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身代わり令嬢は二度死に、最愛の幸福を掴む  作者: 桃緑茶


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9/13

9.とある商会

――時をさかのぼり、レイナルド・コールデン侯爵を王城から放り出した数時間後の事。



「ここが、連中が証言したローズマリー嬢の事故現場か」


宰相が編成した調査団がローズマリー嬢を捜索していた。


侯爵夫人と称するのは、彼女の侯爵領での待遇やコールデン侯爵の態度から、彼女を更に傷付けるようでローズマリー嬢で呼ぶこととした。

ローズマリー嬢が落ちたとされる崖近辺だが、不審な点が多かった。


【ローズマリーは休憩中に崖から滑落し川に落ちた】


コールデン侯爵家はそう証言しているが、崖下には川から這い出た何者かの足跡。

そして、鞍の付いた馬が一頭近くで草を食べていたのを発見したレイナルドの元部下たち。


彼らは休暇の申請と共に、退職願を申請した。

同僚が殺され、妻ローズマリーが虐待の末殺害された事すら道具のように扱う上司を見限った。

ワーズ文官を知る彼らは事故ではないと確信している。

彼は下戸だ。そして、彼の家も全焼。…偶然ではない。


最悪の事態であろうと、ローズマリー嬢を両親の元へ返す。

彼らはその為に個人で動いていた。

――…の、だが。国王陛下と宰相が秘密裏に動く特命部隊として彼らを密かに任命した。

殺されたジョンソン・ワーズ文官のように何者かが彼らを殺害目的で動いた場合、その者達を捕らえる為でもある。


靴跡は令嬢が履くものとは異なり、冒険者が好むブーツ。女性の足跡だが、川に向かう足跡は浅く、川から出た足跡は深い。

泥濘に深く残ったそれは、まるで何かを担ぎ上げているようでもあった。

行き場所は川の近くの横穴だった。そこには複数の女性の足跡があった。

「……冒険者か?」

横穴には慌てて引き揚げたのか、包帯の切れ端や薬の瓶が転がっている。

…誰かを治療した痕跡だ。


オールス卿と秘書官ミューラー、元部下たちは横穴に灯りを入れて進む。

奥には壁に寄りかかるように座っていた痕跡がある。火の跡や、簡易テントを立てた跡。

数日滞在していた形跡だ。けれども、ここからは既に離脱しているらしい。

「もしここに居るとすれば、ローズマリー嬢を救ってくれた者がいる?」

近隣の病院を尋ねるべきか。

しかし、残された馬はどういうことだ?けが人を運ぶのに何故馬を捨てる?


注意深く確認すると、僅かな魔力の痕跡を発見した。

巻物式の移送方陣だ。それで遠距離へ移動したのだろう。しかし。


「一介の冒険者が、推定で重症のローズマリー嬢を助けるにしても、馬を捨てて高価な移送方陣を使うか?」

魔力持ちの可能性はあるが、理にかなっているとは言えない。

巻物には魔力の痕跡があっただけで、移送先の座標は秘匿されるように刻まれていた。

「高度な移送方陣の術式に微細な魔力の痕跡……移送先は何処だ?」


部下たちは互いに顔を見合わせる。

「もしかすると、この移送先の誰かが……」

ローズマリー嬢を保護しているのかもしれない。

しかし、移送先を特定するには膨大な手間と時間が掛かる。

「オールス卿、シモンズ男爵夫妻に情報を伝えてくれ」

「分かった」

僅かな希望で在ろうとも、徹底的に洗い出すべきだ。


宰相閣下が派遣した正規の捜索隊と、ローズマリーを探す蒼白なシモンズ男爵夫妻にオールスは詳細を告げた。

男爵は思い至ったように告げた。

「手紙を…出したのです。『彼女』なら、王や高位貴族に真っ向から進言できると思って……」

返信が無かったのでワーズ文官のように何かあったのかと、不安に押しつぶされそうになっていたという。

「どなたに手紙を」

「ゼラ・ローズと云います。我が領と縁のある細工師でありまして……」

その名は良く知っている。平民を卑下する高位貴族すら、彼女の作品を欲して競売に参加する。

隣国を代表する著名な作家。そして――

「彼女はローズマリーの友人でありました。

結婚の祝いにと…あの子が好きなミモザの花を装飾したブレスレットや、…アクセサリーを送ってくれて……。

結婚後も…あの子の夫の好みは何か、揃いの贈り物がしたいと手紙を侯爵家に送って……返信が無いと教えてくれました……」

男爵夫人が涙ながらに語った。


(あの家の者達は…何処まで人の想いを踏みにじれば気が済むのだ……‼)

オールス卿は静かに怒りを露にするが、夫婦の言葉に耳を傾ける。

「彼女は幼くして両親を失くしたと……それでも生計を立てるべく我が領の細工師の元で修業をしておりました。それと…魔石を扱える魔道技師でもあります」

「魔道技師…それで移送方陣を……」

魔術の心得があるなら、移送方陣を使うことに躊躇いは無いのだろう。

「移送先に心当たりがあるのですか?」

男爵は頷いた。

「隣国ファインブルク王国のヴァイオレット商会。彼女はそこに所属しています」

ピシッ

宰相の副官を筆頭に、周囲の空気が凍り付いた。


宰相の副官はガタガタと震えた。

ヴァイオレット商会は下位貴族や平民向けの商会だが…憤怒の龍侯爵が元締めだ。

憤怒の龍侯爵。字面は恐ろしいが、むやみやたらにキレ散らかす暴君と言う訳ではない。

彼の統治する侯爵領は領民の生活も豊かで、侯爵自身も子煩悩な愛妻家。


だが、自国のゼフェス教会本部の陰謀で弟を殺され、義妹を自死未遂に追い込まれた時の彼の怒りは凄まじいものだった。

結果、ゼフェス教会本部はブチ切れた彼の()()で砂塵と化した。


ゼフェス教会は解体し新たな教えへと改革。残党はファインブルク王国の小さな木造家屋で息を潜めて活動しているとか。

また、教会が犯した罪により廃村となった村には、憤怒の龍侯爵が領地から連れて来た難民たちを住まわせ、自ら指導をして再建をしている。

不愛想ながら、その情け深さから、領民には慕われている。

領主としても騎士としても信頼できる人格者であり、無闇に権力を振るわない自制心も備えている。

ただ一つ欠点を挙げるとすれば――それは尋常ではないまでの強さだろう。

幾度か我が国と共闘した時、拳で魔物を屠る龍侯爵に恐れ戦いた。

我が国で随一の守護結界を展開できる、第三王子の防御すら粉砕するのだから。

それゆえに敵対者は容赦なく叩き潰す。つまり、一度でも目をつけられれば、命はないに等しい。


ゼラ・ローズはそんな恐ろしい人物が元締めである組織に属しているのだ。

しかも彼女は――

ローズマリー嬢はむしろ安全だろう。

だが、彼女を虐げた者達は……。

一手間違えれば、コールデン侯爵領どころか王城が消える。


宰相の副官は告げた。

「……我々は付近の捜索を続行する。オールス卿と…シモンズ男爵夫妻には、憤怒の龍侯爵及びゼラ・ローズ氏とコンタクトを取って頂きたい。

というか、ゼラ・ローズ氏にまず会って下さいそうしてください」

(彼女を案じるご両親ならば、あのお方も紳士的に対応されるだろう)

「わかりました」

「私の方から我が国のヴァイオレット商会支部に連絡を付けます。先ずはそちらへ」

副官の言葉に二人は涙を拭い、決意の眼差しを向けた。


「ミューラー殿らはどうする?」

「あのゼラ・ローズ氏が保護したなら安全かもしれないが、ハズレの可能性もある。

ローズマリー嬢を狙う輩に見つかっても行けないし、俺らは現場周辺を当分探すよ。

トリスタン殿、夫妻を頼んだ」


「はっ!」


世界線は前作と同じで、約2年後のお話です。読まずとも問題なく書く所存です。

重要な国、商会などは登場しますが過去作の主要キャラは暴れません。


蝉は出ますが本編では暴れませんので関係ありません。

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