↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/57

9 ……のようなもの

「ところでヌガー、君がさっきいいかけた話なんだけど」

 と、一難去って、みんなが落ち着いたところで、小さな男の子がいった。場所は同じ松の木ホテルの大会議場である。

「ああ、あれのことか」

 いって、ヌガーは支配人さんを見た。

「彼に話してもかまわないかな?」

(かまわんだろう。ワックスは、もう味方になったことだし……)

 支配人さんが目でヌガーに答えた。すると、躊躇なく、

「ひとことでいえば、ここが、お菓子たちの天国だっていうことさ」

 ヌガーが男の子に説明した。

「え? どういうこと」

 と、男の子。

「つまりだな」

 と、ヌガーは続けた。

「ここの住人は、いわば、天国の住人みたいなものなんだ。天国だといいきってしまうと正確さを欠くが、似たようなものだろう。要するに、ここにいるお菓子たちは、みな、人間界で、一度はおいしいと思われたお菓子たちばかりだというわけさ。だから、さっき君が懸念したように、食べられたとしても、通常の意味では、おれたちは死なないんだ」

「ふうん、そうなの」

 と、男の子が目をくるくるまわして状況を飲み込もうとした。

「おいしいと思われたってことは、一回は、食べられてるっていうことだよね?」

「ああ、その通り」

「ここ、お菓子の国は、おいしいお菓子たちの商品見本市みたいなものなんですよ」

 と、支配人さんがヌガーの説明を補足した。

「それに、あなた方だって、ここに来るときに一回食べられているでしょう?」

「あのチョコレートバーの自動販売機のことかい?」

 と、シュレーディンガー。

「ええ、そうです」

 と、支配人さんが答え、

「あなた方にとっては、食べられるというのは気持のよくないことかもしれませんが、わたしたちにとって、それは、アメリカ樹海大学のマイクル・ビショップ教授が指摘したような単なるカニバリズム(喰人習慣)ではなく、ひとつの至福体験といってもよいものなのです」

「うーん、やっぱり、よくわかんないや」

 と、目を白黒させると、男の子が正直な感想を述べた。

「本質的に違った種族間のコミュニケーションって、むつかしいんだね!」

「だが、それを補うのが知性だろう」

 と、シュレーディンガー。

「違うかい?」

「それが、本質的に違った種類の知性でなければね」

 いって、男の子が、ふっと、ため息をついた。

 と、そのとき――


    モクッ  モクッ   モクッ

   モクッ  モクッ

     モクッ   モクッ  


 あたりに魚を焦がしたみたいな、いやな臭いの煙がたちこめた。そして――


 ボン!


 鋭い爆発音が聞こえ、そのなかから、

「わたしは子供が嫌いだ。ハッ、ハックシヨン!」

 黒い頭巾に黒い服を纏った全身黒づくめの魔女が現われた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。