第36話 続行
「先生!!」
「あー……、まぁ、そりゃやるよなぁ」
東ゲートにて。
出現したゴーレムに、テレサが悲鳴をあげ、ドレットが面倒くさそうに頭を掻く。
「おっと!? アルフ選手ルール違反!! ゴーレムの出現だぁ!! これは反則ま、」
「いや、続行だ」
「え? ド、ドレット先生!?」
司会はすかさず、試合を止めようとした。
だが突如司会席に現れたドレットに、司会は驚愕の声を上げ、後ろに跳ぶ。
「続行とは?」
「そのままの意味だ」
溜め息を吐きながら、ドレットは司会に告げる。
困惑を極める司会は、重ねて尋ねる。
「ですが、どうして……?」
「選手に頼まれたんだ。たとえアルフが反則を犯そうと、試合を止めないでくれってな」
眼を細め、選手を、ハルを見つめるドレットを見て司会は何かを察し、コクリ、と頷いた後マイクへ向き直る。
「続行!! 試合続行です!! アルフ選手のルール違反は決勝戦特殊ルール適応とし、無効となります!!!」
「恩に着るよ」
続行の知らせを受け、会場は湧き上がる。
歓声を聞きながら東ゲートに戻ってきたドレットに、テレサは走り寄る。
「先生……」
「アイツらの好きにさせてやれ」
憂色を濃くするテレサを見て、ドレットは今度は優しく、丁寧な手つきで頭を撫でる。
ドレットの優しい表情に、テレサは少し頬を染め、視線を逸らした。
「さて、あの怪物相手にどうでるか……、見物だな」
「ティアナ……」
2人は、フィールドの上へ視線を戻し、3人の様子を窺う。
テレサは、ただ祈ることしかできなかった。
「お兄様……」
「はっ、本当に出しやがった」
「なんて大きさなの……」
アルフからの攻撃を直接受けたティアナとハルはようやく立ち上がり、大きく深呼吸を1つ。
ゴーレムを見て、3人は各々の感想を漏らす。
ゴツゴツとした表面、3メートルにもなる大きさ、歩くたびに地面を揺らすその質量、全てが怪物として相応しいそれに、3人は息を飲む。
「さっきまでの威勢はどうした!!」
ゴーレムを出現させた張本人、アルフは大きく叫び、3人を挑発する。
(アルフはただでさえ化け物だっていうのに、更に増えやがった!! 予想していたとはいえ、これは、あまりにも数が多い……!!)
唇を噛むハルの背中を、突然ティアナが叩く。
驚いて振り返ったハルの視線の先に、強気に微笑むティアナがいた。
「しっかりしなさい。必ず倒すのでしょう?」
ティアナから出た言葉に、ハルは眼を見開く。
それは、3人が初めてアルフを見た時、ハル自身がティアナへ放った言葉だった。
反対側から、レイもまたハルの背中を叩く。
「必ず、倒します。そうでしょう、お兄様?」
ハルは今度は、レイの方へ振り向く。
そこには、優しく、それでいて闘志に満ちた顔のレイがいた。
2人に背を押され、ハルはニヤリ、と口角を上げる。
「あぁ、そうだな。必ず倒す!!」
3人は真っ直ぐ、アルフを睨みつける。
その姿を見たアルフもまたニヤリ、と口角を上げ、両手を広げ応えた。
「「さあ……」」
「いくぞ!!!」
「かかってこい!!!」




