神霊座すところ
夏のホラー2024で投稿した「顔のない怨念」
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に登場する、義兄弟とその周辺の人々の話です。
小鳥遊陽充(はるちゃん、僕)
生真面目で面倒見が良く、お人好し。また好奇心旺盛で様々なことに首を突っ込んで痛い目にあっては義兄さかえに助けられている。
新卒で入った企業で人付き合いに悩み、うつ病になって退職した経緯を持ち、悩みを抱えやすい。お話における「ワトソン役」
烏丸さかえ(さかえ義兄さん)
極めて自堕落な自称作家。陽充の姉で故人の烏丸れおなの夫で、現在は義弟陽充と共に生活している。義弟陽充の前では彼をはるちゃんと呼び、ヘラヘラしている胡散臭いおっさん。お話における「ホームズ役」
「――なるほどね」
僕とさかえ義兄さんから話を聞いた鷹山さんは、ソファに座ったままのじっと鋭い目でジオラマをにらんでいた。
先ほど、鷹山さんたちの来訪からこちら、ジオラマから磯の臭いはしていない。しかし、僕の目から、僕がはっきりとこのジオラマに恐怖を感じていることが感じられたのだろう、鷹山さんは僕のことを痛ましげに見た後、視線を妹の巫湖さんに向けた。
「巫湖ちゃん、こちらうちで管理させていただきましょうか」
「はい、兄さま」
「あ、じゃあ、持ち帰る用の紙袋を……」
「あ、だめ、です」
巫湖さんは立ち上がりかけた僕の手をとどめ、はっきりとした口調で言った。
「こちらは神様がおわす場所です。これからこちらの神様と縁を切らねばならない方が、気軽に触れてしまっては、神様も縁を切りづらくなります」
「あ、……その、すみません」
とっさにジオラマに触れようとしていた手を引き、謝罪の言葉を口にする。彼女が気弱に見えて、実は芯の強い、そして信仰に敬虔な女性なのだということは明らかだった。僕などより、きっとこういった物品の取り扱いに対してはプロフェッショナルなはずだ。信頼して預けるのが、正しい判断なのだろう。
と、しかし巫湖さんは、はっと何かに気づいたように目を見張り、何を感じたのかほほを赤らめ、わたわたと手を振り回して慌てた口調でつづけてくる。
「あ、あああのわたしこそ、小鳥遊さんのご厚意を無為にするようなつもりは全くなくて……、ご、ごめんなさいごめんなさい……」
「あ、いえいえいえ、あの、僕のほうこそその、いらん手出しを……」
「い、いえいえいえっ、そんなことないですっ、あの、か、紙袋を頂けるのであればそのっ……」
「あ、はいもちろんです、えっとその、今持ってきますんで……」
「あっ、ありがとうございますその、お待ちしてますので……」
「あらー! 二人ったら春なんだから、もぉっ」
はねるような声色で鷹山さんが茶化してくるのを、僕は聞こえなかったふりをする。はわわわわ、と意味の取れない悲鳴を上げているらしい巫湖さんには申し訳なさを感じつつ、持ち帰る用の紙袋を探しにキッチンへ向かった。




