その後の話 1
夏のホラー2024で投稿した「顔のない怨念」
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に登場する、義兄弟とその周辺の人々の話です。
小鳥遊陽充(はるちゃん、僕)
生真面目で面倒見が良く、お人好し。また好奇心旺盛で様々なことに首を突っ込んで痛い目にあっては義兄さかえに助けられている。
新卒で入った企業で人付き合いに悩み、うつ病になって退職した経緯を持ち、悩みを抱えやすい。お話における「ワトソン役」
烏丸さかえ(さかえ義兄さん)
極めて自堕落な自称作家。陽充の姉で故人の烏丸れおなの夫で、現在は義弟陽充と共に生活している。義弟陽充の前では彼をはるちゃんと呼び、ヘラヘラしている胡散臭いおっさん。お話における「ホームズ役」
それから1週間がたち、僕の部屋に以後、潮の臭いがすることはなくなった。
いまだに、あのジオラマが何をしようとしていたのかはわからない。ただ、あのジオラマに招かれた「神」が、招いた人間をどう扱おうとしているのか、あまりいい想像ができないことだけは間違いない。
さかえ義兄さんが言うには、鷹山さんが神主を務める神社は、地元の信仰も篤く、かなり立派な社を持つようだ。ここだけの話、後でネットを使って調べてみたところ、オカルト界隈でもかなり有名な神社らしい。神主である鷹山さんの人柄も話題としては大きいがそれ以上に――いわゆる、除霊やお祓いなどで。
鷹山さんと巫湖さんは、ジオラマを紙袋に入れ、乗ってきたマツダのロードスターに乗って帰っていった。和装でロードスターを乗りこなす鷹山さんにうっかりあこがれの目を向けたのは、さかえ義兄さんには内緒だ。
――さて、そんな週末の昼下がり。
SNSで時折交流しているフォロワーから、画像が送られてきた。
「SNSでジオラマを買ったって写真が回ってきたんですけど、なんか異様な感じで。見覚えありますか?」
ジオラマ、という言葉に嫌な予感を覚えつつ覗いてみた画像に、僕はのけぞった。
暗い青の海、灰色の砂浜。荒れ果てた漁師小屋に、網をかける柵。
そして――沖合の隅に映る、「異物」。
見間違えるはずもない、それは、僕が購入し、「あれ」を招き寄せたジオラマだ。
違いといえば、沖合の半ばくらいまで来ていたあの「異物」が、再びジオラマの隅に戻っていること。だが、時間をかければ――。
僕は震える手を励まし、何とか打ち込んで、その人に返信した。
「そのジオラマは、あなたのお知り合いが購入されたのですか」
「いえ、知らない人です。だれかがリポストしたのが回って来たみたいで」
回答にほっと息をつく。それから、もう一度返信した。
「ありがとうございます。僕の知っているジオラマかもしれません。念のためその拡散されたポストがどんなものか教えていただけますか」
快諾と共に、送られてきたスクショを覗き込む。絶望と共に、僕はため息をついた。
『地元のフリマで購入~!なんか純和風な感じが珍しすぎて買っちゃった☆波の音とかしてきそうなリアルさ!ていうかほんとにちょっと磯のいい匂いしてる笑』
同時に、僕のスマホがチャットの着信を告げる。驚いて覗き込むと、「紗倉巫湖」の名前。そういえば先日、鷹山さんに無理やりアドレスを交換させられたことを思い出し、画面を見てみると、そこには背筋が凍るような内容がつづられていた。
「小鳥遊さんにお伝えしたいことがありチャットしました。申し訳ありません、お預かりしたジオラマが本日早朝、こちらの封印倉庫から姿を消しました。既に小鳥遊さんとジオラマとのご縁は切れていますので大丈夫かと思いますが、念のため潮のにおいがしたときは、すぐに私か兄さまへご連絡ください」




