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第85話 遭遇

本日五話目の投稿です


「なんだアレ」

「アレが、俺達の母親だ」


 テラス席にて、落ち着きを取り戻りつつあるハルが、アルフの疑問に答える。

 ゆっくりと紅茶で喉を潤す2人に、ティアナは心配そうに顔を歪める。


「でも、予想以上に……」


 フィーネを目の当たりにした感想を告げようとテレサは口を開くが、言葉にできないもどかしさで体を捻る。


「その、お母様は今のが素なの……? 魔術とかでなく?」


 テレサの苦しみを理解できたティアナは、違う形で疑問を口にする。

 ティーカップを置きながらハルは記憶を辿った。


「俺達の前で、あれ以外の雰囲気を見せたことはないな」


 レイと目配せをしながら、ハルは周りの疑問に答えていく。

 重い空気が漂う5人に、追加の紅茶とデザートを持ったブレアが近づいてきた。


「なんだ、ガキ共。重すぎだろ」


 場を和ませようとブレアは軽い口調で話しかける。

 空のティーポットと小皿を回収しながら鼻歌を歌うブレアに、ハルは溜め息を吐く。


「いいな、お前は」

「あ?」


 能天気さを羨んだハルは、頬杖を突きながらブレアに話しかける。

 ハルの口調に少し機嫌を損ねたブレアは、避けていた話題に触れた。


「母親、どうだったんだ?」


 ブレアが放ったその一言で、回復しかけた場の空気は更に重くなる。

 発言を間違えたことに気付いたブレアは、だが話題を変えずにそのまま突っ走る。


「俺も会ってこようかなっと」

「死ぬわよ!?」


 軽率な発言に、ティアナは立ち上がって止めにかかる。

 テレサとアルフも頷き、フィーネに対して失礼なその態度に、ブレアは引き気味で尋ねる。


「そ、そんなに?」

「そんなに!」


 今まで散々な態度を取ってきたティアナが、自分を間接的に助けようとしていることにブレアは嬉しさを感じつつ、ティアナから距離を取る。


「まぁ、大体は感じてるけど」


 どこか遠くを見るように視線を逸らすブレアに、ティアナは首を傾げる。

 ハルは紅茶を継ぎ足しながら、近づいてくるグラナートに気付いた。


「お、」

「あの女性がお前の母親か」


 ハルの言葉を遮りながら尋ねるグラナートの表情は、普段より割増しで硬いものであった。


「着物着てたならそうだ」

「……そうか」


 ハルから視線を外すグラナートに、何があったか察しのついた5人は、無言で同情するように視線を向ける。


「1週間、頑張ってくれ」


 謎の応援を残して去るグラナートを、レイは見つめる。

 自分の前に置かれた1つのマカロンを一口で食べ終わり、レイは立ち上がった。


「レイ?」


 突然立ち上がったレイに6人の視線が集まる。

 だが、レイはそれを気にすることなく走り出した。


「おい、レイ!」


 妹の行動に驚愕するハルの声に振り返ることもなく。

 レイはグラナートの後を追い、その名を呼んだ。


「グラナート、さん!」


 近づいてくるレイに気付いたグラナートは、足を止めた。

 テラス席から見えないその場所で、グラナートは真っ直ぐレイの前に立つ。


「なんだ?」


 目の前に立つとフィーネ程ではないにしても威圧感のあるグラナートに、レイは一歩下がりそうになりながら、拳を握り、声に力を込めて告げた。


「付き合ってくれませんか?」




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