第46話 決着
重要な話になりますので、本日更新分を未読の方は、第44話からお読みください
「我の導に従い、その力を示せ! 天舞鳳凰!!」
体を起こしただけで、何の構えも間に合わないアルフに向け、レイは鳳凰を放つ。
「クソがぁあぁ!!!」
アルフは鳳凰を真正面から受け止め、後ろへ大きく飛ばされる。
その強靭な身体に切り傷を付けながら、鳳凰はアルフを幼馴染2人の転がる場所まで吹き飛ばし、消滅した。
「ティアナさん!!」
レイはハルが引きつけるゴーレムの前へ走り、ティアナの名を叫ぶ。
それを合図に、ハルはゴーレムの前で立ち止まり、1秒以下の足止めを。
その間に、ティアナはレイへ走り寄る。
「蔦ァァァ!!!」
最後の力を振り絞り、ハルは魔術を発動させる。
僅か1本の蔦はゴーレムの首へ絡みつき、後方へ引っ張る。
しかし、簡単に引きちぎられたそれはそのまま消滅し、ゴーレムを激昂させた。
レイは魔術刀をティアナの方へ向け、低く構える。
その刃にティアナは助走をつけて跳び乗った。
「くっ、あああああ!!!」
全ての力を込めてレイはティアナをゴーレムへと投げ飛ばす。
歯を食いしばり、足を痛めながら、レイは魔術刀を振り上げ、ティアナを送り出した。
「*****!!!!」
言葉にならない言葉を叫びながら、ゴーレムはハルへ手を伸ばす。
そんな怪物に、ティアナは叫んだ。
「戦の女神!! アテナ!!!!」
掌を上に向けたティアナの右手に、巨大な槍が握られる。
ゴーレムが再度生成された時点で、ティアナの魔力はほぼゼロだった。
(でも、ゴーレムにトドメをさせる程に強力な魔術を使えるのはこの人しかいない! だから私は!!)
「逃げ回りながら、魔力を回復させたのか!?」
ティアナの魔術に、アルフは大きく眼を見開き、驚愕に震える声で叫ぶ。
その声に、ティアナはニヤリ、と一瞬笑い、ゴーレムを睨みつけた。
「これで、終りよ!!!」
「*****!!!!」
目の前に飛んでくるティアナの姿に、岩石の怪物は、格闘場中に咆哮を轟かせる。
しかしティアナは止まることなく、ゴーレムへと攻撃を繰り出した。
「はあああああ!!!!」
そのか細い腕で、2メートルを超える槍を、ゴーレムの心臓へ向けて投げ飛ばす。
放たれた槍は、光を放ちながら真っ直ぐにゴーレムの胸部へ向かい、心臓を貫いた。
「******!!??」
要を貫かれた衝撃に後ろへ倒れながら、ゴーレムはティアナへと手を伸ばす。
だが、その手がティアナを掴むことはなく、そのまま崩れ落ちた。
「なっ!?」
「そんな!!」
アルフ達は自分の作り出した最強のゴーレムを撃退されたことに、口を開いて愕然とする。
再び敗北を突き付けられた3人は唇を噛み、俯いた。
「……ッ、まだ、だ!!!」
だが、アルフのチームメイトは、諦めなかった。
もう一度、魔力供給を行おうと、冴えないチームメイトはアルフへ右手を向け、魔術を展開した。
「……!?」
ハルは、目の前の光景に、眼を見開く。
もう一度、アルフにゴーレムを創られたら、今度こそ勝機はなく、3人の敗北は決定する。
「先生!!」
東ゲートから試合の全てを監視するテレサとドレットは顔を青くする。
口を両手で塞ぎ、テレサは悲鳴を上げる。
「試合を止めてください!!」
「……っ!」
魔力供給は常に命懸けで行われるもの。
そんなものを短時間で3回も行えば、確実に命を落とすことになる。
そんな自殺行為を止めようとドレットが魔術を展開した、その時だった。
「バカ野郎が」
アルフは、幼馴染2人の襟元を掴み、場外へと跳んだ。
「アルフ……!?」
背中に床の冷たさを感じながら、幼馴染2人はアルフに視線を集中させる。
魔力供給を解除しながら、幼馴染は戸惑いの声を上げた。
「何すんだよ!!?」
「俺は、こんなところでお前を失いたくねぇんだよ」
場外へ投げ出した体を起こすことなく、アルフは小さく呟いた。
その言葉に、チームメイトは大きく眼を見開き、涙を流しながら唇を噛む。
「……ッ!」
「バカ野郎が」
もう一度、同じ言葉を吐くアルフに、幼馴染2人は、ようやく、諦めたように肩の力を抜いた。
「……しゅ、終了!! アルフ選手自ら、チームメイトを引っ張り場外へ跳びだした!! これにより、魔術格闘祭決勝戦は、1、2年混合チームの勝利!! 今年度の優勝チームは、1、2年混合チームとなります!!!」
目の前で、アルフの取った行動に呆然とする3人は、司会の声に正気を取り戻し、お互いの顔を見つめ。
そして、大声で叫んだ。
「っしゃああああああ!!!!」
魔術格闘祭、優勝!!
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