23.異常変異種撃滅戦
本日(9/3)8回目更新
宜しくお願い致します。
森に起こった異常を確認しようと森の奥へ進んだのだが、その異常は直ぐに見つかった。
というより、
____直ぐに私が見つかった。
「なんなんだこいつは」
一目見た感想としては、『デカい』その一言に終始する。
魔物の種類としてはギガスパイダーという巨大な蜘蛛型の魔物だと思われるが、ギガスパイダーには存在しない特徴がみられる。
それは角、スライスビートルと呼ばれる魔物が持つ刀の様な角がギガスパイダーの頭部から生えていた。
ギルドの図鑑には魔物の変異種などの情報も書き加えられていたが、コレはどの情報にも当てはまらない。
実物を見る限り、環境に適応するために進化した様には到底思えず、無理やり異なる生物同士を融合させた様な気持ち悪さが見て取れた。
目の前の変異種__もとい複合種は私を食すというより殺すために突進してきた。
私は上に飛び、木の枝に乗って複合種を見下ろした。
複合種の角は木を貫通し、そのまま鋭い両前足で私のいる木を切断する。
「おっとと」
中々に殺意の高い攻撃だ。
角の突進を横に避けた相手には両前脚で左右からの挟み撃ち。速度についていけない傭兵なら必殺と言って良い攻撃手段。
それに加え……
「その巨体でこうも跳ね回るかね」
ギルドの図鑑にもギガスパイダーはかなり身軽で素早い魔物であると書かれていたが、この巨体で俊敏に動き回られると中々に厄介である。傭兵の等級で表すと中級に位置する魔物とあって、戦闘力が高い傭兵でも相性次第では食われることもあるそうだ。
それに気になる点がもう一つ。
先程木の枝から複合種を見下ろしたとき背中にスライスビートルの特徴__羽が見えた。
もし飛ぶことが可能なら、先程の突進も上空から一方的に行うことができるということである。
しかもスライスビートルの特徴が見られる部分は黒光りする甲殻に覆われており衝撃や斬撃が通りづらくなっている。
……ギルドに報告するときに信じてもらえるように、なるべく形を留めたまま倒したい。
変異種というには些か異形な存在なので念のため、念のため。
「《氷の殻》、《氷結界》」
私は身に氷を纏い、新技《氷結界》を発動する。
《氷結界》の効果も単純で、自身を中心とした半径五十メートルの円形空間を氷壁で囲み閉じ込めるだけだ。
逃がして被害が拡大しても面倒なので、ここで確実に複合種を仕留めるために結界を張った。
魔力消費は《氷の殻》より多いが、閉じ込めること以外にも結界内であれば自分の周囲以外からも氷を生成できるのは実験済みだ。
『ギ、ギギギ、キシ』
複合種は口元の鋏角から毒々しい赤色の粘液を滴らせながら此方に狙いを定めている。
ギガスパイダーの攻撃手段は鋏角での噛みつきからの毒の注入、両前脚での切断、糸の射出、巨体を生かした体当たりの四パターン。スライスビートルの角を生かした突進、横なぎを合わせ六パターン。
飛翔や高速機動を含めると攻撃手段は多岐にわたる。
ではどうするか。簡単だ。
選択肢を削いでいく。
複合種の攻撃手段を削いで、削いで、何もできなくする。
そうして最後には動くことさえできなくして終わりだ。
先ずは最も厄介な部分を貰う。
再び奴が突進してくるのを待ちながら、私は《氷結界》を利用して奴の周囲に細かい氷を発生させて体表に付着させる。
これはただの下準備。付着した氷は解けて水滴となり、奴を凍らせやすくする。
下準備に気づいていない複合種は私が反応できていないと思ったのか、一度躱された突進をもう一度仕掛けてきた。
今度は飛ばずに角を避け、待ってましたと言わんばかりの左右からの攻撃を紙一重で躱す。
そして目の前に交差された前脚を蹴り砕く。
鋭いと言ってもギガスパイダーの前脚はそこまで高度が高いわけでは無いので、《氷の殻》と魔力による身体強化で事足りる。
複合種は奇声を上げ跳び去ろうとするが、羽を、そして地面ごと全ての足を凍結させる。下準備のおかげで凍結に掛かる時間を短縮できたため、相手が対応できていないうちに懐へ潜り込み、柔らかそうな腹部に氷で包まれた腕を突き入れる。
「凍れ」
突き入れた腕から冷気が伝わり、複合種を内部から凍結させて行く。
混ぜ合わされた魔物がギガスパイダーとスライスビートルだけとは限らない上、体内に別の魔物を格納している可能性も考えられる。
あらゆる可能性を潰すため、ゆっくりと、確実に凍らせる。
既に昆虫が動き回る温度ではなく、周囲の気温も《氷結界》の影響で零下となっており、複合種は痙攣すらまともにできない状況で徐々に凍り付いていく。
「終わりかな」
複合種が完全に凍結したことを確認し、《封緘》で死骸を回収する。
氷魔法を解いて周囲の氷を消失させ、帰り道へ足を向けて考える。
最低でも中級の上の方であるギガスパイダーを《封緘》なしで倒せることは確認できた。
このレベルの魔物が中級であるなら、傭兵の等級は問題なく上げることが出来そうだ。
今回の相手も《封緘》で捕獲して《氷魔法》で凍結させればそれで終わる程度だったので、上級まで等級を上げることも視野に入れておいた方が良いかも知れない。
森を抜け街に向かって歩くが、ふと気になって後ろを振り返る。
……何か視線を感じたような気がするが、特に気になる物は視界に映っていない。
「気のせいか」
私は特に気にせず街へ戻ったのだった。
宿題は最終日まで温める。危機感で進みが早いんです。たいへん。
読んでいただきありがとうございました。
良ければ評価、ブクマ等お願いします。




