体とも違いはあれど強さ的に見ればそう違わないように思える。実力のある中級以上の傭兵以外は発見したら直ぐ撤退して報告を上げるよう周知してあるが……あんたが依頼を受ける様子がなかったからといって昨日の内に伝えていなかったのは完全に此方の不手際だ、本当に申し訳ない」


 アンナは座ったまま頭を下げる。


 傭兵ギルドの職員は本当に誠実だと思う。

 子供だからと言って侮らず、非があれば即座に謝罪し、人当たりも良い。

 教育がしっかりしているのか、厳正な審査があるのかは不明だが、人が良い組織は利用しやすい。


 あまり困らせたくは無かったので早めに頭を上げるよう促す。


「頭を上げてくれ。幸い私は強かったし怪我もない。次同じようなことが起きないよう気を付けてくれればそれでいいよ」


「そう言ってくれると少し心が軽くなるよ」


 頭を上げたアンナは少し困ったような笑顔でそう答えた。


 だが直ぐに整然とした表情に戻り話を続ける。


「先程蜘蛛の特徴を備えた魔物について話したが、肝心なのはどうして未確認の魔物が突然現れたのかということだ」


「一つ質問だが、これまでに似たようなことはあったのかい? 私はあまり魔物について詳しくないんだが、何かの拍子に異なる種の魔物同士が融合する、そんな現象に心当たりは?」


「無い。人為的でない限り、このようなことが自然に発生することは無かった」


 つまりもし自然に発生したとするなら今回が初めてのケースになるのか。そうなると手探りで調査しなければならないし大変かもしれない。だが先程の言い方だと、人為的に引き起こした人物がいたように聞こえる。


「人為的になら可能なのかい?」


「ああ、可能だ。二十年も前になるが、とある研究者が魔物同士を繋げ合わせたキメラを開発してばら撒いたと記録に残っている。その後は各国共通でキメラの作成は禁忌とされていて、確認が取れて黒と断定されたら即死刑だ。正気の奴ならまず手を出さない領域だ」


「そうか……なら今回の件は人為的に引き起こされたと仮定して調査を始めているのか」


「今回に限ってはほぼ確実に自然発生ではないだろうな。なにせ三匹の中に一体だけおかしい個体がいる。この街のの周辺にはスライスビートルとキャノン・センチピードは生息しているが、スパークビーは街の周辺どころかこ(・)の(・)国(・)に(・)は(・)生(・)息(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。つまり、何らかの理由で別の場所で作られたキメラがこの街の周辺にやってきたことになる」


「キメラを嗾(けしか)けた奴がいるかも知れないのか……」


 それにしては魔物の数や出現場所が中途半端なような気もするが、相手の狙いが分からない以上私が考えても仕方がない。

 今後も警戒を続けて、キメラと遭遇するようならできるだけ良い保存状態で届けるようにしよう。


 その後は手続きが終わるまで、アンナ他愛のない会話を続けるのだった。



暑かったり、寒かったり。気温バグのせいで体調みだれます。

読んでいただきありがとうございました。

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