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選ばれぬ王、選ばれし愛  作者: りむ
第2部
33/39

2-4



「ミスラン。寝ているのか?」


私を呼んでいる声に目を覚ました。

目を開けると1人の男が私の顔を覗き込んでいた。


「……もう!夏桀かけつ寝ている人を起こしてはなりません!」

せっかく気持ちよく寝ていたのに!

刈り終えた干し草の上で太陽の光が気持ちよくうたた寝していた。


「そうは言ってもお前に相談している最中なのだぞ。寝るのは後だ!もうすぐ都が出来る!先代から夢見ていた都だ!」

夏桀は嬉しそうに地面に広げた都の設計図が書かれた巻物を見せてきた。


太古の昔、龍の国で初めての世襲制の王朝が出来たばかりであった。その王朝の名を「」であった。


時の神から人々が生まれてから数百年、17代目の王を夏桀は勤める。17代といってもほとんどの代はまともな王朝ではなく、代表者の時代が長かったのである。そしてやっと都の建設まで辿り着いたのだ。


人々を支えてきたミスランはそろそろ自立してほしいと考えていた。


「いくら神といえど、都の建設にまで携わるのは疲れました…。それくらい人間達で考えなさい。私は寝たいのです!手伝って欲しければ葡萄を持ってきなさい!」


「また我儘をいう…お前の好物の葡萄はこっちではあまり手に入らぬのだ。砂の国にまでとりに行けと申すのか?」


「もちろんよ!葡萄が食べれれば何でもいいのです!えぇい働けー!」

ミスランは、夏桀の背中をポコポコ叩いた。

それを笑いながら夏桀は避ける。


この小さな国の王を支えた日々は穏やかであった。


私は一度龍の国を離れる事にした。自立して欲しいというのは本当で、何もかも女神が決めていては本当の意味で成長できないからだ。


夏桀に、しっかりと勤めるのですよ。と言うと笑って見送ってくれた。


そして、もう一つの国に向かった。

風の狼の国である。

草原を空を飛びながら散歩中、巨大な魔獣が苦しんでいるのを見つけて助けてあげたのだ。


そして気づいたら大きな国が出来上がっておりその王があの狼であった。


クルトを取り囲む人間達は尊敬な眼差しを向けていた。


こちらの国では力のある物が王となる。分かりやすい構造は龍の国よりも統一感がある。


私はクルトの背中に空から近づき飛び乗った。

「クルト!」

「ん?ミスランか。お前は相変わらずいきなり来るな。」

クルトの背中に抱きつき癒される。この大きなモフモフに包まれると自分が時の神から与えられた使命を忘れれるのだ。


―人間を支え、導きなさい。


そう言われて私は生み出された。

なんともざっくりな使命であるが、それを私はずっと守っていた。


クルトから匂う、草原の花の香りが好き。私を甘えさしてくれて包み込んでくれる彼は私の中で掛け替えのない存在へとなっていく。

人間を守る使命からクルトの側にいれば開放されるのだ。


クルトのあの赤い瞳を見ていると安心する。


「ミスラン。お前を支えるためには俺だけではいけない。お前を守れるよう国を作った。人間達の成長を俺たちで見守ろう」

とクルトに最初言われた時驚いた。


けど、彼の言っていた意味がわかった。人間達は貿易を行い、経済という概念を形成していく。

一つの国だけではだめなのだ。世界全体で人々は行きかい動かしていく。

そうして文化は花開いていく。


クルトは、私に帰る場所を作ってくれた。


ずっと彼と人間達の成長を見ていくんだと思った。


けど、突然人間達は争い出した。富が生まれたら今度は格差ができた。

その格差を埋めようと争い出したのだ。無い物は奪う。それが一番手っ取り早いのだ。


そして、人々は乞う。絶対的な善なる王を…


私は龍の国に戻った。争いを起こしている元凶だからだ。


そこで私は知ってしまった。自分の間違いに。


「ミスラン。俺は愛する女が出来たんだ」

夏桀の隣に怪しい女がいた。


夏桀は変わってしまった。政治を怠りその女と遊んで暮らしていた。どんどん国は乱れ、貧しくなっていく。その貧しさを他の国から富を奪おうと争い出したのだ。


何故きちんと見ていなかった。

時の神から言われていた使命を怠ってしまったからなのか。


女は末喜ばっきと名乗った。

女はおかしな嗜好があった。

池に酒を満たしその周囲を肉を吊るした。そしてその上を船を漕ぎ遊び耽った。


最高級品の絹を引き裂く音が好きで、その音を聞いた時だけケラケラと笑った。夏桀はその笑顔を見たいがために民が食べるものも困っている状況の中、絹を取り寄せ破り女の為に贅を凝らした。


夏桀が、どんどんおかしくなっていく。

そんな気がした。


絶対的王を決める、その決定で全てが良くなるのなら…


民を思い都の建設に意気込むあの純真な笑顔の夏桀に戻ってほしい。

私は夏桀に目を覚まして欲しくて誤った選択をした。

世界の王に夏桀を選んでしまったのだ。


その瞬間、女は初めて私の側にきて耳元で囁いた。


「姉様、あなたが作った世界何度でも潰してあげる…!」


女は人間では無かった。

時の神はもう一つの神を作っていた。


悪の女神アングラだ。太古の昔から私が築き上げていたものを潰していく存在。


アングラはある役割が与えられていた。

光の女神の負の感情を吸収する。その事によって光の女神は純白でいれるのだ。また世界の憎しみ、悲しみ、怒りを一身に受け止める事。


それがアングラの使命だった。

だが、時の神は見誤った。

光の女神の苦悩や人々の負の感情は想像以上にアングラを汚し、力を与えた。


人々の終わりである永遠の死をアングラは苦痛を伴う方法でとりだした。


人々は泣き叫び逃げ惑い、殺し合った。


その負の感情をかき集め世界を血の海に変えていった。

全ては悪の女神を汚した人間達ともう1人の女神へのの復讐。

自分だけが汚れた感情を受け止める受け皿になるのは許せないと狂ってしまった。


黒い霧により人々は自我を失い命を刈り取っていった。


それが今の時代にも続いている。

――――――――――――――


「あの人外は人間を苦しめ続ける存在だ。悪の女神、アングラは呪いの黒い霧を出し続けている。太古の昔と同様に殺戮を繰り返しているのだ。」



エシンはミスランにも詳しく聞き取り過去の話を教えてくれた。


「それじゃあ…その女神を倒さない限りこの問題は解決しないって言うこと?」

「そう言う事だ。だが、あいつは実体が無い。そこが厄介だ。時の権力者の中に入り込み龍の国を操ってる。今回もそうだ。」


あの黒い霧の正体を教えられた今、人ならざるものへの対処を考えた。


「太古の昔はどうやって彼女を倒したの?エシンの前世である風の狼は殺されかけたと聞いたけど…」


そこが気になった。まだその時の話を聞いていない。



「その後、俺は黒い霧と戦い、やつの寄生していた体を倒し弱らしたのだが俺も致命傷を受けた。その後奴はしばらくの期間弱まったんだ。悪の女神は光の女神とは違って影のような存在であるから寄生した体が無くなるといずれ消えるのだろう。」


体を失えば消える。そしてまた、世界の憎しみをかき集めて復活を繰り返してきたとの事だ。


「歴代の王朝に寄生し、あいつは国の繁栄を築いた後その王朝を滅ぼすと言う事を繰り返していた。まるで光の女神の復活を誘うかの様にな。」


「では、これまでの龍の国の歴史上全ての王朝に携わってきたと言う事ですか?」


元徳が驚いた顔で言う。


「そうだ。基本的には龍の国の人間の中にいる。我ら風の狼の国の可汗はやつが力を持たない様、何度も龍の国を攻めたりしていた。そうしてこれまでの歴史が作られていった。」


突厥が昔から龍の国を襲っていた理由が分かった。

政治的にもそうだが、悪の女神を何度も倒しては消していたのだ。

そして時間が経てば復活する。その繰り返しなのだ。


「何故光の女神は、その間出てこなかったのですか?それに何故時の神に殺されたのです?」

元徳が聞く。


「……それはミスラン。お前が話してくれるのだな?」


エシンが問うと、

突然光出し、チェンシーはミスランの姿へと変わった。


「…ええ。話すわ。」

一言静かに言った。




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