10.墓氷
誤字脱字、誤用などありましたら申し訳ありません。
宜しくお願い致します。
野盗たちが村に襲撃を掛ける半日前___
「村の皆を能力で隠す? そこそこ人数はいるが、可能なのか?」
「可能だよ。ただ、村の命運を私に委ねることができるかどうかが問題なんだ。村人全員に私を信用してもらわねばならない、それも夜までにね」
私は村の窮地に突然湧いて出た怪しい子供、明らかに普通ではない強さ。怪しさ満点である。
信頼関係を築くには些か時間が足りないため、二人に動いてもらうことにする。
「説得、頼めるかい?」
「はい!」
「……本当に村や村の皆に被害が及ばないんだな?」
「無論さ。約束する、絶対に被害を出したりはしない。全力で守らせてもらうよ」
自信ありげに、笑って肯定する。
サラクは大きく息を吐き、空を見上げ何か決断したようだった。
「分かった、村の皆への説得は任せろ。元々お前らを信用していなかった俺が信用するって言やぁ少しは聞く耳持つだろう。クロウも一緒に回るか?」
「いや、二人で回るより分担した方が早いよ。俺は村の南側を回る」
「……本当に、見違えたな。少し前までは目の前の事柄への対処を取り敢えずこなしているだけだったが、今は先を見据えて行動できている。……もしかして__」
そこで話を区切り、サラクはクロウ少年に何か耳打ちし始めた。
何かを言われた少年は突然茹だったように顔を赤くし、「そんなんじゃないよっ!」と否定していた。
コホン。
私は咳払いをして、作戦の説明を始める。
「作戦を伝えておくね。簡単に説明すると、村の外でアンデット達を引き付けて、野盗が確認できる位置にいるなら捕縛。いなければアンデットを全て行動不能にする。どのみち村には誰一人としていないわけだから、怪我の心配する必要はないわけさ」
「なる程な、アンデットは生者を追い回すから村に誰もいなければあんたを律義に追うわけか」
「その通り」
嘘である。
だが地下施設を脱出してから私がアンデットに襲われたことを考えると、アンデットからすれば、他に生者が居ないのなら私に向かうという感じなのだろう。
であるなら、あながち完全な嘘というわけでもない。
同じ場所で出現したアンデットがクロウ少年に向かっていったのは魔道具とやらの性質によるもので、例外と仮定した場合の推測に過ぎないが。
どのみち村人全員を保護するため、結局アンデットは私に集中することになる。
「だが敵の大雑把な数も分からないんだろう? いくらあんたが強いとはいえ、長時間の戦闘は厳しいんじゃないか?」
「確かに……昨日のアンデット五百体は斥候用と言っていましたし、今回は千や二千を超えてくるかもしれません。それにアンデットはかすり傷が命取りになりますし、流石に体力が持ちませんよ」
「大丈夫、私は特殊なスキル持ちでね。体力勝負は望むところさ」
アンデットなので睡眠も食事もとる必要が無く、疲れもしないし夜も戦える。
だがそれを伝えるわけにはいかないので、スキルのおかげという便利な言い訳をしておく。
「それにアンデットとの戦闘は、私の得意分野だからどうか安心してほしい」
そう言って二人を説得し、私は見張りに戻った。
本当はもっと楽に事を済ませる方法はある。
そもそも野盗がアンデットを呼ぶのを待たずに、魔道具を奪うか野盗自体を行動不能にすればそれで終わりなのだ。
そうしなかったのは私のわがまま。
考えたのは魔道具が私、もしくは村人では起動できない可能性と、奪う際に魔道具が破損する可能性だ。
その場合、呼ばれなかったアンデット達は私のあずかり知らぬところで、ずっと縛り続けられるかもしれない。未来永劫救われない可能性もある。
そんな可能性はあってはならない。
そのわがままが、傷一つなく村人全員を助けると決めた一因だ。
「夜が待ち遠しいね」
*
そして現在。
最後の野盗を《封緘》で捕獲し、アンデット達が戻る前に魔道具を確認する。
魔道具は既に役目を終えたのか、赤く発光していた魔道具は沈黙していた。念のため魔道具は回収しておく。
村への被害はゼロ。野盗は全員捕獲済み、村人も全員保護が完了している。
残るはアンデット達の対処のみ。
敵はもうすぐそこまで接近してきている。
まるで此方を押し潰すように迫りくる気配を受け、背後を振り返る。
まだ距離はあるのに視界はアンデット達で埋め尽くされ、数えるのも馬鹿馬鹿しい程の圧倒的な物量が、早く肉を食わせろと言わんばかりに迫ってきている。
到底千や二千では利かない程の数。前世でもこんな大量のアンデット達を相手にしたことはない。
「……多すぎやしないか」
遠くからアンデット達が出現するところを見ていたが、改めて近くで見ると、まるで山が意思をもって此方に襲い掛かってきているように錯覚してしまう。
接近戦で一体ずつ対処していくこともできなくはないが、今回は野盗の事後処理も行わなければならないので、村人達へ配慮して早めに済ませることにする。
使うのは《氷魔法》のスキルのみ。私は足元から氷柱を発生させる。
氷柱の形はほぼ円錐形で、小さな氷山と言ったところだ。
地上二十メートル程の高さからアンデット達を見下ろす。
アンデット達は氷山に手を掛けて登ろうとするが滑って上手く登れていない。だがそれでも仲間を踏み台にして頂上に到達するのも時間の問題だろう。
私は氷山に手をつき、再び《氷魔法》を発動させた。
今度は氷山を伝って冷気が広がり、冷気に触れた物体が凍りついていくイメージで魔力を送り込んでいく。
氷山に触れていたアンデットは凍り付き、凍ったアンデットに触れた者たちがまた凍る。
流石に数が多すぎてアンデット達が頂上へ迫ってきたが、この戦法なら数は最早関係ない。
アンデット達が頂上へ近づく度、私もより高く移動すれば良いだけの事。魔力量のゴリ押しで氷山に纏わりつくアンデットごと凍らせて、一回り大きい氷山を形成する。
大概な脳筋戦法だがこれが一番楽で手っ取り早い。アンデット達の身体も必要以上に痛めつけずに済むし、死体が辺り一面に散らばることもない。
「どこまで高くなるのやら」
私は眼前に広がるアンデットの大群を見て嘆息した。
吐いた息は白くならなかった。
ここまでお読みいただき、有難うございました。
感想、評価、ブックマーク等していただけたら幸いです。




