11.怨恨の行方、愚者の咆哮
誤字脱字、誤用などありましたら申し訳ありません。
宜しくお願い致します。
アンデットを凍らせ続けて約二時間、ようやく最後のアンデットが動きを止めた。
私が作り出した氷山は、既に標高五十メートルに達している。
まずは氷山から飛び降り、《封緘》で捕獲していた一人の男を開放する。
男は急に解放されて驚いていたが、此方を視認するやいなや襲い掛かってくる。
「死n__」
「すまないね」
男から松明を奪い、顎にアッパーカットを食らわせて、《氷魔法》で形成した鎖で縛り上げる。
他の野盗も同じように処理していき、回収した松明を氷で作った台座にセットし、簡易的な光源を確保する。
「よっこらしょ」
野盗たちの処遇について聞くために、村人達も草原に開放する。
村人たちは周囲の異様な冷気とアンデット入りの氷山、そして拘束された野盗をみて動揺していた。
ざわめきが収まらない中、村長のジンが前に出て口を開く。
「皆よく聞いてほしい。今私たちがしなければならないのは、この者達の処遇について話し合い、そしてきちんと私たちの手で始末をつけることだ。ブラックドッグ君はこれほどのアンデットを一人で倒し、野盗を誰一人殺すことなく捕まえてくれた。ただの一人も負傷者を出すことなく、だ。これ以上客人の手を煩わせるわけにはいかない」
ジンの話を聞き、最初は戸惑っていた村人は皆一様に耳を傾け、そして野盗の処遇について考えを巡らせた。
一拍置き、ジンは再び話し始める。
「皆に問う、今回の件、野盗達は殺すべきだと思う者、挙手をしてくれ」
そうジンが問いかけると子供を除いて、村人たちは皆挙手していた。
まだ状況が呑み込めていないのか下を向いている者もいるが、反対はしていないようだ。
そんな中、縛られてうつ伏せに倒れていた野盗が上半身を逸らせ、村人たちを睨みつけながら叫び出す。
「ふざけるな、この糞どもがっ! お前らはいつもそうだった! 俺の事なんか虫のようにしか思ってねぇ! いつもいつも俺を責め立てて、俺を心配する奴なんて一人もいねえっ! 挙句の果てには村から追放までしやがった! 自分たちが悪いことしたなんて微塵も思っていねぇんだろ!」
「黙れ! お前はただの穀潰しだっただろうが!」
「気に入らないと文句をつけて暴力を振るっていたのはあなたでしょう!」
「村追放されたのだって、お前がササルのとこの婆さんを殺したからだろ! 」
野盗の男が声を上げたが、火に油を注いだ結果となり、野盗の断罪は村人達の総意となった。
話を聞く限り、今声を上げた藍色の髪をした体格のいい男が元村人のバルガだろう。
「……では野盗達はここで始末することとする。武器を持った男衆はここに残ってくれ。その他の者は子供を連れて村へ戻っているように。それとクロウ、お前はどうする? 残るか?」
「残ります」
「……そうか、分かった。では__」
ジンの指示によって村人たちは村へ戻り、残ったのは私と野盗達、クロウ少年とサラクを含めた男数名。
当然野盗は騒ぎ散らしているが、残った村人たちは皆一様に静かだ。淡々と自分が担当する野盗の後ろへ向かい、殺すために精神を落ち着かせていた。
クロウ少年はこの場に立ち会い、バルガの死を見届けるのみで、バルガの始末はサラクが行うようだ。
「バルガ、最後に聞くがクダリの奴を何処へやった」
「……」
「……お前らの拠点は何処にある! 答えろ!」
「……」
サラクの問いに対し、バルガは沈黙したまま震えていたが、耳を澄ますと何か言っているようだった。サラクが頭を上げさせると、聞き取りづらいが声は聞こえるようになる。
「……あいつは俺に毒を使いやがったんだ殺されるとおモった、んだあじとはもりのおくの崖ノしたとまらなかったんだあいつが悪いんだよはこぶのも大変だったんだよ何がわるかったんだぁ、あ、ガキがいるのは分かっててただからあんでっと共をはなって、て、どうようシタとコろをををををををこころころここここ」
明らかに言動がおかしいバルガにここにいる全員の視線が集中する。
サラクがバルガを仰向けに体を返すと、首から提げていた二つの魔道具の内一つがどす黒く瘴気のようなものを発生させている。
瞬間脳裏にクロウ少年から聞いた、ギギラという男とバルガの会話が浮かんだ。
『ほい、アンデットを集める魔道具とアンデット除け、あと保険ね。』
バルガが首から提げている二つの魔道具の内一つはアンデット除け。
保険、というのが魔道具なのはもうほぼ確定だろう。
となると問題なのはあの魔道具がどんな効果を有しているのかだ。
直後、野盗達が身に着けていた魔道具が、バルガの持つ魔道具と共鳴するようにどす黒く瘴気を発生させる。
「一旦離れて!」
私は村人達に叫び、全員を一旦《封緘》で保護しようとするが、野盗達とは別の、妙な気配に動きを止め振り向く。
そこにあるのは氷漬けになったアンデット達だけ。アンデット達は微塵も動いていない。
だがアンデット達の身体もまた、魔道具と共鳴するようにどす黒い瘴気に包まれていた。
「一体何が……」
野盗達が突如苦しみ始め、体から何かが抜けていく。その何かはアンデット達からも一斉に放出され、バルガの肉体へ吸収される。
私の体からは何も出ていないが、体の奥で何かが引き寄せられる感覚がある。
「まさか……」
周囲のアンデット達と、魔道具を身に着けていた野盗から強制的に魂を集め、無理やり一つの肉体に詰め込んでいるのか。
これは……あまりにも……
「惨い…」
「おおおおおおおおおおおおぁああああああああああっ!!!!」
一人の肉体に約二万の魂が詰め込まれ、精神を、そして肉体を変容させていく。
発せられる叫びはバルガの苦しみによるものか、数多の魂のものか。
最早自我無き獣の咆哮は消えることなく、夜の草原に響き渡った。
ここまでお読みいただき、有難うございました。
感想、評価、ブックマーク等していただけたら幸いです。




