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第38話 ゴーレム


「全っ然効いてねぇ!!」

「どうしたら……!!」


 ゴーレムの相手を引き受けた2人は、予想以上に苦戦していた。

 ティアナは思いつく限りの魔術を放ったが、どんなに壊してもまた再生するゴーレムには歯が立たない。


「おい!! 何か弱点とか知らねぇのか!?」

「えぇと、……ギリシャ神話に、ゴーレムに似た青銅の巨人が、踵にある釘を抜かれると失血死するって逸話があるわよ!」

「踵ぉ!?」


 2人、ゴーレムの攻撃を避けるため、離れた場所を飛び回りながら叫ぶ。

 拳を打ち付けるたびにフィールドを破壊するゴーレムに、冷や汗をかきながら走り回る2人は、どうにか弱点を探すため、己の知恵を振り絞る。


「踵に釘なんてねぇよ!!」

「じゃあわからないわ!!」


 しかし、いくら知恵を振り絞ろうと、ゴーレムは一向に倒れる気配を見せない。


「いっそのことフィールドを変えるか!?」


 ゴーレムの生成材料である石畳を別の何かへ変質させることを提案しながら、ハルはゴーレムの拳を間一髪のところで躱した。


「無茶言わないで!! それに、今そんなことしたらレイが……!」


 ティアナもまた、転がるようにゴーレムの足を避け叫んだ。

 フィールドを変質させるということは、その場にあるものを全て変えてしまうということ。

 もし、レイがフィールドに足をついたまま発動してしまえば、その瞬間、レイの体も変質してしまうことを意味する。


「そういえば、モンスターも場外に出たらフィールドへ戻れないんじゃなかった?」

「こいつらを場外へ放り投げるってか? それこそ無茶だろ……」


 ゴーレムに囲まれ、背中を合わせて立つ2人は、目の前の怪物を見上げ苦笑した。

 その体重1匹当たりおよそ2トン。

 そんなゴーレムを持ち上げるだけの力を2人は持ち合わせていなかった。


「あんたの蔦は?」

「……5分、引き受けてくれるならいいぜ?」


 再度、2人は眼を合わせ苦笑する。

 2人がかりでもまだ倒れないゴーレムを1人で相手するなど、自殺行為にも等しかった。


「あぁ、もういい!! なんでもいいから、アイツらに大きな攻撃食らわせろ!!」

「……それしかないわね!」


 目配せをした後、2人は反対方向へ飛んだ。

 なるべくフィールドの端にゴーレムをおびき寄せ、ティアナは大規模魔術を展開する。


「冬の女神、スカディ!!」


 魔術の発動と共に、巨大な氷塊がゴーレム達へ降り注ぐ。

 ティアナの攻撃を受け、ゴーレムの中に1体、再生することなく崩れ落ちるものがいた。


「ハル!!」

「……お前、何した?」

「知らないわよ!!」


 突然の好機に戸惑う2人は、ゴーレムの間を潜り抜け、崩れ落ちた個体を観察する。


「……心臓か?」


 そこには、胸部がすべて破壊されたまま倒れたゴーレムの姿があった。

 しかし、その事実に余計ティアナは混乱する。


「でも、最初に魔術を当てても、効かなかったのよ?」

「最初は一部しか破壊しなかったからだろ? でもこれは全壊だ」


 降り注ぎ続けるゴーレムの拳を躱しながら会話を続ける2人は、1つの結論に達する。


「なら、」

「心臓ぶっ壊すぞ!!!」




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