消えた五人の王と、十五歳の継承者たち
地主の王――西の大陸の中央に広がる、どの国にも属さない「白の大地」を管理する老人との謁見。
それは本来、五つの国の王が同じ場所に集まる、極めて珍しい出来事だった。
氷の国の王。 光の国の王。 水の国の王。 火の国の王。 風の国の王。
長く争ってきた五人の支配者たちが、同じ城に足を踏み入れたのである。
地主の王が住む城は、五つの国の境界が複雑に入り組んだ場所にあった。
城の周囲には、誰の国の旗も掲げられていない。
氷の国の青い旗も。 光の国の白い旗も。 水の国の深い蒼の旗も。 火の国の赤い旗も。 風の国の緑の旗も。
そこにはなかった。
ただ、白い石で造られた古い城だけが、長い年月を越えて立っていた。
地主の王は、五人の王を巨大な円卓へ招いた。
「今日は、戦争の話をするために集まっていただいたのではありません」
老人は静かに言った。
「この大陸の未来について、お話ししたいのです」
五人の王は、互いを警戒していた。
氷の王は火の王を睨み。
火の王は光の王を警戒し。
水の王は風の王から視線を外さず。
風の王は、いつでも立ち上がれるよう椅子に浅く腰掛けていた。
しかし地主の王は、そんな五人を見ても微笑んでいた。
「いつか、あなた方の子供たちが、この大陸を背負うことになります」
その言葉に、五人の王は黙った。
「だからこそ……あなた方が憎しみだけを遺してはなりません」
その会談は、深夜まで続いた。
そして――。
翌朝。
世界は変わった。
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五人の王が消えた朝
最初に異変に気づいたのは、地主の城を警備していた兵士だった。
「陛下がおられない!」
氷の国の王の部屋が空だった。
部屋の外には、夜通し兵士が立っていた。
それなのに、王はいなくなっていた。
「こちらもです!」
光の国の王も消えていた。
水の国の王も。
火の国の王も。
風の国の王も。
城にいた五人の王が、まるで世界から消えてしまったのである。
暗殺者が侵入した形跡はなかった。
血もなかった。
争った跡もなかった。
窓も扉も壊されていなかった。
ただ、王たちの寝室だけが、異様なほど静かだった。
ベッドは乱れていない。
衣服も残されている。
剣も杖も置かれたまま。
まるで、夜の途中で――その身体だけが消え去ったかのようだった。
「魔法だ……」
誰かが呟いた。
「これは、何者かの魔法だ」
その言葉が城中に広がった。
そして数時間後には、西の大陸全土へ広がっていた。
王が消えた。
その知らせは、五つの国を同時に混乱へ叩き落とした。




