希望の星の強調介入ー1
埠頭には、延べ十二体もの怪人が並んでいた、戦闘員の数も無数に並んでいる。
まさに、悪の『軍勢』といっても過言ではないだろう。
どんな正義の味方であっても、これだけのの怪人が待ち構える地に、たった一人で立ち向かうのは、勇気を通り過ごして「無謀」であると言われてしまうだろう。
しかし、航輝は一人、スターライツレッドとなって、その地に赴いてた。
そうせざるを得ないのだ。
この戦いは、聖園・ジゼル・由美香の《サンクチュアリ》に刃向った制裁という性格が強い。
航輝には一向に身に覚えがないのだが、なぜか「そういう事」になっている。
《サンクチュアリ》のお嬢様の気が晴れるまで、この戦いに耐えなければならない。
悠里の立てた作戦も、この制裁を回避する為のものではなかった。
(こりゃあ……死ぬかもしれないな)
航輝は内心でそう思った。
《サンクチュアリ》に声を掛けられた6つの悪の組織から派遣された怪人と戦闘員は総勢で百人を数える。
大組織である《サンクチュアリ》圧力をかけられ、望まずに出撃して来たのだ。
彼らだって、本来の侵略活動をしたかったに違いない。
「お互いやりきれないよなぁ」
由美香一人の我儘の為に、いくつもの組織が振り回されている。
正義を守る戦いでも無い。
悪の野望を進める戦いでも無い。
我儘な「お嬢様」の気分を晴らすためだけの戦い……。
航輝は、その為の生贄なのだ。
拳をぎゅっと握りしめる。
その理不尽を思うと、目の前がくらくらとする程の怒りを感じるのだ。同時に闘争心が沸き起こる。
戦場に指定された場所は、夕凪市から二時間ほど離れた。
黒住町波止場であった。冬も厳しくなってきた波止場の夜は、暗く、そして大きなうねりを持って航輝を出迎えた。
その、桟橋にて、航輝と集められた怪人たちは、睨み合っているのだ。
怪人たちが口々に、挑発的な口上を述べる。
「なんだぁお前だけか!(すまんなぁ、スターライツ)」
「まんまと誘い出されおったな!(逃げ打ってもええんやで)」
皆、口から出る言葉と、目で語る言葉が違う。
沢山のメディアで全国中継がなされるこの戦いであるが、参加している悪の組織の怪人たちの動きは鈍い。これだけの人数で一人の正義の味方に襲い掛かれば、ただでは済まないからだ。
再起不能にしてしまうことは免れず、最悪、殺してしまうかもしれない。
「オレ様、お前をヒトヒネリにしてヤル(くそ、やりづらいぜ)」
彼らは、正義の味方と正々堂々とした戦いの末に、その命を奪う事に抵抗は無かった。
しかし、弱小正義の味方の、しかも一人を寄ってたかって嬲り殺しにするような振る舞いには、ためらいを禁じ得ないのだ。
しかし、依頼主である《サンクチュアリ》は世界でも十指に入る巨大正義の組織である。
いかに『悪の組織が戦う相手を選べる時代』だとしても、これだけ大きな組織に逆らうことは出来なかった。しかも、彼ら怪人たちは、それぞれの組織の首領の計画に従わざるを得ない。
ヘルメットを脇に抱えた航輝は、悪の怪人達の苦悩を振り切るかのように、大声で挑発の言葉を発する。
そう、悪の怪人たちの迷いを断ち切らせるように。
「雁首揃って現れたな!(気にしないでくれ、あんた達の悩みも解っている)」
「星の輝きは悪事を決して逃さない!(ただで死ぬつもりはないんだ!)」
「ただで、やられてやるものか」、航輝はそう思う。
航輝には一つだけ、希望があるのだ。
悠里の立てた『作戦』だ。
いや、作戦と呼べる程、高尚なものではないのかもしれない。なにしろ、偶然に頼る処の方が大きいからだ。
最初、悠里から打ち明けられた時、『上手くいく筈はない』と、そう思った。
だが、あれから重蔵や都も交えて、どれだけ検討しても、弱小組織の《スターライツⅤ》が、この状況を切り抜けるのに、この方法以外で上手くいくとは思えなかった。
今、悠里は作戦の最初の段階をクリアする為に戦っているはずだ。
今の航輝には、それを頼みに、戦い抜くしかない。
(悠里、頼んだぞっ)
心から祈った。




