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21.夜更かしアンデット

本日(9/3)6回目更新

宜しくお願い致します。


「………………はっ!」


 傭兵ギルドにて図鑑に目を通し始めてからどれ程の時間がたったのだろうか。

 窓の外を見てみると既に日は落ちており、私の周囲には人が全くいないが、耳を澄ませずとも傭兵たちの賑やかな声が響いてくる。


 きっと一階では仕事終わりの傭兵が集まり軽い宴でも行っているのだろう。


 情報収集に夢中で周囲に気を配っていなかったため時間の経過と人の行き来を把握できていなかった。

 思っていたよりこの世界の動物や魔物、植物などの生態を知ることは楽しい時間だったため仕方がない。


 それよりも重要なのはこれからの行動だ。


 この街に来てから初めての夜。

 村で過ごした夜とは違い、街灯によって光源は確保されているようだ。


 アンデットである私は光源など無くとも行動することは可能だが、流石に夜通し路地などで過ごすことは避けておきたい。また要らぬトラブルを招きそうだ。


 なら早く宿へ迎えと言われそうだが、私は図鑑に夢中で宿をとるのを失念していた。


 今から宿を回って泊まれるかも不明、夜にこの外見でうろつくのも避けたい、


「……」


 もうこのまま夜を明かすか。

 ここなら殆ど人は来ないし、図鑑もあるから暇を潰せる。


 傭兵ギルドが閉まらないことを祈り、再び図鑑を開こうとするが、昼間のアンナから言われた一言を思い出す。


『依頼中に別の討伐対象と鉢合わせることもあるから、先に採取・討伐を行ってからの依頼受注も許可している』


 ……よし、採取に行こう。

 初級の依頼で必要な採取物と個数は把握済みだ。どうせ街をうろついても特に開いている店も無いだろうし、時間を無駄にするぐらいなら手を動かそう。


 私は目立たないように一階へ降りて、傭兵ギルドを後にした。





*



「外に出たいんだが」


「いやいやいやいやいやもう完全に閉じちゃうから! 今から街の外に出たら危険だし、朝まで入れなくなるからやめておいた方がいいって! 宿が無いなら家に来ていいから! なんなら永住してもいいから!」


 街を出ようと私は再び街門へ足を運んだのだが、そこにいたのは早朝に出会ったあの門番だった。


 あれから結構な時間が経過しているが、この門番は一体いつ休んでいるのだろう、他に門番は見当たらない。

 普通門番や施設の宿直等は二人一組だと思っていたが、ここは違うのだろうか。


 相変わらず言動が少し危ない気がするが、やはり私のことが心配なのだろう。

 だがここで毎回時間をロスするのも面倒だ、今後のことも考えて門を通りやすくしておきたい。


「ここだけの話なんだが、私は夜型でね。ああ、もちろん夜に行動するタイプという意味もあるんだが、ちょっと特殊なスキルを持っていてね、簡単に説明すると夜に行動すると戦闘力や成長率が増大するんだ」


「へぇ、そんなスキルあるんだねぇ。でも子供にとって睡眠は大事だよ、成長したいならなおさら生活を送らないとだめ。……まぁ、君も傭兵ギルドに登録したということは一人前の傭兵だ、私が君の行動を縛ることは出来ない。外に出ることは許可するけど、くれぐれも怪我には気を付けるんだよ」


「ありがとう、気を付けていってくるよ」


 まだ門番は心配そうに此方を見ていたが、いつまでも話していては本末転倒なので話を切り上げて街の外へ出る。


 街中とは違い夜の平原は正しく暗闇だ。

 加えて今日は月も雲に隠れてしまっていて、常人では目が慣れても殆ど見えてこないだろう。


 私にとってはむしろ歩きやすい時間帯なので


 採取対象は多岐にわたるが、街の西南西方向にある森で採取するのが一番効率が良い。


 これから向かうのは『龍骨の森』と呼ばれる場所だ。その昔森の中心に巨大な龍種の骨が見られたことが名前の由来らしい。


 だが現在はこの森の象徴であった龍骨は見ることが出来ない。なぜなら龍骨自体がもうこの森に存在しないからだ。象徴が失われた理由は、龍骨が破壊された訳でもなく、誰かに運ばれた訳でもない。


 巨大な龍骨は自らその巨体を引きずりながら移動したのだ。


 ただの骨だった体は所々腐った肉がへばりつき、濁った眼球や黒紫の大翼が生成されたらしい。


 その肉体、骨の髄から汚泥のような粘液を撒き散らし、黒い瘴気を吐きながら、その龍は蹂躙を開始した。


 死獄龍ヘルヘイム。この森で目覚めた最悪の龍種、三大龍魔王の一角である。


 個人的には死獄龍には興味が尽きない。


 アナスタシアと適合した氷獄龍ニブルヘイム。

 適合はしなかったものの体の一部となっている炎獄龍ムスペルヘイム。

 両者より死獄龍はアンデットに近い存在に思える。

 

 それに死獄龍が吐いていたとされる黒い瘴気。ハイテ村での騒動で見られた、同じような特徴を持つ瘴気との関連性も気になるところだ。


 既に三大龍魔王は討伐されているため発生理由や生態を詳しく理解する日は来ないだろうが、もしその死骸等が利用され、生者に被害が出ているならできる限り止めたい。


 私が眠りに就くまでに原因が分かれば対処して、分からなければこの世界の住人に任せよう。


 所詮私は他所者なのだ。


 アナスタシアは既に亡くなっているのだし過度な干渉は控えよう。


 私はこれから集める物の特徴を思い浮かべながら龍骨の森へ向かうのだった。


 

テレビが壊れ音量が常にマックスになる。オートボリューム死んでくれ頼む。

読んでいただきありがとうございました。

良ければ評価、ブクマ等お願いします。

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