↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/57

1 プレリュード

 はじめは渦巻のように見えた。

 だが、砂塵を舞い上げくるくると回転しながら近づいてくる <それ> は、実は渦巻などではなかった。


 ヒュルヒュル ヒュルルゥ…… 


 風の唸りをあげて、 <それ> が近づいてくる。空を越え、丘を抜けて、トキオの外れ、T川にほど近い閑静なS区の住宅地に向かって飛んでくる。 <小さな男の子> の家がある、住宅地の中心部目指して飛んでくる。


     *     *     *


「ふっふっふっ、わしの望みが叶う日も近いな!」

 いずことも知れぬ暗くじめじめした古城のなかで、ひとりその男はほくそ笑んだ。

「わしの望み、その気高く尊い、わし以外の誰にも真似のできぬ、極めて利己的ではあるが美しい望みの叶う日も近い」

 男は右手に握り閉めた外科用のメスを、古城の窓から射す月明かりにキラリと輝かせると、大理石の台の上に横たえられた彼の <研究対象> に向き直った。

「お客人、用意はよろしいかな?」

 凄味をきかす。

「偉大な研究には、つねに犠牲はつきものだ。まず、どこから小削げ取られるのを希望するかね。その表皮か? はたまた、興味溢るる、その内部の構成要素だろうか?」

 男の <研究対象> は何もいわなかった。コソリと動きもしない。じっと、うずくまるように、固く冷えた大理石の解剖台の上に身を横たえたままだ。

「では、名誉ある犠牲を!」

 ぞっとするような低音の声でそう呟くと、男は、彼の研究対称に向かって、一直線にメスを振り降ろした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。