第37話 単騎と弐騎
「蔦ァァァ!!!」
「風の女神、ゼピュロス!」
「我の導に従い、その力を示せ! 流鏑馬!!」
蔦が1体のゴーレムを拘束し、その胸部へ向け、ティアナとレイが魔術を発動した。
2人の魔術はゴーレムを貫通し、倒したように思えた。
しかし、穴の開いた部分に次々と石が集まり次第に穴は埋まっていく。
「チィッ!!」
「やっぱり……!!」
テレサから聞いていた通り、再生するゴーレムに、ハルは歯噛みする。
戸惑う3人に、真っ直ぐアルフは走り寄る。
「ハッハッハ!! 無駄なんだよ!!!」
ハルへと手を伸ばすアルフとの間に、すかさずレイが割り込む。
それを見たアルフは瞬時に後ろへ飛んだ。
「……」
レイへの警戒を隠そうともせず、アルフはレイを睨みつける。
レイはアルフの纏う空気に怯むこともなく、真っ直ぐと魔術刀を構えた。
「お兄様、この方を私に任せてくださいませんか」
静かに申し出るレイに、ハルは眼を見開く。
が、ハルはすぐに冷静にレイへ問う。
「1人でか?」
「はい。倒すことはできなくとも、必ず足止めいたします」
振り返ることなく、また揺れることの無いレイの構えに、ハルは任せる他無しと悟る。
「レイ!」
「心配しなくとも大丈夫ですよ。ただし……」
不安に揺れるティアナの声に、やはり振り返ることなくレイは答える。
アルフを睨みつけるレイの背中からは、覇気にも似た空気が漂っていた。
「私はこの人から眼を離せません。ですから、ゴーレムはお任せします」
力強く、芯の通った声で告げられた妹からの頼みに、ハルは溜め息を1つ吐き、言葉を返す。
「しょーがねぇな。その我が儘、聞いてやるよ」
「ありがとうございます、お兄様」
頭を掻きながら、レイからゴーレムへと視線を向けたハルを見て、ティアナもまた覚悟を決めた。
「倒れたら、承知しないわよ」
「貴方じゃないんですから、そんなヘマはしませんよ」
ゴーレムへと顔を向けたティアナの言葉に、レイはいつもの調子で返事を返す。
そして、レイはアルフへ顔を向け直し、叫んだ。
「行きます!!!」
レイの声で、3人同時に走り出す。
1人、真っ直ぐに向かってくるレイにアルフは口角を上げ、眼を見開く。
「上等ォ!!」
レイは魔術刀を顔の横に構え、アルフの心臓部へ突きを繰り出す。
レイの攻撃を横にずれることで躱したアルフは、そのままレイへ向けて合わせた両手を振り下ろす。
すかさず前へ飛び出し、転げるように躱したレイは、しゃがみ込んだまま魔術刀を構え直した。
「お前、なんで俺の相手を引き受けた?」
静かに睨みつけてくるレイに、アルフは真剣さを帯びた声で問いかける。
相手の行動に警戒心を増しながら、レイは落ち着いて答える。
「……3人の中で、私が一番戦力として劣っているからです」
レイの答えに、アルフはピクリ、と肩を揺らし、威圧を増した顔でレイを睨みつけた。
「お前、そんな理由で俺の前に立つのか?」
相手の変化を察し、柄を握り直すレイに、それが答えであるとアルフは察する。
「あんま自分を過小評価してっと、意外なところで足元掬われっぞ?」
「そうだとしても、事実ですから。私がお兄様に敵うことはありません」
乱れた髪を掻き上げながら言葉をかけてくるアルフを睨み、レイは力を込めて答える。
そんなレイを見て、アルフは大きく溜め息を吐いた。
「あぁ、萎えた。お前と戦う意味ねぇわ」
そう吐き捨て、ハル達へ向かい歩き始めたアルフを見て、レイは唇を噛み、魔術刀を構えたまま走り出した。
アルフのうなじへ向け構え直し、だが振り返り拳を振り上げるアルフに怯えることなく、そのまま喉元へ突きを繰り出す。
自分の喉元へ刃を突き付け、すんでのところで止められた己の拳に怯むことなく睨みつけるレイを見て、アルフはニヤリ、と嗤う。
「……いいぜ、来いよ。俺がお前を特訓してやる!!」




