12.手向けの蒼光
誤字脱字、誤用などありましたら申し訳ありません。
宜しくお願い致します。
肉体がどす黒く変色し、体格が一回り大きくなったバルガは、自分を打ちのめした私でも、捕らえていたサラクでもなく、クロウ少年目掛けて突貫する。
捕らえた時とは比較にならない、尋常では無い速度でクロウ少年に迫る。
私は身体強化を全開にしてクロウ少年を庇いに行くが、完全に避けきれず右腕で受ける。
致命傷には至らないが、バルガが振りぬいた拳は私の右腕を完全にへし折っていた。
「ブラックドックさん!」
「全員固まれ!」
クロウ少年が叫び、此方を心配するが、私は瞬時に指示を出す。
まず全員を保護してしまいたいが、相手は待ってくれない。
村人達とバルガの間に入り、氷の槍を地面からバルガに向かわせながら、先程の攻防について考える。
クロウ少年を庇ったとき、バルガの拳が振りぬかれる前、私は左腕で奴の腕の側面に触れていた。
だが《封緘》は発動せず、仕方なく右腕で受けることになってしまった。
現状思い当たる可能性は二つ。
一つは魔法やスキルといった類を、全て無効化している場合。
二つ目は魂が一つの肉体に押し込まれている関係上、イレギュラーによって《封緘》が機能していない場合だ。
《封緘》は便利だが、触れる以外に、生物は一体ずつしか捕らえることができないという条件がある。
先程まで村人を保護していたキューブは、一人ずつ封緘してからキューブ同士を繋げていた。
今バルガに向かって生成した氷槍は破壊されたが、触れた瞬間かき消されたようには見えない。魔法で直接凍らせることはできないが、すでに生成された氷は当たるようだ。
加えて一本だけ氷槍がわき腹を掠めてできた傷が現在進行形で再生していっている。
《封緘》が機能しない上《氷魔法》が決定打になりそうもない。
第一離れて戦った場合、後ろの少年や村人が確実に狙われる。
結局私が取れるのは接近戦という選択肢。
再生しないように一撃で屠るか、相手の魔力が底をつくまで肉体を削り切るかだ。
「《氷の殻》」
昨日試した《氷魔法》の応用。左手はガントレット、両足にはグリーヴの形状をした氷を纏わせる。
バルガが邪魔者を振り払うように腕を振り回すが、直線的で力ませな攻撃は私に掠りもしない。
前世では体が動かなくなるまで研鑽を積んできた近接格闘。素人どころか最早動物的な動きをする相手はいいカモだ。それこそアンデットで何十万と経験を積んできている。
バルガが腕を振るごとに、関節の間や腕の腱を狙って連撃を叩き込む。
強打を打つ必要はない。
《氷の殻》は防具というより武器としての形状を追及しており、拳や足先、腕や脛といった部分には氷で刃を形成してあるため、左ジャブの連打で十分肉を削れるようになっている。
一時的にだが両腕が使い物にならなくなったバルガは、両腕を鞭のようにしならせて私を狙うが、先程よりも速度が落ちている。
振り回される両腕をダッキングで掻い潜り、利き足を変えながらローキックを連打。連打連打連打連打。
体格が変化したことで、私との体格差は更に増大し、バルガは私との超至近距離でのインファイトにまるで対応できていない。
イラついているのか苦しんでいるのか不明だが、バルガは再び咆哮し両腕に魔力を集め始めた。
恐らく私を一撃で潰すためありったけの魔力を腕力の強化につぎ込んでいるのだろう。
馬鹿正直に待つ必要はない。
バルガの足をそのまま削り、足払いを掛けてマウントポジションをとる。
相手は力の入った打撃を打てない状況だが、この体格差でマウントを取り続けても寧ろ危険なのは私の方。
反撃が来る前に攻め潰す___
腕に纏った《氷の殻》の形状を刃から杭へと変形させる。
狙うのはバルガの心臓部。
首から提げていた魔道具が肉体と一体化している箇所を打ち抜くため左腕を振り上げる。
魔力による身体強化、それを全て腕に収束させる。それは奇しくもバルガの取った行動と同じだった。
「_セイッッ!!」
全力の一撃は心臓目掛けて振り下ろされ____
____バルガの強化された両腕で受け止められた。
氷の杭はバルガの両腕を貫き胸部に刺さってはいるが、魔道具まで到達していない。
決死の一撃をしのぎ、唯一残っている私の左腕を絡めとったバルガは、勝利を確信したのか愉悦の笑みを浮かべており、私の右腕に集まる魔力に気づくのが遅れた。
折れた右腕は無理やり《氷の殻》で固定している。
氷の杭は左腕と同じものだが、腕に収束する魔力量が違う。
先程までの肉体が壊れない程度の強化ではない。明らかに肉体へ支障が出るほどの魔力を右腕に込めていく。
自壊も厭わぬ一撃を食らわせるため、私の体に宿る魔力を全てかき集めて収束させる。
右腕は《氷の殻》と魔力によって蒼光を放ち、腕の周囲は空間が歪む。
バルガも目の前の蒼光が自身の命を終わらせるものだと分かっているのだろうが、逃げようと私の左手を放した場合はそのまま氷の杭が押し込まれる。
足は徹底的に破壊されており再生は間に合わない。
何もできないことを悟ったバルガは、死にたくないと言わんばかりに絶叫を響かせる。
「右腕はあげるよ。もういい加減に、眠りなさい」
右腕を振り下ろす。
バルガの両腕は砕け散り、蒼光は魔道具ごと心臓部を貫き地を割り砕く。
辺り一帯に轟音と衝撃が響き渡る。
土煙が晴れる頃には、辺りを静寂と冷気が包む。
爆散した私の右腕からは血が溢れることはなく、
上半身が吹き飛んだバルガの死体もまた再生することは無かった。
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