24 大団円
「わっ!」
と、それが怒った瞬間、柳本竜一郎は、びっくりして叫んだ。
ついで、身をよじらせると、
「なんだ、これは!」
と、自分が握り、構えた拳銃、モーゼルM1917を見て、そうわめいた。
「まったく、ぶっそうじゃないか!」
いって、竜一郎が拳銃を再び机にしまった。
その瞬間――
ボン!
小さな男の子が、無事、お菓子の国に生還した。
「なにが起ったの?」
と、竜一郎の急激な態度の変化を感じて、マシュマロが男の子に問いかけた。
すると――
「じつはね、ゴニョゴニョ、ゴニョ…… 」
「なーるほど!」
「なーるほど!」 「なーるほど!」
「なーるほど!」
「なーるほど!」
「なーるほど!」 「なーるほど!」
「なーるほど!」 「なーるほど!」
「なーるほど!」
「なーるほど!」
マシュマロと、彼女のそばで耳をそばだてていた、二匹と二+四お菓子と一音楽と一妖精と一臘細工が納得してうなずいた。
「くそっ、オレさまにはわからんぞ!」
と、その様子を見ていた、なんでもたべちゃうゴンが、窓の外から異義をとなえると、
「えっとね、それはゴニョゴニョ、ゴニョ……」
窓のところに駆けていった男の子が、宇宙大怪獣の大きな耳の中に言葉を落した。
「あっ、そーゆーことか、なーるほど!」
そして――
「さあて、みなさん、お茶がはいりましたよ!」
コンコンと扉をノックして、柳本竜一郎の妻、梅子が、人数分の紅茶 <アッサムハイグレン> と茶受けのお菓子を持って部屋に入ってきた。もっとも、身体が大き過ぎるなんでもたべちゃうゴンには、
「あなたは、これでガマンしてね」
と、つぶれたワイングラスのような <台つき無頸壺> で紅茶をふるまった。
「うーむ、あ、ありがとう、です!」
と、苦笑して、なんでもたべちゃうゴンが答えた。彼は、これまで子供たち以外に、そういった <ごく普通の扱いを受けたこと> がなかったのだ。
「奥さんって、不思議な人ね?」
と、歳に似合った落ち着きを醸し出す竜一郎の妻に、マシュマロがいった。
「あたしたちを見ても驚かないんですもの」
すると、梅子は微笑みながら、
「だって、宅の主人が大きな子供みたいなものでしょう。むつかしい計算をしているかと思ったら、この変な――あら、ごめんなさいね、うっかり口が滑ってしまって――お菓子の国にやってきて、木製のお城を造ったりするんですもの。……長い人生のうち、たいていのことには慣れましたわ」
すると――
「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか!」
と、竜一郎が照れる。
「まっ! おいしいお茶!」
と、ベルベルが <アッサムハイグレン> を一口すすってつぶやけば、
「お菓子がお菓子を食べるってのも、妙なもんだな」
いって、ヌガーが、柳本竜一郎の研究成果をじっくりと見つめた。
にらみあい!
すると――
「やあ、やあ、ぼくたちにもご相伴させてくださいよ!」
ぞろぞろぞろぞろ……
謎の伯爵、ティンバー・ブーレグ卿にさらわれたはずのお菓子たち――マルグリッド、マドレーヌ、クリーチ、ゼリービーンズ、キャラメル、ボンボン、キャンディ、マロングラッセ、トルテ、クグロフ、トリュフ、シュニッテン、タルト、パイ、スフレ、クッキー、マジパン、ムース、シャーベット、ワッフル、ババロア、ブラマンジェ、ドーナツ、バームクーヘン、煎餅、もろこし、のし梅、麦落雁、五家宝、ういろう、ボーロ、最中、きんとん、福は内、かるかん、しおがま、松魚、さおじか、玉椿、ちごもち、など――が、地下の研究室から、ぞろぞろと、男の子たちのお茶会の席に集まってきた。
「へへえ。……じつは、ここのおかみさんの手料理はおいしいし、竜一郎じいさんの研究も――おかみさんのためだと思えば――まあ許せる気がしたので、しばらく、ここに留まることにしたんです」
と、全員を代表してゼリービーンズが説明すると、
「ほんとに、居心地がいいんですよ!」
と、シュニッテンが言葉を沿えた。
ワイワイワイ ガヤガヤガヤ……
ガヤガヤガヤ ワイワイワイ……
「では、みなさん。ここに友好のお茶会の開催を宣言します!」
と、竜一郎が機嫌よくいうと、
「まあまあ、そんな大げさな」
と、笑いながら梅子が答えた。
「いいじゃない、ですか、ゆうこうの、おちゃかいで」
と、カロピーがいうと、
「そうですね!」
と、いまは笑いながらワックスワークが答えた。
「そうしましょ!」
と、マシュマロが賛意を示すと、
「もちろん、おれに依存はないさ!」
と、ヌガーが答えた。
「じゃ、ぼくが音楽を担当しましょう」
と、ムジークがいって、バッハの『カンタータ百四十番』を歌いだせば、
「さっきのあんた、とっても格好よかったわよ!」
と、ベルベルがムジークの頬にキスをした。
「争いがなくなれば、わたしたちも普通のお菓子に戻れますね!」
「争いがなくなれば、わたしたちも普通のお菓子に戻れますね!」
「争いがなくなれば、わたしたちも普通のお菓子に戻れますね!」
「争いがなくなれば、わたしたちも普通のお菓子に戻れますね!」
と、お菓子兵士がいって、
「本当は、それが一番なんです!」
「本当は、それが一番なんです!」
「本当は、それが一番なんです!」
「本当は、それが一番なんです!」
と、続けた。
わっと喝采!
「なんとか、なったようだね」
と、男の子がいえば、
「そうねぇ! こんなもんじゃろう」
と、弘左衛門が答え、
「オレは、うーむ、途中のシチュエーションには辟易したが、まあいいか!」
と、シュレーディンガーだけが最後まで物語構成の出鱈目さをを気にして、(作者に向かって)つぶやいた。ちなみに、シュレーディンガーはお茶会が始まるほんの一瞬の隙に竜一郎の研究室にテレポーテーションし、部屋に備え付けられた特殊無線機で、ことの成り行きをキャッスルにいる大石大王に報告していた。
「それでは、みなさん、友好の乾盃、じゃなかった、お茶会を、心ゆくまで楽しんでください!」
最後に、元お菓子の国の平和をおびやかした謎の伯爵、そして現在は、お菓子の国はゴルゴンの山の材木問屋 <丸徳屋> の主人、柳本竜一郎が言葉を結んだ。
そして、すべての生きとし生けるものたちの友好を願ったお茶会は、
いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも、いつまでも
続いた。




