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第45話 リミッター

 

(お兄様はもう限界に近い。この人さえなんとかしてしまえばいいのに……!)


 ハルの様子に、レイは歯噛みする。

 まったく歯が立たなくなったアルフをレイは睨みつけ、身構えた。


「さっきまでの勢いはどうした!」


 息を切らし、集中力が途切れたレイに、アルフは容赦なく殴り掛かる。

 魔術刀を砕き、レイの鳩尾を直接殴り、アルフは彼女の体を後ろへ吹き飛ばした。


「かはっ……!!」


 体を飛ばされ、地面へ叩き付けられたその痛みに、レイは大きく顔を歪める。

 

(重い! 一撃だけでも、こんなに痛い……!! それなのに、あの2人は、こんな痛みを抱えながらゴーレムに立ち向かっていたの!?)


 初めてアルフの攻撃をまともに受けたレイは、息も絶え絶えにゴーレムを睨みつけるハルを見上げる。

 その姿に、レイは魔術刀を強く掴み、杖のように体の体重を預けて立ち上がった。

 

(こんな、これしきの痛みで倒れるほど、生温い人生を歩んではいないでしょう……!?)


 眼に涙を溜めながら、それでも強くアルフを睨みつけるレイの姿にニヤリ、と嗤うアルフは手を広げ応える。


「さあ、かかってこい!!」


(……私が役立たずな理由は、2つある。1つ、痛みに弱いこと。今だってすごく痛い。足だって震える。でも、戦えない訳じゃない!)


「はあぁぁあ!!!」


 震える足に力を込め、レイは己を鼓舞するかのように腹の底から叫び、アルフへと走る。

 その姿にアルフは更に口角を上げ、右腕を振り上げた。

 

(私が足手まといなもう1つの理由。それは、私1人では人に対して魔術を使えないこと……! 私の魔術は殺傷能力が高すぎる。制御すれば問題はないはずなのに、どうしてもそれができない! だけど、私はもう役立たずでなんかいたくない!! これは……)


 レイは走りながら魔力へと変換させていた鞘を再度顕現させる。

 魔術刀を鞘へ納め、柄を握り直し、レイはアルフへと叫んだ。


「我の導に従い、その力を示せ! 朱雀乱舞!!」


 ――これは、私の気持ちの問題!!


 レイはアルフに向け、魔術を発動した。

 そしてそのままその場に留まることなく、レイはアルフへ刃を鞘に収めながら走り寄った。


「!?」


 今までになかったレイの攻撃に、アルフは眼を見開き、自分の顔を両腕で守る。

 レイの魔術刀より発生した朱雀は、アルフの両腕に直撃し、皮膚を焼きながら消滅する。

 アルフはそのまま、ためらうことなくそこにいるであろうレイに向け両手を振り下ろした。

 しかし、その攻撃は宙を切るだけに終わる。


「何!?」


 レイはアルフに刃が届く手前で高く飛び上がり、振り下ろされた両手を華麗に躱す。

 鞘を左手で、柄を右手で強く握り、レイは魔術を発動した。


「我の導に従い、その力を示せ! 流鏑馬!!」


 空中から放たれる斬撃を、アルフは背を仰け反り、体勢を崩しながら躱す。

 即座に体を起こし、レイを睨むアルフは、だがすぐに体勢を立て直したことを後悔する。


(3連続で魔術を発動するには、欲張ってはいけない。何もかも当てる必要はない。ただ1つ、最後に決めればいい。だから、これで!)


 アルフの体勢を崩した数秒のうちに着地し、構え直したレイは、無意識に、僅かに口角を上げる。


 ――準備は全て、整った!!




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