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第93話 二刀流

本日三話目の投稿です

 放課後、疲れを隠し切れてないレイは、グラナートから注がれる視線に耐えきれず、俯いたまま立っていた。


「お母様、レイの授業見に来たんでしょ?」

「えぇ…」


 呑気にベンチに座って尋ねるブレアに、レイは律儀に返事を返す。

 午前のハル同様、予想通りフィーネがレイのクラスへ顔を出した。

 常に注がれるフィーネの視線に、レイの緊張感はピークを迎え。

 僅か3時間でレイの体力はすべて持っていかれることとなった。

 目の前に立ち竦むレイを見て、グラナートは考え始める。


「あの、」

「今日は、二振り出せ」


 何も言わない事を不思議に思い口を開いたレイの声を遮りながら、グラナートは指示を出す。


「え?」

「魔術刀だ。二振り出せ」

「は、はい」


 腕を組み、見下ろしてくるグラナートに、少し威圧されながらレイは魔術刀を二振り具現化させる。

 両手に一振りずつ握られた魔術刀を眺めながら、グラナートは低い声で自分の意図を伝えていく。


「お前の使いたい技は、今のお前には負担が大きすぎる。だから、二振りの魔術刀で反動を分散させろ」

「反動を、ですか」


 自分の持つ魔術刀を凝視しながらレイは呟く。

 頷き、レイから少し距離を取るグラナートを見つめながら、ブレアの隣に座るハルは声を漏らす。


「二刀流か」

「問題あんの?」


 特に指示もないため、暇を持て余していたブレアはハルの言葉に反応し、声をかける。

 ハルはブレアを横目で見ながら解説していく。


「レイは、基本二刀流は使わない。腕力の問題もあるが、二振りとも具現化し続けるのはある程度負担があるからな」

「へー」


 大気中の魔力を使っているとはいえ、刀を形作っているのは紛れもなくレイの魔力によるものだ。

 それを二振りも動き続けながら維持するというのは、一振りだけの時よりも遥かに大きな負担を抱えなければならず、戦闘には向いていなかった。


「何か考えがあるんだろうが……」

「大丈夫でしょ」


 大して興味もなさそうに言葉を返すブレアに、ハルは眉を顰める。

 そんなハルの様子を気にすることなくブレアはレイに視線を注ぎながら言葉を漏らす。


「レイは、芯が強いからな」


 共有した時間が少なくとも、培った洞察力でレイの性格を見抜くブレアに、ハルは驚愕し、訝しみ、少し嬉しそうに笑った。


「……そうだな」

「お前、忙しい奴だな」


 表情がすぐに変わるハルを見て、ブレアは呆れたように囁く。

 2人が視線を向けた先では、レイが魔術刀で宙を舞う桜の花びらを切りつけていた。


「集中しろ。お前のその刀を同時に、寸分たがわず当てるんだ。集中しろ」


 忍耐力、集中力、正確さ。

 今のレイに足りない物を叩きこもうと与えられた訓練に、レイは苦戦し続けていた。


「うっわ……、俺でもできるかわかんねぇ……」


 暗殺の腕においては最強、と豪語するブレアが、グラナートのやり方に少し引き気味で声を上げる。

 だが、ハルは心配する様子もなく、ただレイを眺めていた。


「……はあ!」

「まだだ。左が遅い」


 厳しく、だが正確にレイを指導するグラナートは、レイの弱点を、欠点を、躊躇うことなく彼女に突きつける。


「風を読め。魔力の流れを読め。お前のその魔術刀から与えられる情報を、全て読み解け」

「……っ!」


 レイの息は上がり、魔術刀を振るう腕は痙攣し、頬には汗が伝っていた。

 その日、レイが花びらの軌道を読めたことは、一度もなかった。




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