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第35話 単騎と参騎


「風の女神、ゼピュロス!」

「我の導に従い、その力を示せ! 流鏑馬!!」


 間髪入れず、ティアナとレイは魔術を発動する。

 真っ直ぐと自分へ向かってくる無数の斬撃にニヤリ、と口角を上げたアルフは、消えた。


「なっ……!?」


 一直線で飛んでくる斬撃を、アルフは魔術を使わずに、その体1つですべて躱して見せた。

 桁違いの運動神経に、3人は息をのむ。

 唖然とし、驚愕し、畏怖する視線を一挙に集めるその姿が、妖しく揺れた。


「……はっ、そうでなくちゃなあ!!」


 アルフのその姿に、冷や汗をかきながらハルは笑う。

 指を使い挑発してくるアルフに、返事を返すかのようにハルは叫んだ。


「蔦ァァァ!!」


 アルフを囲むように発生した蔦を、しかし彼はそれを素手で受け止め、捕まることなく蔦の檻を脱出しかけた時、突如足元に発生した蔦にアルフは足を取られる。

 その衝撃で軸がぶれたアルフは、そのまま両手を蔦に拘束されるが、その体躯が止まることはなかった。


「うらあぁぁああぁ!!!!」


 格闘場中に轟く咆哮と共にアルフは体に力を込める。

 そして、思い切り両手を前へ振り下ろした時、アルフは腕に絡みついていた蔦を引き千切った。

 それだけに留まらず、アルフは片足を前へ踏み出し、叫ぶ。


「うおぉおおおぉお!!!!」


 両足を拘束していたはずの蔦を引き千切り、アルフは大きく深呼吸する。

 そしてギラリ、とハルを睨みつけ、走り出した。


「人間じゃねぇ……!」


 高速で迫りくるアルフを前に、ハルは声を漏らす。

 アルフがハルに飛び掛かろうとした時、2人の間にティアナが入った。

 ハルへと伸ばされたアルフの右手をティアナは左手で掴み、右手で鳩尾を抑え、そのままアルフを投げ飛ばした。


「何ッ……!?」

「女だからって、舐めるんじゃないわよ!!」


 体制を立て直しながらティアナが叫ぶ。

 空中で回転し、軽やかに着地したアルフはニヤリ、と嗤い今度はティアナに眼をやる。


「なるほどな、無敗の女神の名は伊達じゃねぇ、か」


 初めて女性に投げ飛ばされた屈辱を噛み締め、クツクツと笑うアルフに、3人は身構える。

 今度は真っ直ぐとティアナに向かってくるアルフに、ティアナは正面から臨む。


「はあ!!」

「ふん!!」


 アルフが伸ばした右手をティアナは華麗に躱し、もう一度同じ体制で投げ飛ばそうと、ティアナはアルフの右腕を掴み、鳩尾に手を当てる。

 確かに投げ飛ばした感触はあった。

 しかし、アルフは投げ飛ばさればがら、自分の右腕を掴むティアナの左腕を掴み返した。

 そして、アルフは空中で回転し、しっかりと着地した後、ティアナを地面へ叩き付けた。


「かはっ!!?」


 背中からの強い衝撃に、ティアナは息を吐き出す。

 悶える彼女にトドメを刺そうと、アルフは右の拳を構えた。


「蔦ァ!!」


 その拳を、後ろから1本の蔦が拘束する。

 アルフが後ろを振り返ると、至近距離からハルが殴り掛かった。

 すかさずハルの拳を左手で止め、右の拳を振りかざす。

 蔦を引きちぎる衝撃を乗せたその拳は、ハルの頬へめり込み、そのままハルの体は後方へ吹き飛んだ。


「ゴファッ!!」


 転がるハルの体から眼を逸らし、ティアナへ向き直るアルフの瞳に、レイの魔術刀が映る。


「はあ!!」


 レイの剣術は見事なもので、アルフは避けることに専念しなければ捌ききれない程であった。

 アルフはレイが使っているものが魔術刀だと知らない。

 故に、アルフはレイの刀を律儀に躱し続ける。

 レイは相手の体力を削ることにのみ専念しているように見せ続けた。


「やるじゃねぇか!」

「これからです!!」


 レイは両手で構えていた魔術刀を右手に持ち替え、左手にもう一振り顕現する。


「何!?」


 レイの意外な行動に、アルフは驚愕を声に滲ませる。

 速さを増すレイの動きに、アルフは舌打ちをした。

 レイを捕まえようとアルフが手を伸ばしたその時、唐突にレイがしゃがみこんだ。


「炎の女神、ヘスティア!!」


 這いつくばったまま、ティアナが魔術を発動する。

 至近距離から撃ちこまれた火の玉に、アルフは後ろへ飛ぼうとした。

 しかし、アルフの足は蔦にとられ、動くことができなかった。


「アイツ!!!」


 立ち上がりながら、ニヤリ、と笑うハルを見て、アルフは再度舌打ちをする。

 避けきることが叶わない火の玉を、アルフは顔の前でクロスさせた両腕で防ぐ。


「……!!」

「はぁ!!!」


 アルフには、眼の前で組んだ腕の隙間から、レイが剣を下から振り上げる姿が見えた。

 すぐに蔦を引きちぎり、腕を広げ、視界を広げるも、アルフは目の前のレイの刃は避けきれないと悟る。

 が、突如レイは刀の具現化を解除し、魔力へと変換した。


「なっ!?」


 しかし、レイはそのまま握った右手を振り上げ、アルフの顎に直撃させた。


「……!?」


 非力なレイの力では、頑丈なアルフの体を飛ばすことはできず、アルフは上を向くのみだった。

 初めて女性に殴られたであろうアルフは、不気味な嗤いを上げた。


「フ、フフ、アハハハハ!!!!」


 首を戻し、ギラリ、とアルフはレイを睨みつける。

 その眼差しに、レイは竦みかけるが、踏みとどまり、体に力を入れ、アルフを睨み返す。


「レイ、避けろ!!」

「面白れぇよ、お前らぁ!!!」


 ハルの言葉に、瞬時にレイは後ろへ飛ぶ。

 と同時にアルフは魔術を発動した。


「我の導に従い、その力を示せ!! ゴーレム!!!」


 再度地響きが鳴り響くフィールド上に現れたのは、5体の巨大なゴーレムだった。




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