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借金で売られたけどSR旦那引きました。ただしヤンデレ。  作者: からん


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4/11

エドワード・ミリオンという男

「仕事教えるってどうするんですか、女職員呼びます?」


「駄目だ・・・・!!!女はすぐに結託する!」


エドワードは唸るようにそう叫んで机へへばりついた。広い机は書類で埋まっており、衝撃で何枚か宙へ舞う。エドワードはその内の一枚を見て、これは支店で処理、と別の場所へ置いた。


「仲良くなるならいいのでは・・・?」


「シスターフッドなんて認めない!僕より仲良くなられると困る!」


首を傾げるエドワードよりも大きい男は、ミリオン商店で長年エドワードの右腕をしているナタン。駄々をこねるという言葉の似合う男の頭を呆れたように見下ろしつつ、彼が最近迎えた嫁、ステラの教育係の提案を続けた。


「・・・男はもっと駄目なんでしょう」


「当然だろう!!ミセスドーリーみたいな厳しい女教師はいないのか!」


「ミセスドーリーって小説じゃないですか。しかもあれ貴族の家庭教師っすよね!」


茶々をいれるようにそう言ったのは書類のサイン待ちをしていたセノと呼ばれる男で、本来ここへいるはずのない男だ。へらへら笑ってエドワードをイラつかせるのが得意なのであまりこの本店へは呼ばれない。呼ばれはしないのだがふとした瞬間いるのでお馴染みといえはお馴染みのメンバーである。


「うるさい、うるさい!僕の仕事に同行させて実地検分で僕が教える!」


これで問題ないだろう!と胸を張るが、部下たる男たちは一様に白々しい視線を向けた。


「奴隷商に奥方連れて行くのいいんすか」


「黙れ黙れ!奴隷商ではない!人材派遣だ!貧しい農村から送られてくる子供を適切に!商人の許へ弟子入りさせるだけだ!」


「元々奴隷・・・あぁはいはい」


エドワードが真っ青になって、再び机に突っ伏してしまった。やはり何も知らないステラをいきなり引っ張りまわすのは無茶があると思い直したらしい。エドワードは自信をもってクリーンは商売をしているとはいえない。真っ当ではあると思っているが、貴族として気高く、高潔で繊細なステラが現実を直視してしまったらショックで倒れてもおかしくない商売だってあるのだ。


「・・・いや、奥方結構図太そうですけどね」


「僕よりステラをわかってるような口を利くな」


「はい。とりあえず、奥方に怖がられそうなゴンザレスを教師につけたらどうですか」


ナタンの進言にエドワードは顔を上げた。反射的に男だろう!と言いかけたが名前があがった男は彼が信頼する部下の一人だ


「・・・奴は無口だったな、いやまて彼女が強面好きだったらどうするんだ、でかくて分厚い筋肉が好きだったらどうするんだ、並んで俺がひょろひょろ頼りないようにみえたらどうするんだ!!!」


「いやいや、安心してくだせぇボス、あんたの顔は一級品ですよ。体格だって十分だ。女はそもそもでかい男を怖がるもんです」


「ステラは人を顔で判断しない!!」


「今日情緒不安定っすね、誰か奥さん呼んできてー!」


ナタンとセノの声に耳を貸さず床を転がらんばかりに書類をまき散らすエドワードに、二人は慣れた様子で対応した。ドア前にいた護衛の男もやれやれ、と言う顔で頷いて退室した。足音が離れていったので、きっとステラを呼びに行ったのだろう。


そして別室にて。

初めて訪れたミリオン商店の本店。

エドワードの仕事を知りたい、とリクエストしたステラはさっそくアリサとともに見学にきていた。そもそもエドワードの職場がどこかもよくわかっていなかったので気になる、と言ったことが原因である。


ミリオン商店始まりの拠点である本店は小さくて古い。立地もあまり良くないと言えるだろう。他に支店が職種の数だけあるということで、ステラはまだその種類を把握していない。


「仕立屋からはじまって宝飾品、各種職人の確保に、農業まで?本当に手広いわね」


「小規模なものも多いですが、ミリオン商店を窓口にすればなんでも対応できるよう手を広げてきたのですよ。かくいう私も元はミリオン商店お抱えの御針子です」


「御針子からメイドへ?面白い転職だわ」


アリサの言葉を聞きながら部屋いっぱいの煌びやかな衣装の数々を眺める。初期のころからある古びた衣装ではあるが劇団などから需要はあるらしく今も大切に保存されているようだ。ステラはこっそり昔自分が売った衣装なんかもあったりして、と思った。


「ステラ様、エドワード商会長がお呼びです」


「すぐ行きます」


ステラからすると最近顔を覚え始めた護衛の人だった。彼は二人に声をかけて、すぐ踵を返した。後を追って三階から二階へと降りる途中で、もう一人大男に声をかけ合流した。ステラの知らない男性で、この人も護衛だろうかと考えていた。


エドワードのいる部屋へノックもなしに戻りました!という掛け声とともに入室し、ステラたちが姿を現すとバサバサと書類が倒れる音がした。


「あらあら・・・大丈夫ですの」


「へ、平気だ・・・処理済みのものばかりだからな」


「平気じゃないっすよー!提出するのにぃ、あ、動かんといてください踏んだら書き直しになるっす!」


セノの不満の声にアリサが素早く床に散らばった書類を拾い出し、ステラも続いた。立ち尽くしていたエドワードがそれに気づいて慌てている。結局全員で書類を片付けてから、仕切り直しとしてエドワードの前にはずらっと屈強な男たちが並んだ。揃いのスーツはミリオン商家の証だ。


「セノとナタンの顔だけは覚えておいてくれ、基本的に僕の仕事についている」


「はい」


「ステラが僕の仕事を学ぶといっても!いきなり連れ歩くことは!できないっ!」


「承知してますわ」


ひどく悔しそうに、仕事で常に女を連れているのは威厳に関わる場合があると言われた。ステラも納得している。そこまでのレベルは最初から求めていない。どちらかというと女が必要になった場合に即時対応できるようになっていたいというのがステラの気持ちだ。貴族的な対応は多少理解できるが、ミリオン商会代表の妻としての対応がわからない。


「そこで、教育係兼護衛としてゴンザレスを君につけることにした」


「あらあら、よろしくお願いいたします。ステラです」


のっそりと大きな黒い塊が小さく頭を下げた。途中で合流した大男だった。ステラは小さく頭を下げてにこやかに対応したのだが、それをみてエドワードは若干不満そうだった。


「この商会では職員のまとめ役だからすべての部門に通じている、なんでも聞くといい」


「まぁ、そんな。忙しいんじゃありませんか」


「俺は最後のケツモチみたいなもんで、いえ・・・部下が優秀ですので」


下品な言葉を使うな、というようにエドワードから睨まれてゴンザレスは少し語尾をすぼめつつ言葉を改めた。大きな身体を縮こませている姿に、怖い人ではなさそうとステラは胸を撫で下ろしつつ、エドワードへ再び視線を向ける。


「では、ステラはアリサとゴンザレスから離れずにいるように。この本店でなら自由にして構わない。書類関連はゴンザレスの許可をとって閲覧してくれ」


「色々ありがとうございます、エドワード様。この後ご予定は?帰宅は一緒になります?」


「会議がある。もちろん一緒に帰宅するのでここで待っているように」


ステラの言葉にいつも長引く会議をとっとと終わらせる決意をしたエドワードがそう言い切った。ナタンは会議が荒れそうだな、と思ったが行儀よく沈黙を貫いた。ちなみにセノは面白がって口元が若干持ち上がっていた。


「よろしくお願いいたします。ゴンザレスさん、さっそく質問しても?」


「・・・できるだけお答えします」


そんな風に和やかな雰囲気でステラたち三人は部屋から退室していった。


扉が完全にしまったことを確認すると、エドワードは瞬時に脱力して再び机へ突っ伏した。さながらスライムのような状態にナタンとセノは先ほど書類をどけておいて正解だったなと思っていた。


「・・・・ゴンザレスに嫁はいなかったな」


「ゴンザレスはボスの女を取る男ではねぇです。安心してください」


「万が一がないと言えるのか・・・!」


「万が一があっても口の堅ぇ奴なんで!ボスの悪行ばらしたりしないっす!」


「悪行!僕のどこが!・・・いや、黙れ、何も言うな!」


しらっとした二人の視線にエドワードはうずくまりながら吠えた。ナタンとセノは会議の書類を纏めているが、肝心のエドワードがすることは終わっているので口ばかりがよく動く。後は書類を抱えて会議室へ行くだけだ。


ステラが傍にいることでエドワードがいつもより五月蠅い気もするが、エドワードは息抜きが下手なので悪くない傾向だと右腕たるナタンは考えている。会議だって早く終わるならそれに越したことはない。


そもそも、今までもステラの情報は常に取得し続けていたのだ。

本人が傍にいることで態々遠くから見張りや監視をしなくてもよくなるなら、部下としてはずっと楽になる。


「そういえばナタン、彼女の勤めていたパン屋の件は」


「はい、部下に彼女がミリオン商会に嫁いだことをパン屋へ知らせました。また、アリサの口から奥方へも報告しています。何も言わず突然辞めたことを気にしていたようなので」


「問題がないならいい・・・あのクズのことは」


「そちらは処分が終わってます。隣の農場へ頼みました」


坦々と、しかしわずかに声を潜めて報告した。

エドワードは詳細を求めなかったが理解しているだろう。


クズ、と名前さえ呼ばれなかった男はステラの勤めるパン屋の客だった。

ステラが顔を覚えているかもしれない常連客で、家族で食べる一斤を買って帰るだけの存在。それだけならきっとエドワードは気にしなかっただろうが、その男はステラに懸想していた。そればかりでなく、ステラは自分に気があるはずだと言い出し、話はだんだんとエスカレートしていった。


俺の恋人だ、という虚言でさえエドワードは監視の部下を倍に増やしていた。

俺の女を仲間内で共有させてやろう、というくだらない冗談でステラの前からその男を消すことに決めるのは一瞬だった。


なんてことはない。近くに広い農場があるのでそこの管理人に男の処遇を依頼しただけだ。

もちろん暗殺依頼など物騒なものではない。ただ男にこの街から去ってほしいと言うだけだ。男を見つけてとらえた後、その男をどうするかは管理人の意志次第で、果たしてどうなっているかはエドワード達の関与するところではない。


エドワードは、何年もずっとそんな、つかず離れずという干渉をしていて、そのどれもがステラに気づかれぬよう行われていた。付き合わされている部下がじれったく思うのは当然だった。


ナタンは、ステラを誘拐してしまえばいいのにと言った。

セノは、娼婦にまで落として買い取ればいいのにと言った。

アリサは、適当に運命の出会いでも演出すればいいのにと言った。


そのどの提案も飲まず、エドワードはもう少し彼女にふさわしい商会にするだとかなんとか言って直接ステラと接触するのを避けてきた。そうして長年丁寧に見守ってきたくせに、結局やったことは借金の形として囲い込むこと。


あまり理想的な出会いでなかったせいで、ステラに嫌われているのではないかとうだうだと悩む始末。


遠くから眺めるばかりで実際にステラと接触していなかったものだから、強引に嫁にした後、どうしたらいいかもわからず手をこまねいているのがまた、ナタン達に頭を抱えさせた。


(今日奥方を見た感じ、感触はよさそうなんだが・・・)


ナタンは、先ほどの怯える様子も変にエドワードに強い物言いをしたりしないステラを見て、いい関係が築けそうだと判断した。問題があるとしたら八割我らがボスであるエドワード側にある。


「さぁボス、会議室へ」


「もう支店長らが集まってるっすよ~」


「はぁ~・・・コーヒーブレイクができるぐらい迅速に終わらせてやろう」


期待してます、と言いながら気合の入ったエドワードへ追随した。先ほどまで書類をまき散らしながら机へ懐いていたとは思えない姿だ。ステラに対しての挙動がおかしいだけで、きっちりと仕事ができる男なのだ。そうでなければ商会をこれだけ大きくはできない。


ナタンたちも背筋を伸ばして気合を入れた。


ヤンデレであってる?って書きながら思ってる。

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― 新着の感想 ―
ヤンデレってパーフェクトな外面からはいきなり想像もつかない執着と病的な想いを拗らせた発言をしだすキャラクターをよく見かけますが、こっちはなんか「お父さんは心配性」を思い起こさせるコメディ風味ですが………
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