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22.漆黒の導き手(かわいい)

本日(9/3)7回目更新

宜しくお願い致します。


 街を出発してから少し経ち、私は龍骨の森、その入り口までたどり着いた。


 夜中ということもあって気温も低く、道中は過ごしやすかった。

 だがそれはアンデットにとっても同様であり、当然のように道中で二体のアンデットに遭遇した。


「そろそろ処理しないとなぁ。浄化済みと言っても森に埋めるのも気が引ける」


 この世界に来てからかなりの数のアンデットを倒し回収しているが、浄化は行えてもその亡骸を未だ処理できていない。


 亡骸の数からしても一気に火葬してしまい、残った骨は遺骨ではなく遺灰としての状態で保管するのが現状のベストだが、困ったことにその火力がない。


 遺灰にしたとして今度は埋葬の問題が出てくる。


 アンデット達が何処から来たのか、生前の意向すら知らないため、何処かに埋葬するのか海へ散骨するのか私が決めるしかない状況だ。


 念のためギルドではアンデットの処理をどうしているのか確認してみよう。

 もしかしたらアンデット用でなくとも火葬場や焼却炉があるかもしれない。


 そんなことを考えつつ、私は採取し始めた。


 ひんやりとした空気の中、自分の足音と木の葉が擦れあう音だけが聞こえてくる。


 時折魔物が姿を見せるがそのほとんどがジャイアントバットと呼ばれる蝙蝠の魔物だ。


 ジャイアントバットは音もなく暗闇の中から奇襲を仕掛けてくる厄介な魔物で、日中は洞窟内や岩陰に潜んでいるため目撃することは殆ど無い。

 

 ただ夕暮れ時からは森の全域に出現し、生物、魔物問わず血が流れる者に突貫し吸血を行うため、戦闘能力が低い傭兵などは夕暮れ時までに森を出ることになるそうだ。


 血も腐っているため肉のついたアンデットを狙うことは無いらしいが、私は中途半端なアンデットだからか時々血を吸いにやって来る。


 的確に首筋を狙い噛みついてくるため、接触した瞬間に凍らせ、《封緘》で回収している。

 いちいち警戒していては採取が捗らないので接触するまでは無視した。


「薬草、薬草、毒草薬草薬草」


 採取できるものは殆どが薬草と毒草、偶に果物が取れるぐらいだ。


 朝から採取を行っている傭兵が殆どで、薬草なども魔力を使って修復・成長を行っている時間帯のため、修復が早いものや他の傭兵が取りこぼした採取物しかない。


 私は無心で目に付く物を片っ端から回収し、森の奥へと進んで行った。



*



「ふぅ……そろそろ切り上げるか」


 採取開始から何時間か経過し、ジャイアントバットも見かけなくなって私は採取の手を止めた。


 無心で採取と遭遇した魔物の討伐を行い続けた甲斐あって成果物は大量だ。下級依頼の対象である薬草・素材全種と討伐依頼対象もコンプリート出来たのは嬉しい。中級はレッドハウンドとオークしか遭遇しなかった。


 朝にしか遭遇できない種類の魔物が居なかったため夜のうちに集めることが出来たのは僥倖だった。帰りに魔物と遭遇しても放置して街へ戻れる。


 あまり討伐しすぎるのも問題になってしまうので、これ以上は自重しよう。


 アンデットだけは別だけれど。


 やはり夜の森だけあってアンデットとの遭遇率は高かった。

 獣や魔物が多く死体は真っ先に肉を食われてしまうのか、殆どのアンデットはスケルトンやゴーストで、ゾンビやグールには遭遇していない。


 今から街へ戻れば朝には街へ着くだろうと考え、帰還しようと来た道を戻ろうとすると、微かに、何かの鳴き声が聞こえてきた。


「どこだ……?」


 その鳴き声は弱弱しく、残り少ない力を振り絞るような声だった。

 辺りを見回すがそれらしい影は見えない。先程の声が聞こえてきた方角を頼りに草木をかき分け声の主を探す。


 もう鳴き声は聞こえず、遅かったかと思った矢先、木の根元に一匹の鳥が横たわっているのを発見した。

 羽毛は元々漆黒で分かりづらいが赤く染みている。


「間に合うかっ……!」


 急ぎ《回復魔法》を魔力全開で使用する。

 治しながら傷を確認すると、傷が多いため出血が酷いが、幸い致命傷となるような深い傷ではない様だった。


「よく見たらアヌビス・オウルか」


 図鑑に載っていた梟の魔物。

 魔物だが死者の魂を導くとされており、見かけても狩られることは殆ど無い、言わば神聖視された存在である。

 人間・魔物の双方とも争うことも無く、大気中の微量な魔力を吸うことで生命活動を行っているらしい。


 そんな存在が死にかけているということは、この先で異常事態が発生している可能性がある。


 こんな夜更けにわざわざ金にならない魔物を狩る傭兵はいないだろうし、何か魔物に異常でもあったか。


 自身の進退を決めかねていると、怪我が治って元気になったアヌビス・オウルが一鳴きする。


 此方をじっと見つめ、もう一度、礼をするように目を閉じて一鳴きした。


「どういたしまして」


 返事を聞くや否や、アヌビス・オウルは自身の羽毛を一枚毟り、私の元へ運んでくる。


「くれるのかい?」


 私が漆黒の羽毛を受け取ると、アヌビス・オウルは飛び立って闇に消えていった。


 ふーむ、このまま街へ帰ろうと思っていたが気が変わった。

 アヌビス・オウルが怪我を負っていた原因が気になる。


 また同じようなことが起こっても困るし、異常があるなら解決しておこう。


 ましてや死者の魂を導くとされている梟だ。助ける理由はそれなりにある。


 ……それに前世では梟には縁がなかったが、実際に見てみるとなかなかどうして愛くるしい容姿をしている。


 少しやる気を出して、私は森の奥へ進むことにした。



新しいトラックボールを購入。トラックボールがいい感じ。

読んでいただきありがとうございました。

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